18『神獣の森ー最終確認』
この世界に転生して半年程がたっただろうな。
今日、僕とみぅとみぃは旅に出ることにする。
「準備できてるかー?」
「あーえーとーこっこれもー!!」
家の真ん中に僕は異空間収納を開いている、そこにみぅがポイポイと家の中の物をとにかく放り込んでいる。
「みぅ?それ……お出かけ用のお着替え……」
「あっ!!まぁいっか!!」
(いやいや駄目だろ……)
このみぅの適当さだけは成長しようが治らないと思う。
(ある意味みぅのこの性格のせいで、みぃがしっかり者になったんじゃないのか?)
☆☆☆☆☆
なぜ旅に出るのか?なんてのはまぁ初めの方には決めていたことだ。
憑依を解く方法はもしかしたらこんな意味のわからないファンタジー世界だし、探してみたらある可能性の方が高いしな。
(2人を鍛えてって方法は飽くまで最終手段だもんな……中に居るのが勇者と魔王、超えるなんて無理だろ……)
無理やり引き離す方法、正直な話し半分諦めてる自分がいる。
とはいえ子供の可能性と言うのは捨てきれないのも確か、勇者と魔王とねこのこ様は言っていたが、所詮はるか昔の伝説上の生き物であり、今の子供達ならば軽く超えるかもしれないな、なんて異世界のことも知らないのに淡い期待も隠しきれない。
(でもねこのこ様があれだもんな……)
あくまで淡い期待ってとこだな。
そしてまぁ鍛えるにあたっても、みぅの方が問題となっている。フィジカルスキルに関しては僕は完全に役に立てそうもないので、専門の知識を持つ師匠なんか見つけられたらいいな、みぃに関しても僕みたいな感覚で教えるよりも、みぃの性格を考慮したらしっかりとした教材、もしくは先生から学ぶ方が良さそうだしな。
☆☆☆☆☆
基本的に性格が真逆なこの2人、でもやっぱり双子だなーって思う場面もある。
狭い家なのに2人でてくてくと何か言いながら確認して回ってる。
「お着替え~!」「大丈夫」
「ごはん!」「入れたよ」
「えーとえーと」「お布団も入れたよ」
「あと~」「飲み物は入ってたよ」
息ぴったりというか、みぃがみぅの言うことを全部わかっててなんか癒されるよな。
まぁしっかり者のみぃが言ってる訳だから大丈夫だとは思うが、自分の収納魔法の中身は確認してしまうのが人間ったもんだ。
水/9681L・キノコ/8.1kg・古びたローブ/8着
(水……異空間収納ってどれだけ入れれんだろうと試したっきり入れてるから馬鹿みたいな量になってるよな~)
他にも葉っぱや、魚なども沢山入れているので数ヶ月は食うのに困ることは無いとは思う。
とはいえ、僕は決めている。この旅で僕がフォローするのはこの異空間収納と最低限の知識まで、流石に命の危機ってなるなら助けるだろうけど、あまり手助けはするつもりは無い。
理由としてはやはり憑依の解除の為だ。
この旅で2人には精神的に強くなってもらわないといけない、今でもあんな罵倒に耐え、2人きりで貧しい生活を生き抜いてきた精神力はあるだろうけど、それはまた別の強さだと僕は思っている。
(たぶんこの2人にあるのは耐えるだけの心構え、前に進む精神力ってのは耐えるよりも余っ程疲れるんだよな)
☆☆☆☆☆
さぁて出発!と行きたいところであるが、まずは2人に説明しておく。
「今から旅に出る前に説明を始める!しっかり聞くように!」
2人はそう言うと、僕の眼をしっかり見てその場で静かに待機する。
(結局のところ、2人共真面目なんだよな~)
あんな環境に居ながら良い子に育ってたもんだと思うよ、結局子供は大人によって変わると言うが、持って生まれたものも必ずあるんだなって実感出来た。
「もしも僕が居ない時に知らない人間に声をかけられたらどうする?」
一応この数ヶ月である程度は旅のルールを決めているのでまずは再確認だな。
「無視します!」「いくとに言う!」
みぃは敬語を好み、みぅは子供っぽい喋り方のまま育った感じ、にしてもみぃのこの知識は一体どこから入手したものなのやら?
「ん、2人共合ってるな、じゃあ次に迷子になった時は?」
「その場で動かず、ご主人様を待ちます!」「探す!!」
この2人のいい所は、お互いが答えを一緒にするつもりが無いとこにあると思う。
例え分からなくても、お互いに答えを真似はしない。
「残念、みぃが正解だな~」
「えへへ」「うりゅりゅ~探したらダメなの?」
「前にも言ったけど迷子になってるんだから、更に動けばもっと遠くに行ってしまう可能性があるからな?僕はお前達の居場所なら遠く離れていても分かるだろうが、僕が到着する迄に危ない事に出くわしたら守ってやることが出来ない、だからその場で待機ってのが約束だ、分かったな?」
「うん!」(……みぅは、返事はいいんだよな~)
この後も質問を何度も繰り返す。
「もしも僕が居ない時に自分より絶対強い者に襲われたら?」
「隙を着いてなりふり構わず逃げます!」「えと~いくとを待つ!!」
「残念、みぃが正解だ」
「え~いくとが居ないってことは迷子だから待ってないと行けないんじゃないの?」
「僕を待つのは迷子になった時、だけどな?危険な状態に晒されていたら話は別だ、お前達が僕の元を離れてる時になりふり構わず行動に出れば何かあったと僕は気付くだろ?なら僕もそうなれば本気を出してお前たちを助けに向かう、だから生きることを元も優先したらいいんだぞ」
「……うん……みぅとみぃねぇね、守ってもらえるの?」
「当たり前だ、僕はお前達を旅に連れてくと言った張本人だ、言わば保護者同然……親の代わりは努めさせてもらうよ」
「……うん!いくと~~」
(最近みぅは僕にやたら甘えてくるようになったよな~みぃもそれを羨ましいのかじっと見てるし……)
すりすりとまさに猫のように僕に抱きつくみぅ、最近わかったんだがこの2人が娘のように可愛いと思い始めてるのかもしれないな。
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