12『神獣の森ーねこのこ様』


 やばいやばいと芸人の如く焦る僕の足元より、ニョキっと2つの影が顔を出している。


「……ママの声」


「お母さん?」

(ん?どゆこと?)


 出てきたのは赤い髪と水色の髪のみぅとみぃ、僕は浮遊で飛んでるので空から2人がこそこそと周りを見渡してるのがよく分かる。


(ってそれどこじゃなかった!!)


「『風』」

 みぃとみぅには悪いが、今は隠れていて欲しい。

 なので風魔法で部屋の中へと放り込んだ。


「ふぅ、とりあえず隠れておいてもらおう」

 2人がきゃっ!とか可愛い声を出した後、家の中からドンガラガッシャーンな音がしたけど気にしないでおこう。


(あれ?)みぃとみぅに気を取られてる間に僕は見失ってしまったようで、キョロキョロと辺りを見渡している。

 物理感知で遠くを探すが見つからず、「帰ってくれた!?らっきー」と言った感じに家へ戻ろうとした時であった。



「こーんーのー!!!!たわけーーーー!!!!!!」


 まさかの上からの怒声、からの視界が歪む。

 瞬間にして空から落とされたとんでもない攻撃、僕は一瞬にして浮遊する身体を地面へと叩きつけられた。


(死んだ?死んだよね!?地面がめりめりめりーなんて落としたの初めてだし絶対死んだと思うんだわ!!)

 と、考える元気がある程度には死んでない僕だった。


 ☆☆☆☆☆



「ふむ」

 僕の上に踏むように蹴りを与えてくれたのか?僕の上に立ったまま動かないねこのこ族、と死んだフリしようそうしようと思う僕である。


 けれどまぁ呆気なく。


「生きてるのは分かっておる、さっさと立ち上がらんか」

 そう言ってねこのこ族は退くけれど


「……とか言って、立ち上がったらまた叩くんじゃ……」


「無論じゃ」

(この猫はんぱねぇー!!!!)ドS極まりないとはまさにこれの事だな。


「なら立ちません!」


「好きにせぃ」

(赤ちゃんらしく転んでおこうそうしよう……)

 物理無効化のお陰か正直全く痛くはなかった。けどな?死ぬ程怖い!!怖いことには変わりない!!空飛んでたら地面だよ?叩きつけられたんだよ!?

(高所恐怖症になったらどうしてくれるんだい!)

 僕はもうぷんぷんしている。


 そんな僕に当たり前のように話しかけてくる。


「わしの名はねこのこ族の長、ねこのこ様じゃ」


「ぷっ…」

(すみませんごめんなさいそんなつもりはなかったんです)

 まさか自分の事を自分で様付けするなんてと、つい笑ってしまった僕にすっごい怖い金色の眼光が降り注いできた。

(やばいよやばいよーこの人本当に怖いよぉ)

 ハッキリと分かったことがある。

(美少女の冷めた顔程怖いものは無いんだな)


 とまぁ、この止まったような空気は耐えかねない、なので僕はこの空気に耐えることが出来ず、怖いながらも勇気をふりしぼりこちらも一応名乗ることにする。


「僕の名前は……「して、お主は何しにこの森に来たのじゃ」

(僕の勇気を返してください!!)この人全く聞く気ないです。


 ていうか、よく考えたらそうなんだよな。

(僕ってなんでこの森に産まれたんだろ?)

 産まれたって事は親がいるはず?神様が身体ごと作ったのか?なんでこんな森の中に放り出す?とまぁ考えた結果、あの神様が僕のことを色々知ってたのでまぁ何となくわかった。


「あ……獣人の美少女が居たからか……」


「ん?」


「なっなんでもありません!!!」

(やべぇよあの人!!一瞬まじで殺すなにか飛ばしただろ!?死ぬビジョンが頭の中に過ぎったぞ!!)

 本当に怖いが、僭越ながら言わせていただきたいと存じます。


「すみません」なんで僕は謝るからスタートしてんだよ!あっ……本能的に喋ると殺されると思ってるか……納得。


 びくびくしつつも、立ち上がることなく僕は言う。


「この森に来た、というより……僕は産まれた時にはここにいたのでよく知らないです」


「……ここで産まれた?」なんか食いついた。

(もしやこのまま見逃してくれそうなパターン!!)

 説明を続ける。


「まぁ産まれてまもなく動けないでいる僕はウルフに食い殺されそうになって、ここに住む双子の女の子達に助けられたのでそのまま住んでるんですが……」

(よく考えたら、こんな幼女に何故敬語使ってんだろ?)

 とか思うものの、この人にタメ語はダメだと本能が悟ってるので敬語はやめられないひよってる僕である。

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