15『神獣の森ー希望』
「いくと……?ママは?」
「ご主人様、お母さんは?」
とりあえずねこのこ様が去ったのでキノコハウスの中に戻った僕なのだが、僕を確認するなり飛び出してきて抱きついてきた。
(……どうしてこんな目にあっても子供ってのは……いや、それが子供なんだよな)
自己解決からの2人の頭を撫でる。
「みぃ、みぅ、よく聞け……お前達のお母さんはお前たちと会えないのはなんでかわかってるか?」
こんな小さい子供に罪なんてあるわけが無い。けど無いはずの罪を持ってしまってるのもまた事実、それを隠したままだといつまでも前にはすすめない。
(はぁ……泣いてしまった、罪悪感が~~)
この2人は本当の意味を知らないだろうけれど、なぜ会えないと問えばこう答えるのは明白だからこそ聞いた。
「みぅとみぃねぇねが双子だから……」
「ねこのこ族の掟で、双子は災厄を呼ぶとされてるから……」
毎日毎日、聞かされていた言葉で植え付けられたように僕に言った。
そう、この2人がここまで植え付けられてるからこそ、僕は言うことが出来る。
「実はな?お前達が双子っていうのは対した理由じゃないんだぞ?」
「ふぇ?」「……?」
2人ともはてなマークを浮かべている。
(まぁこうなるよな?自分が母親に会えない理由を知ってて、それが違うって言われたら)
希望なんて持たせていいのか?なんてことは正直わかる訳もない、けれど希望なんて持ってしまったからと後悔するよりも、虚ろかもしれない儚く消えるかも知れない、そんな希望でも持って行動できたほうが余っ程いい事を僕は知っている。
「よく聞け2人共、お前達がお母さんに会えない理由はたったの1つだ、それはお前達の中にわるーい奴が潜んでる、それだけの事なんだ……だから僕はこれからお前達と旅に出ようと思う、2人の中の悪いやつをやっつけて、堂々と正面からお前達はお母さんに抱きついてやるんだ……」
暫くの沈黙が続く。
だけど分かっているのはその沈黙が、ただ待つだけの2人がここまで過ごして来ただけの沈黙ではないこと
(……ごめんな、僕には背中を押すことしか出来ない……踏み出すのはお前たちふたりだからさ)
撫でる手に力が入る。
下を向く2人、まず顔を上げたのは僕の予想を裏切り、みぃの方であった。
「……お母さんにぎゅーしてもらえるかな?」
ここまで希望を持たせたんだ。当然僕は言う。
「そりゃそうだ、お前達のお母さんなんだろ?」
「うん!」
いつもは姉としての威厳なのか大人しいみぃが、こうも目を真っ赤にして笑顔を見せてくるとはな。
そして続くのはみぅ。
「みぅね……怒ってるの」
こちらもまさかの言葉に驚きである。
「どうしてだ?」
「みぅ……の、ねぇねをいつも泣かせてたから、ママなんて嫌い……だから、みぅは思いっきりママを叩いて言うの」
(ふむ、まぁ強がりなんだよな)
もう見てられないぐらいに涙をぼろぼろぼろぼろ、小さな拳を握りしめ僕の方へ真っ赤な瞳を向けている。
「なんて言うんだ?」
「次……みぅとみぃねぇねを捨てたら許さないって!!」
(だろうな~殴るとかそーゆーのこの子達に無いもんな~)
「はぁ……」失敬。なんか尊くてついため息出たわ。
「なら、それを叶える為にまずは家を出る準備だな!」
「「うん!!」」
ここに来るまでにどんな景色をこの2人は見てきて、そして先にどんな景色を想像してきたんだろう。
待ち焦がれている相手に憎まれ、けれど子供ながらに一生懸命その想いを届けようと生きていた。
繰り返される虚ろな毎日を、何もできることも無く時の解決のみを望んでひたすら待っていた。
(それがどれだけ辛いことか……)
家にある物、必要なものを必死に集める2人の姿は、なんでだろうか凄く嬉しそうに見えた気がした。
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