11『神獣の森ー怪物』


 上には暖かな炎……というか「あっち!?あつい!?へ!?」


 結構高い位置に作ったと言うのに、魔法によるダメージは無効化、でもさこの暑さは防げないものなのだろうか?


 まぁなんとかそれに耐えるとして、もうひとつ思うことがある。

(おまたすーすーする!!……てか、恥ずかし!!)

 よく考えたら僕はみぃとみぅに葉っぱで作られた服を着せられてるだけで下から覗けば色々全開なのを忘れていた。

(……そりゃ注目されるわけだ……)

 また新たな扉を開きそうに……はならなかった。

(赤ちゃんとはいえ恥ずかしいものは恥ずかしい!!)


 と、冗談考えてるうちに計画は練っている。


 遠くに見える断崖絶壁、あれはたぶん岩山だと思う。

 なのであそこへぽーいとこの球を上に投げて、あそこへ落下させれば燃えるものもないしきっと安全だろう。

(人型の気配は無いしいいだろ)

 他の生物はたぶんいるだろうが、ここはもう背に腹はかえられぬという所存(後で謝りに行こう……そうしよう)


 決まった、大きくなりすぎて直径数メートル程にはなったがきっと大丈夫、被害は少ない。

 と、無理やり自分に思い込ませて僕は実行した。

(……ひっひだりてはそえるだけ!!!!!)

 美しくシュートを決めるように……僕はとうとう実行。


 僕の予想通り、炎の球はぽーんと高く上がり良い感じの高さまで上がっている。

(よっしゃ!!………………あっやっべ)

 だが炎の球、高く上がり良い感じの軌道を描いてたというのに僕の計算違いです。重くなり過ぎてて急降下をはじめた。


「これが……メテオ…………ごめんなさーーい!!」

 前もって謝るしかない目の前の光景、なんせ炎の球は遠くに見える岩山までまず飛ぶことは無いほどの急降下。

 むしろこのままだと間に落ちて神獣の森の大半を焼き尽くすだろうことは、流石の中卒である僕でも理解できるのだ。


 目を瞑り(神よ!!!もしも今私の願いが叶うのならば球を小さくしてください……あ、僕のじゃないです)

 そういえばそうだったと思いだす。

(僕ってやっぱ、他人に興味無いんだな~みぃとみぅになんでこんな思い入れがあるのか知らないけど、森がどうなろうが知ったこっちゃないや)


 なんか冗談も飽きたのでくるっとまわり家に入ろうとした。


 その時であった。



「こーんの……たわけーーーー!!!!!!」


 余りの声に家に帰ろうとしていた僕であったが振り返った。

(え!?さっきまであの辺には魔力なんてなかったはず!?)

 どうみても炎の球に向かう人型の魔力を感知。

 しかもこれ

(なんなんだあれ……見たことないぞ!?)

 ありえない程に巨大な魔力が凝縮された塊であるのがすぐに分かる。


「しかも速い!?」

 魔力感知だと曖昧なので物理感知で捉えてみる。

「はやすぎ……どこだ!」

 全然捉えられないほどの速さ、けれど何とかそれを捉えることが出来たのは、それが森の中を一直線に駆けていたからだろう。


「……やばい、化け物だ」

 異世界に来て日の浅い僕でもわかる、あれはやばいということは見たら直ぐに誰でも理解すると思う。


 なんせ、森の中を一直線に駆けているのだから、つまり炎の球までの最短距離を化け物みたいな速度を緩めることなく突き進んでいるということ、森にある木々がその何者かに触れる前に勝手に根から吹き飛んでいるという状況。


 そしてとうとうその距離に辿り着いたのだろう。

 スピードを殺すこと無く、かなり遠くにいる僕にすら聞こえる音「ぼごぉ」と地面が凹んだ音!?僕は凝視した。


 爆発するでもなく、砕けるでなく、ただペッコりと凹んだ地面。

 そこから飛んだ1匹は、僕が何度も見たことのある顔にそっくりである。

 白銀の髪を靡かせ、金色の目を見開き、拳をおおきく振りあげ、それは僕の放った巨大な炎球に飛び込んだ。


 ごっ!!という鈍い音、そして現れる岩とそのねこのこ族の間には超巨大な魔法陣。

「まじですか!?」

 巨大な炎の球はその拳の一撃で粉砕されていたようで、空中で砕けていた。

 予めそれすら予想してたんだろう、その為に展開されたとそれを見てわかる巨大な魔法陣。そこから真っ白な光が放たれ炎の球は跡形もなく消滅した。


 つまり、被害はゼロ。1粒の破片も森に落とすことなく成し遂げている。


「えーと?……どーしよーー!!!」


 急ぐ必要はなくなったのだろう、次はぴょんぴょんと森の木を足場に跳ねて、その何者かはこちらへと向かってきている。


(……絶対殺される、あんな化け物いるとか聞いてねぇ!!)

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