第15話 椿、最強説?
無事にゴブリンを討伐した後、家に戻ってからもしばらく三人で呆けていた。もう昼近くになるが、なんとなく動くのも
「それにしても衝撃的だったな……」
「ですねー。てか魔物、いましたね」
「ファンタジー映画に出てくるモノに似てました」
「あ、椿そういうのは見るんだね?」
「有名どころはだいたい観てます。映画は昔から好きなので。どちらかというと、ホラーとかグロ系を好んで観ますけどね」
「「納得した(しました)」」
なるほど、日本で恐怖耐性を上げてたのか。意外な一面を垣間見た気がする。そんな私と桜は、若干冷ややかな目で椿を見つめていた。
「別に変な趣向はありませんから! ただ好きなだけですっ」
「いや、助かるよ本当に」
「……それなら良かったです」
一人こういう存在がいると、なんかこっちも心に余裕が持てる。改めて貴重な戦力だと感じていた。
「昨日さ、排除やら決意やら言っちゃったけど、正直まだ舐めてた」
「それは私たちも同じですよ。でもさっきのでかなり自信がついたと思います」
「そうだな、もう大丈夫だ。と思いたい」
私の言葉に合わせて二人も頷いた。
「このあと水浴びしようと思ってるんだが、二人はどうする?」
「んー、じゃあ三人で行きましょう」
「そうしましょうか」
「また襲撃があるかもだしな。そのほうが良さそうだ」
「ええー、そこは普通、『ゴクッ……いいのかっ』とか『なっ! 三人だとっ』とか言うところでしょう」
「そういうイベントは後回しでいいや。次回に期待するよ」
「「……」」
「あ、今日はたまたまだぞ。決して枯れてるわけじゃないからな!」
結局みんなで川に行ったが、けしからんイベントも起こらず無事戻ってきた。当然、肌色が視界に入ることもなかった。――けど、帰り道に鳥とか小動物の姿は見たよ。あれも魔物かもしれないが、襲ってこなかったのでたぶん違うと思う。
水浴びをしてサッパリしたせいか、気分も落ち着いたので昼ご飯を食べることに。あのグロ光景のあとでも、みんな普通に食欲旺盛だった。
「さて、お楽しみのステータス確認といこうか!」
「お、待ってました!」
「はいっ」
思っていることは同じようで、そそくさと居間へ移動する。誰からにするか迷ったが、椿が率先して手を挙げたのでお譲りする。
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椿 Lv2
村人:忠誠82
職業:農民
スキル:農耕Lv2
土地を容易に耕すことができる。
農作物の成長速度を早める。<New>
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「やりましたよ啓介さん!」
「ああ、レベルが上がってるな!」
「いえ、そっちではなくて……忠誠度のほうを見てください」
何だそっちか、と少し考えてから思い至る。ここの発言は間違えちゃいけないところだ。返答によっては忠誠度が下がる可能性も……。
「おお、すごいな。もともと信頼してたけど、こうして数値で確認すると、なおさら嬉しいよ」
「ありがとうございます!」
まあ、及第点というところだった。
「スキルも上がってますね。穴掘りの影響でしょうか」
「そうだね。アナウンス的なのはなかったのかな?」
「そういうのは聞いてないですね」
どうやら、椿も桜もアナウンスはないらしい。ユニークスキル限定の仕様なんだろうか。
「作物の成長速度が、果たしてどの程度のものなのか気になります」
「ああ、畑が出来たら早速試したい」
「はい、頑張りますね」
椿を見て笑顔で頷き返した。
「ではでは、次は私がいきます」
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桜 Lv2
村人:忠誠94
職業:魔法使い
スキル:水魔法Lv2<New>
念じることでMPを消費して水を勢い良く出すことが出来る。飲用可能。形状操作可能。
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「ようやく水魔法が上がりましたね。けど……、新たな魔法を覚えるわけではないと、ふむふむ」
「前と違っているのはどこだ?」
「水を出すから水を勢い良く出すに変わってますね。あとは形状操作が出来るようになったみたいです」
「威力が上がって形も変えられるわけか」
「ですかね。このあとすぐ試します」
威力によっては、魔物を倒すことが出来るかもしれない。そこまでいかなくても、色々と有利に戦えるだろう。
「じゃあ、啓介さんのを見てみましょう」
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啓介 Lv2
職業:村長 ナナシ村 ☆
ユニークスキル:村Lv3(2/20)
『村長権限』
村への侵入・居住と追放の許可権限を持つ。※村人を対象に、忠誠度の値を任意で設定し自動で侵入・追放可能
『範囲指定』
村の規模拡大時に、拡大する土地の範囲と方向を指定できる
『追放指定』 <NEW>
追放の位置を設定できる。回数制限なし
※地上のみ
村ボーナス
☆ 豊かな土壌
村内の土壌品質に上方補正がかかる。作物が病気、連作障害にかからない。
※解放条件:初めての収穫
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アナウンスにあったとおり、村スキルが2から3に上昇している。それに新たな能力も発現していた。
「村人の上限が20人に増えたか」
「現状二人しかいないのに、上限だけはどんどん増えていきますね」
「まあ、食糧も全然足りてないからな。いま村人が増えても、餓死する未来しかないぞ?」
「ですよねー」
「さて、スキルレベル3の能力は……追放の位置設定か」
追放の位置が指定出来るようになり、普通に追い出したり、罠にハメたりが選べるようになる。罠とは別の場所に檻を作って拘束するのもアリだ。まあそれ以前に、堅牢な檻が作れたらの話だけど。
そのほかにも、ざっと思いついたことを二人に話していった――。
「すぐ思いつくのはこの程度だけど、ほかに何かあるかな」
「意見じゃなくて疑問なんですけど、指定できるのが追放だけなのは何故なんでしょう」
「たしかに、どうせなら侵入もセットでくれればいいのにな」
と、自分で言っといてアレだが、ひとつの結論に至った。
「なんで侵入の指定が無いのかは解らないけど、あっても不都合なことはわかった」
「と、言いますと?」
「まず前提として『侵入の許可』ってのは、あくまで許可をするだけだ。村人は当たり前として、魔物なんかも自らの意志で村へ入ってこようとするよな。魔物の場合は襲ってくるという意味でね」
「ですね」「そうですね」
「捕獲用の穴を村の中に作って、侵入の指定場所にするだろ? そこへ村人が帰ってきたらさ、ダイブしちゃうよね。もし穴がなくても、外から帰ってきていきなり違う場所へ移動したら……驚くし困ると思うんだ」
「それは恐ろしいですね」
「変更した場所が、啓介さんにしか判らないのも危険ですね」
これ以上は、考えても仕方がないと思い話題を変えてみる。
「それより、追放の位置を指定できるなら、結界外の罠を、あと2~3か所増やしておきたい」
「畑作りと罠、どちらを優先しますか?」
「ひとまず罠は1か所あるし、畑をある程度進めてからにしよう」
「わかりました」
「なんにしても昼からは予定どおり、各自好きなようにしてくれ」
こうして三人は、初めてのレベルアップを経験したのだった。
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