2-12『東の森ー精密機器』
とりあえずこのままみぅをほっとくのは危ない。
「みぅ、教えるからこっちこい」
「うみゅー!」
うおって驚く速さのジャンプで宙に浮く僕が入るコタツの上にみぅはちょこんとのっかった。
(……怒るべきなのか?机に乗るなと……)猫の躾は最初が肝心だと教わった事がある。
まぁ(……許そう)きらっきらした赤い宝石のような瞳で見られた日には、許すしかないよな?
「みぃ、とりあえずあのゴブリン達は任せる、職業スキルのみで倒してみろ」
「……!はい!!」
(あ、みぃも試したかったのね)
みぃはかなーり良い返事と共にシュッと木の上を移動し、慌てて戦闘隊形をとったゴブリンたちの上に移動した。
☆☆☆☆☆
僕はみぅに説明する。
「みぅ、とりあえず説明の前に……前にも聞いたが、身体の中に巡る魔力の流れはなんとなくわかるよな?」
「うみゅ!」
(よかった~)と、とりあえず一安心。
僕には魔力が視える。もしくは前世の記憶がある。そのせいか感覚というのがいまいちないのだが、みぃに聞いて知ったのだが魔力というのは体内の中に流れてる。そういった感覚があるらしい。
魔法を使用する際は、身体の中にある魔力の道を感覚のみで操作して発動させるらしい。
そしてフィジカルスキル、身体能力に魔力を乗せるのも同じ様なものらしく、魔法能力が外へと働きかけるなら、身体能力は内に魔力を働きかける力。
なので結局この魔力の流れる感覚というのが重要ということだ。
「なら、今はどの辺に集まってるかわかるか?」
「ここ!この辺が強い感じする」
(……みぅの感じる感覚を言われてもな~)とは思うものの、まぁどこに流れてるか把握してるので充分合格点だな。
「腕か、ならその魔力を拳に移動はできるのか?」
「うみゅ!ぐーって叩く感じにしたら出来るよ?」
(……それ、もうフィジカルスキル出せてたんじゃね?)
フィジカルスキルの発動方法に言霊は必要ない。
隙の多い詠唱が必要ないから隙がなくかなり強いと思う。とはいえ発動には条件があり、身体の中の魔力を動く事により爆発寸前まで活性化させる必要がある。
(僕には向いてないな~)
つまりフィジカルスキルとは、インドア派の人間には到底扱えないアウトドア派な力である。
(いや……仕事と割り切れば解体屋をしてたし……僕にも使えるか?)
とりあえず自分のことはあとにしよう。
「ならその拳に力を入れて敵にぶつけた時にイメージしろ、今みぅの感じてる強そうな感じがする魔力ってのは、火、そして使えるスキル『魔撃』は魔力を拳の前で爆発させる技、だから当たる瞬間燃え盛る炎が拳から爆発するイメージだ」(たぶんな)
正直よく分からないが、魔法と同じならフィジカルスキルもこの容量で発動すると思う。
「……炎が拳からばーん………うみゅ!!」
こうしてみぅに僕は説明を終えた。
☆☆☆☆☆
時は遡り、みぃ。
みぅに説明しつつちらちら見てたのだが、僕の言いつけ通りに職業スキルのみで戦っていた。
ゴブリンの数は7体、そして僕が小隊だと言った理由はゴブリンがそれぞれの役割を個々で持ってそうだったからだ。
みぃから見える位置、手前に構える3体は、ボロボロだけど、剣を持つゴブリン2と盾を持つゴブリン1、その後ろに杖を持つゴブリンが2。
残りの2匹はみぃには見えない位置に隠れてるつもりのようで、手には弓、もう1匹はダガーを持ってるな。
(剣士2騎士1魔法使い2弓士1盗賊1ってとこか、狡猾な性格そのままだな、みぃが1匹と見た途端にやにやしてるわ)
多勢に無勢、けれどみぃは物怖じする様子もなく、むしろみぃが喜んでる時に良くするのだが、猫耳がぴくぴくしている
硬直するゴブリン達とみぃ、火蓋を切って落としたのはみぃ。
(相手の出方を見るタイプなのに珍しいな)
あの無表情な顔つきで内心はワクワクしてるんだな。
頭のいいみぃは既に倒すビジョンを浮かべてるのだろう、いつもどおり段階を踏むように行動に出る。
初級魔法はとても便利だ、短い詠唱を敵に悟られないためか小さな声でぶつぶつと唱えと唱えつつみぃはゴブリンの真上に飛ぶ。そして使用する「『ライト』」やはりみぃも気付いていたのか、近接系のゴブリンの目をくらまし、ついでに自身を影で見てるであろう足りない2匹にその魔法をぶつけ、その驚きで落とし姿を捉えた。
近くに居るというのに近接系のゴブリンを完全無視、離れた所で落ちている弓士ゴブリンに向けて、ライトを終えすぐに詠唱していたのだろう「『アイス』」を唱える。
みぃの前から無造作に造られた数個の氷は落ちるゴブリンの頭へ直撃し即死させた。
そしてアイスはもう一度詠唱が行われていた。
(……にしても、頭いいよな)
職業スキルのみを使え。みぃは当然のように職業スキルを水魔法で得た想像の力で違う魔法へと構築。
「『氷よ、無数の刃となって貫けーアイスー』」
本来は氷の玉を敵の頭上に作り上げ落とす、それがアイスという魔法なのだが、一回目のアイスの時に確かめたんだろうな。
想像によって自分の前に作ったアイスが敵目掛けて飛んで行ったのを、そして確信してこんな戦闘中に僕が教えた少しばかりの漢字を使いこなし詠唱を作った。正直みぃのこういうとこは僕も負けてるとしか思えないな。
みぃの想像により姿を変えた『アイス』
みぃの周りにいくつもの尖った氷を作り上げ、生き残ったゴブリン全てに容赦なく襲いかかった。
舞うのは鮮血、ゴブリンの血潮、そしてゴブリンの血にはばい菌が多く含まれ毒に近い効果があるという事をギルドのお姉さんが言っていた為か、既にそれも対応されていた。
「『ウォーター』」
本来ならば水の塊を作り、敵の頭上に落とすだけの魔法だと言うのに、想像によって水で自信を囲い簡易水の障壁を作り、一滴のゴブリンの血に触れることなく戦闘は終了していた。
(みぃ……完璧すぎ……)
水色の髪を靡かせ、ぴょーんと軽い足取りで僕とみぅの元へ戻ってきたみぃ、青い瞳は何を思ってるのやら?自慢することも無く「ご主人様、討伐しました」はしゃぐ様子もなく、ただ報告だけしてきた。
(精密機械……ん~ストレスたまらないのかな、こんな性格……)
とはいえ、、
「みぃねぇね!かっこよかった~~!!」
「えへへ、ありがとうね」
(妹には完全に素が出るんだよな~)
精密機械みたいなみぃも妹の前ではただの小さなお姉ちゃん。こんな姿を見ると少しだけホッとする。
そのうち僕にも子供っぽくして欲しいものだ。
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