09『神獣の森ー襲撃』


 2ヶ月間もの間、神獣の森にて楽しくくらいていた僕とみぅとみぃだったのだが、そんな平和も間もなくして終わりを告げる時が来た。


 外からいつもの言葉だけの罵倒とは違う、攻撃的な追い出しを行われている。


「みぃねぇね……怖いよ」


「みぅ……ごめんね」


 いつもならば、出てけ~とか、双子の悪魔~だとか、本当に声だけで何もしてこなかったというのに、今日に限りそれは今までとは異なることが起きている。


 がしゃーん!!

 キノコハウスに付いた窓ガラスが割れる音だ。

「……2人とも、隅に寄ってろ」

 窓から飛んでくるガラスの破片が当たると危ないので、窓のない壁際に2人を移動させた。

(なんなんだ今日は?)

 魔力感知は自動で発動しているので、僕は常に周りだけでなく少しぐらい離れていても壁の向こう側に何人いるか等、一目瞭然で確認できるので今日のそれがおかしい事が分かってしまう。


 いつもの罵倒、あれはいい所5~10匹程度、毎日交代制のように変わる変わるやって来ていた。

 だというのに今日は50匹は居るのが確認できている。


 そして物理感知、これは意識するとある一定距離までにある地形から生物まで見るように壁の向こうだろうが確認できるのだが、木の上隠れるように数匹のねこのこ族が弓を構えているのが見えている。


(一体何事なんだ?)


 それは間もなくしてわかった。



 1匹のねこのこ族が声を大にして言ってきた。


「ねこのこ族の厄災、双子の悪魔よ……お前たちは悪魔の生を持っているにも関わらず、ねこのこ族による禁忌を行った!!神獣の森の中での人間との関わりは禁忌!!双子の悪魔は今すぐに降伏し、火あぶりの刑に自らその身を投じよ!!さもなくば今すぐ家ごとその呪いを焼き尽くすものとする!!」


 きっといつもの僕であればこう思う。

 どっちにしても焼かれるなら誰も出ないんじゃね?なんて、ただ半笑いでそんな事を思う程度なのだろう。


 けれど不思議なものだ。

 この2人が今死ねとハッキリと言われてることが分かる。そしてそれは冗談等ではなくこの無垢な2人が震えて泣くぐらい現実にそれが行われようとしている。


(イラついてる?)

 他人のことによってイラつくなんていつぶりだろうと思う程度には心が冷えきっている僕。

 なのに感情があらわになるように身体が暑い。


「2人は待ってろな?」

 かっこよく2人にそう言い残し、僕はよちよち歩きでキノコハウスから出た。

(そういや……外に出たの2ヶ月ぶりじゃん)

 目の前に沢山のねこのこ族がいるのに、不思議と思ったのがそれだった。

(拾われた日から家から出てないって……僕ってヒモ!?)

 というよりも、数多の視線が集まり、木の影から弓を向けられてるせいか、冗談でも考えてないと怖くてやってられない。


(やべ~絶対僕びびってるよこれ)

 足がぶるぶるする。

(違った……これは普通に立ってるのがやっとなだけだった)

 赤ちゃんでした。


 というよりも僕は今目の前の出来事に驚いている。


 なんせ他のねこのこ族をこうはっきり見るのが初めてだからだ。


(普通に獣人だな?)

 あの二人があんな扱いを受けてたのはそのせいだと思う。

 2人は契約して更に人間ぽくなったが、元々がほぼ人間で美少女であった。

 だというのに、目の前に沢山居るねこのこ族はどうだろうか?

 茶トラ猫に髪の毛がついて二本足で立ってる感じだ。みぃとみぅとは似ても似つかない、まさに獣よりの獣人。

(……ありよりのありだな)こんな場面でも獣人好きは抑えられませんでしたすみません。


「さてと」

 僕は気合を入れる。

(やっぱ見る専がいいな、結局中身を知ると面倒なことこの上ない……完璧なんてフィギュア以外にはいないんだからさ)

 拾ってもらった恩というものだろうか、とりあえず僕は何故かあの二人に深い関心があるようなので、まぁだからこそ知りたい訳だ、


「なんでこんなことするんだ!!!」

 大きな声で尋ねてみた。


 すると聞こえてくる。くすくすとした笑い声「まさか双子の悪魔の契約した人間ってあれか?」「さすがにあれは無いだろ?」「あらあら人間と恋がしたいからと赤ちゃんはどうなのかしら?」「あれが契約者なら無理やり双子の悪魔捕まえて焼き殺せるんじゃないのか?」色んな声が嵐のように乱雑している。


 こんな沢山いる見た目が子供の種族を前にすると、少しは先生の話聞いてください!って言いたくなるな。

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