2-26『東の街道ー先輩の戦い』


 ゛アクアフロー゛戦闘の開幕を告げたのは盗賊等ではなく、盗賊に名乗りすらさせない、アリー・リートムの魔法であった。

 無駄に青い髪がなびく程に全身から放出される魔力は水属性、放たれた中級水魔法は両手を前に出すアリー・リートムの腕から勢いよく発射された。


(……多勢に無勢なのに、なんでその魔法なんだ?)


 つい突っ込みたくなる魔法の選択、アクアフローはホースから水を出す程度の魔法、そりゃ僕が突っ込みたくなるのも無理ないよな?



 もちろん、盗賊の数は馬車をぐるりと囲むほどの数、僕は魔力感知により数は把握してるが24とかなり大勢だ。

 ゛水魔法障壁゛丁寧に僕が確認したかったものも見ることが出来たよ、大きな盾を2人の盗賊が持っている。

(あれで僕の魔法を防いだんだな)


 ゛魔道具゛少量の魔力を用いるだけで、様々な魔法を使用することが出来る道具の事だな。

(なんだかんだで初めて使ってるとこ見たけど、魔道具って高いんだよな~)最低でも1つが1金貨はしてたイメージ、使い捨ての安いやつだと1大銀貨でぎりぎり売ってるぐらいだな。


 でまぁ、店を見に行ったことがある僕が見るに……あれは相当高そうな品、1大金貨はしそうなものなのによく盗賊なんかが売らずに持ってるものだと少しだけ感心した。


「アリー!!下がってろ……魔法は効かないみたいだ、俺が行く!!」とかっこよく前に出るのは、ロイヤル・レールマン。

 1番大きい彼が行くみたいだな。


(……鈍そうなのに、馬鹿すぎだろ?)


 まぁ多分彼のジョブはナイトって所か?護りが硬そうな大きな盾を持ってる。

 でも……なぜ僕が馬鹿だと思ったのか、まぁこうなるからだ。


「きゃーーー!!!」と叫ぶアリー・リートム、戦闘中だというのにそれを見ないため目を手で覆ってる。

 当然の事だな。ロイヤル何とかだったが、馬に騎乗して槍を持つ盗賊に近付くもんだから、前方から槍を振られそこへ盾を構えたところ横に居た盗賊にナイフを首に投げつけられ致命傷、そして盾が降りた所を前方の盗賊が槍で心臓1突きだ。


「レールマン!!!」

 オーなんとかだっけ?……本当にこいつら中級冒険者か?

 感情に身を任せそんな危険地帯にのうのうと飛び込んだ、まぁ当然盗賊に何をすることも出来ず容赦なく殺される。


「そんな……そんなー!!」

 アリー・リートムはもう戦えないな。

 一応依頼の規約通りにぼーっと待機中な僕達です。




『荷を運ぶ馬車の護衛のサポート』


 護衛対象/馬車、制限時間/なし

 最低討伐数/なし、報酬/5銀貨

 場所/アーク大陸ーカリバーン~東の港


 特殊事項/中級冒険者のサポートが主な依頼となる為、中級冒険者の指令に従うこと。



 つまりまぁ、僕達が動かない理由は馬車に乗った時にこの3人に言われた言葉を重視してるからだ。


「お前達には期待してない。俺達が全ての敵を排除するからサポートだけしろ!変に手を出して邪魔してきたらギルドに言ってやるからな!回復と馬車の最低限の守りのみしろ!!」


 との事ですので、邪魔しないように眺めてるのです。


(にしても冒険者ってのはいくつ命があっても足りないとか言うが、本当にそうだよな~)


「いや!!離して!!」


(なんせこういう護衛の依頼だとどんな敵が現れるかわからないし、危険度なんてバラバラな訳だろ?)


「はは、今日の遊び道具だな~顔は微妙だがそれなりに若いから今日は楽しめそうだ」


(それにこうやって先輩冒険者が居ても殺されちゃうしな~初心者冒険者なんてこうなればただの道ずれになる訳だし、もうちょっと安全面は考慮した方がいいと思うんだ)


「んーーんーー!!」


「あっ」ぼーっと考え事してたんだけど、どうやら先輩達の戦いは終わったようだな。

 女の冒険者は口に布を巻き付けられ魔法は使えなくされてるし、男の先輩方は死んだのをいい事に装備を剥ぎ取られマッパで捨てられてる。


 それも「きったね~」散々な言われよう「お前な~致命傷与えたのにわざわざ刺すなよなーナイトの鎧はまぁまぁ高いんだぞ?」本当にこんな死に方だけは勘弁だな「とか言ってもう1人のやつを何回も刺してたのはお前だろ」「だってよぉなんかぼんぼんって感じで気に食わなかったんだから仕方ないだろ?」そこは同感です。


「いくと~?」「ご主人様?」

 ふむ、どうやらみぅとみぃも先輩達が負けた事で依頼の内容が変更になった事を理解してるようだし、そろそろ始めるかな?

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