第11話 避難②

地図を見る。

次に向かうのは、創生桜小学校。町内にある比較的新しい小学校だ。


地図と風景を見比べながら、間違えないように注意して進む。


よく見れば、この町はいたるところに地震の爪痕が残っていた。潰れた家屋、曲がった信号機、落下した看板……少し場所が違えば、それはそれは悲惨だった。コンクリートの橋に亀裂が入っている。道路のアスファルトが割れている。そして遠くに海が、見える……。


地震で壊れたこの町を、人影の消えたこの町を、張り裂けそうな気持ちで歩く、歩く。歩いた先にあったのは――



……期待の創生桜小学校は、もぬけの殻であった。避難所なんて嘘じゃないか!

一歩先は絶望だった。


それでも、私は諦めなかった。

町内の他の小学校、中学校。公民館、図書館、消防署――、他には、他には……

多分、私はこのとき泣いていた。かすかな希望が次々と絶たれていくその感覚は、今でも思い出したくない。そしてそんな私たちの前に立ち塞がったのは――



頑丈なバリケードであった。

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