10『神獣の森ー迎撃』


「はぁ…」ため息が出る。

(所詮、知恵ある生き物はみんな人間と変わらないわな~)

 この2ヶ月、あの二人を見てたせいで僕はどうやら勘違いしてたみたいだ。

(話し合いでなんとかなる?……馬鹿か僕は……前世で何を学んできたんだ?所詮数、1が多数に対して何を言っても通じないのが言葉、異世界に来てまで再確認させられるなんて嫌気がさすな)


 なのでまぁ、する事は1つ。


(とはいえ、前世で学んだのは……もっと汚いものもあるんだよな~)

 使うまいと思っていたものだが、この際仕方ない。

 みぅとみぃには世話になったしな……この無駄に強そうな力を使って悪者にだってなってやろう。


「ぐはははは!!お前達は勘違いをしているようだな!!」


 僕の考える1が数に意見を通す方法、それは……悪の存在である。


 結局の所、数が恐れる者を1が押さえ込んでたとする。ならば数は1の事を認める事となるのはこの世の理。

 悪を作ればいい、あの二人が辛い思いをしていたのは知っている。だから出来ることなら仲間同士に戻してやりたい。


(僕は悪者……悪者ならどうする?)

 前世で散々してきたゲームを思いだす。そして考える悪者の行動といえばこれである。


 とりあえず足がぷるぷるしてやばいので、浮遊を使って浮く。

 前に1度試したものだが、案外楽に行う事ができる。

(スキル画面からONにして考えるだけで浮けるってよく考えたら凄いよな)そして予想通りねこのこ族達は驚いてる。


 それに浮いた途端飛んできたのは矢。

(マジで殺す気だったのかよ!?)

 正直飛んできた時は「ひぇ!?」なんてきもい声が出たが、バレてないようでよかったよ。

 物理による攻撃は無効化、知ってたにしろやっぱ初体験は誰だって怖いものなんだろうな。

(大人になった気分……)変な快感を覚えた。


 とまぁ、冗談言ってる暇はない。

 悪者といえば威厳、威圧、それっぽいセリフ、とりあえずさっきのひぇ!?は聞かれてないので続ける。


「双子のねこのこ族は恐怖に侵された!!そのおかげで双子のねこのこ族による封印は弱くなった……我は、ねこのこ族を絶滅させるもの!!今こそ力の封印が解かれる時~~!!」

(くそっ!!最後のセリフがなんかダサくなった!!)

 なんてことを思いながら、空に手を向ける。


 そして、本気を出したことは無いができる限りどこまでも大きな想像をして言う。



「『炎!!!』」



 …………………………………………………


「へ?」

 ごめんなさいまじで予想外です。


 脅すだけのつもりで想像した魔法。

 天に掲げた掌の先、とんでもないサイズの炎球が完成していた。


 ぐつぐつと煮えたぎる溶岩、黒いドロドロした何かが球体となって現れた。

 火柱がぼぅっと飛んでは、その球体に重力でもあるように戻っては出てを繰り返している。


 そしてまぁみぃとみぅと仲良くなってもらうために出したというのに、ねこのこ族の皆様は一目散に逃げたのか炎の球を見てる隙に1匹もいなくなっていて、現状1人となっている。

(意味ねぇ~……ていうかこれ、どうやったら消えるの?)


 先程から消すイメージを想像するが全く消えないという、本当に迷惑極まりない魔法だと思う。

(……火だろ?なら水で消えるだろ)

 と、思ったので「『水!』」出してみた。


「どうしよう……」

 さっきよりでかくなった。

(いっそ、○○玉~って言ってぶん投げてみよかな……いや、絶対森が焼け野原になるよな?)

 という訳で、詰みました。泣いていいですか?


(……まぁでも仕方ないよな~)

 いつまでもこんなの持ってる訳にもいかない。

 なんせ水を与えてからどんどん大きくなってるのだから危ないとかそーゆー次元じゃ亡くなったと思う。


 なので魔力感知を使い辺り一面の魔力反応を探す。


「……こっちだな」

 1方向のみ魔力の反応を感じない、のでそろそろ腕も吊りそうなのでぶん投げる事にしよう。



 ☆☆☆☆☆



(せーので行くぞ……せーの~で~……無理!!)

 あれから数分経っている、僕はこれを投げれずにいる。


 一応消そうと試行錯誤もした、土をまぶせば消えるんじゃね?という安易な考えでさらに膨張、水でダメなら氷だ!とかやってみたらさらーに膨張、もう今は諦めている。


(核ミサイルのスイッチ持ったらこんな気分なのだろうか……)

 経験することがないであろう気持ちを理解した気分だ。



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