19『神獣の森ー旅立ち』
森の中を移動するのはもう慣れたものだ。
「みぃねぇね、もっと足で地面をければはやくなるよ!」
「みぅは早すぎるの、みぃじゃ追い付けないよ」
ぴょんぴょんと木と木を跳ねて修行がてら森を抜ける。
(やっぱ、運動神経はみぅが圧倒的だよな~)
とはいえ、正直みぅが凄すぎるだけだと思う。なんせ……6メートルはあろう木と木の間、軽くぴょーんと跳ねてるんだからな。
(みぃ……実はお前も充分凄いんだからな)
木と木をぴょんぴょん飛び回り、浮遊で一直線に進む僕に付いてくるこの2匹、人間には絶対真似が出来ないと思うわ。
☆☆☆☆☆
数分後、、、
「みぃねぇね、それはずるだよー!!」
「みぃはこれが修行だもん」
立場は逆転していた。
(流石はみぃだな~)僕は感心している。
たぶん僕の浮遊を見て思い浮かんだんだろうな、水の魔力を操り、自身の足に上に向かう力を与えている。
沈むことの無い水の上にのり、魔力操作で僕の横を飛んでいるようだ。
(でもまぁ……結局は浅知恵だな)
「……もうダメ」
「あっ!!みぃねぇね!!」
結局の所、みぃの使った方法は……魔力の無駄使いって奴だな。
後ろを跳ねて追いかけていたみぅ、とんでもない余力を残してたのだろう神獣の森の大木がひん曲がるほどの踏み込みをつけてみぃ目掛け一直線に飛び込んだ。
(……頭はみぃがいいけど、みぅは野性的な賢さがあるんだよな)
僕がみぅを褒める理由はただ助けに行く余力があったことでは無い。みぃは落下している。そこへ浮遊の様に自由自在に空を飛べるわけじゃないみぅは助けに向かったのだ。
それもただ一直線に、つまり一瞬の確認でみぃがどの速度でどの辺に向かい落ちてゆき、自分はそこへどれぐらいの速度で辿り着けば間に合うのか、計算などはしてないだろうが、それほど高度な計算を瞬間的に測り見事に……「みぃねぇね、大丈夫?」助けてしまうのだからとんでもないと思う。
(みぅはみぃの魔法の才能を凄いって言うが、みぃもみぅの才能を怖いぐらい知ってるんだよな~)
普段はとても仲の良い姉妹だけど、いざ修行になればお互いを刺激し合う良きライバルって奴、自慢の生徒達だな。
☆☆☆☆☆
なんとか辿り着いた神獣の森の端、神獣の森にはそもそも入口や出口などはない、聖剣による神域だった為に入る者も出る者も居なかった為だろう。
なので出る時は自分の行きたい方へひたすら進み、飛び出れば良いだけだ。
「ふむ」
とはいえ、やっぱり思う所はこの2人にはあるんだろうな。
さっさと森を出ようとする僕、魔力感知で2人がそこに止まっているのを確認して振り返った。
2人は手を繋ぎ森の方をじっと見ている。
里にいる同族には嫌悪され、母には見捨てられ、それでも嫌いにはなれない母親がいる自分達の育った森。
2人の赤い瞳と青い瞳には涙黙りが出来ている。
(……やっぱ、好きって気持ちはどんな態度をとっても子供にはわかってしまうもんなんだよな~)
今だけはこの2人のことを待ってやろうと思う僕。
けれど2人は数分もしないうちに僕の方を見る。
「みぃねぇね!」
「うん……みぅ、いこっか!」
(こんな小さい子供が進む事に躊躇いを持たないのか……子供の頃の僕に見せてやりたいものだな)
「よし、じゃあ……行くぞ!!」
「うん!」「はい!」
僕達はとうとう神獣の森を飛び出した。
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