14『神獣の森ー親心』


 やはり生きるというのはいつの時代も、どこの世界でも、どんな生物であろうと、時として残酷なもの突き付けるものなんだな。


 先程まではとても強気な強キャラを演じていたのだろうと確信できるねこのこ様のそれが僕にそう思わせる。


「……お主は……あの者の生まれ変わりじゃろう!!もうわしには耐えられんのじゃ、どうかあの子達を……」


 あんな強いのに、化け物みたいな強さを持ってるのに、それでも叶わないことなんて分かりきっているそんな眼を僕に向けてくる。

(……その赤ん坊とは全くの別人です。とは言い辛いな)

 それに多分この人はそれを知ってるはず、だからこんな恋しそうな眼を向けてきていても飛びついては来ないのだろう。


 そして言われる。「殺してやっておくれ……」


 小さな身体が震える程に言いたくないのだろう、言葉にする瞬間瞳は僕の方ではなく下を向いていたのは見ていたから知ってる。


 だというのに、僕という人間は最低なんだと改めて理解出来る。


「…………すまぬ」


 無意識にそれを断る言葉よりも先に手が出ていた。

 頬っぺを叩いた途端に、ねこのこ様は正気に戻ったように振る舞い僕に一言そう謝ってきた。


「……そうじゃな、お主はあの者では無い事など分かっておった、これはわしに課せられた使命というもの、押し付けようとして申し訳ない」

(はぁ……なんて馬鹿なんだろ、これも一種の無垢なんだろうな)


 言葉で隠せても僕の目にはそれは隠せない。


 強く強固な魔力が、弱い自分をさらけ出した事により溢れだしているのが見える。

(心に気持ちが追いついて来ないって奴だな~にしても、僕って大分変わったか?)

 他人に興味なんて湧かなかったというのに……それを見て僕は考えてしまい、それは抑えておくことが出来なくなっていた。


「親の癖に子供の面倒も見れないのかよ!!」

(あ~あ言っちゃった)


 ぴたっと去ろうとしていたねこのこ様の足が止まる。


「……お主に何がわかるというのじゃ?」

(やばい、怖い、殺される……けど……)


「わかんないよ!僕は親になったことなんて無いからな!!でも子供だった事はあるから、子供の気持ちぐらいはわかるんだ」


 はぁ……とため息をつかれてしまった。

(まぁそうなるわな、怒る気力も失せるってもんだろうな、真剣に相談してしまった相手に、何度も考えたであろう子供の気持ちだとかとやかく言われたらさ)


 結局去ろうとするねこのこ様に僕は言う。


「逃げてばっかの親より、僕の方が余っ程あの二人の事を見てる!!殺す?馬鹿じゃないのか?救ってやるよ、そしたらお前はあの二人に謝れ!!この馬鹿親が!!……ひぃ!?」


 かっこよく決めたセリフのつもりだったが、まぁ怒りを勝ったんだろうな。

 とんでもない怒気を魔力に込めてぶち込んできた。

(10回は死んだ気がしたんだが!?)

 本当にこの親、どうしてこれだけ強いのにも関わらず何も出来ないのやら?……

(それだけあの2人の中にある者がヤバいってことか)


「お主……言いおったな」

 すっごい怒ってる、はっきりいって逃げたい。


 けど、たった2ヶ月の生活で僕はあの二人に持つはずの無い興味を持ってしまった。

(絶対今度こそ、僕は守るんだ)


「言ったさ!何が悪い?子供を捨てる親は最低だけど、子供を殺す親なんて最低以上、親を名乗るのもおこがましい!!僕が救う、そしたら謝れ!!何度だって言ってやる!!」

 わからない、わからないが感情が動かされる。次から次にホイホイ出てくる言葉をただ並べるとそれが言葉になっている。


「………………………………………」


「何も言い返せないのかよ!!」


 黙るねこのこ様を煽る必要なんてないのに、つい口走る、


 そして黙るねこのこ様の口が開かれ……

「がはっ!?」る前に、とりあえず調子に乗り浮遊でねこのこ様を見下していた僕は地面に叩きつけられた。

(全く見えねぇ!?)本当に反則だと思う。




「……2人を任せたぞ」



「へ?」




 次見た時、ねこのこ様はその場から消えていた。


「くっそー!!あのばばぁめ!!」


 どうやら最後のはただ悔しくて叩きつけてきたっぽい。

(承知するならお願いしますだろ!!)

 もうぷんぷんだよぷんぷん、けどまぁ不思議なもので「はぁ……とりあえずする事出来てしまったな~」


 ここで一生終えたらいいや~程度の僕の心は晴れやかなものとなっていた。

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