第13話 罠を作ろう
三人のステータス確認が済んだあと、椿と桜は朝ごはんを食べている。私はすでに済ませていたので、薄めたお茶を啜っているところだ。茶葉も貴重なので、ケチ臭く節約しなければならないのだ。
「食べながらでいいから聞いて欲しい。今日からは基本的に、午前中を作業の時間に、午後は自由行動にしたいと思う。村の中限定ではあるけど、自分のやりたいことをする時間に充てよう」
安全な結界がある以上、慌ててやるべきこともない。もちろん食糧事情はなんとかしないとだけどね。それにこの世界がどういう構造なのか、文明はあるのか、魔物がいるのかなど、調べる手段も思いつかなかった。
まずは自由時間を増やして、それぞれのやりたいこと、試したいことを優先したかった。そうすることで、何かいい案が浮かぶかもしれない。
「休息でもいいし、スキル研究とかでも良いってことですね!」
「ああ、どんどんやってくれ」
「午後も農作業するのはダメですか?」
「もちろんいいよ。とくに椿の場合、農作業がスキルの研究になるしね。ただ二人とも、体調管理はちゃんとしてくれよ」
「わかりました。ほかに何かありますか?」
「あとはそうだな……。転移者や現地人、魔物なんかを見つけた場合も、まずは私のところへ報告に来ること」
「「了解です!」」
急ぎの作業がない限りは、このサイクルで生活することにした。
「それで今日の予定なんだが、まずは新しい畑を作りたい。川まで続く幅10mの土地、この土地のど真ん中をズラッと畑にしよう」
「100mはありますが、全部ですか?」
「ああ、急いで全部仕上げなくてもいいが、その予定で進めてほしい」
「畑の両端はどれくらい空けましょうか」
「そうだな、川への通路にもなるから、2mずつ空けておこうか」
「了解しました」
と、ここで桜が聞いてきた。
「畑の件は了解ですっ。ちなみに、畑を土地の中心に持ってくる意図はなんですか?」
「片方に寄せたり、両端に畑を作ると、作物によっては視界が遮られるよね。あとは作業するとき、結界の外へ出なきゃいけないケースがある」
「外敵の発見と安全確保のためですね」
「あー、なるほどです!」
意図をしっかり汲み取ってくれたので、私は黙って頷き返した。
「桜には、2階にある部屋の整理をしてほしい。洋室が3部屋空いているはずだ。桜と椿の部屋として、使いやすいようにしといてくれ」
「それなんですけど、しばらくは同じ部屋でもいいですかね」
「好きにしていいよ。私が襲わないとも限らないしな」
「全然無さそうですけどね。でもありがとうございます」
私がそう返しても、椿も桜も気にした素振りはなかった。そこそこの信用は得られているようだった。
「じゃあ始めようか。私は村スキルの考察を優先させてもらうよ」
「「頑張りましょう!」」
二人と別れ、家の外へ向かいながら、まずは何から手をつけようかと思案していた。
畑は椿に任せたのだが、主食と肉がない。ジャガイモやサツマイモは主食になり得るが、できれば米や麦がほしい。肉に関しては、結界の外へ出る必要があるので迂闊には動けない。
(あとは対人対策か……)
転移者や意思疎通できる現地人が来た場合、村人になる意思があるかを確認して、居住の許可を出すつもりでいる。自動追放の基準を忠誠度50で設定しているので、少しでも不満がある場合は自動で弾かれるはずだ。
忠誠に関してを思い出し、頭の中で再確認する。
================
忠誠値
下限は0上限は99
忠誠値は様々な要因により上下変動する
90-99
村長に絶対の心服を置いている状態
70-89
村長にかなり高い信頼を置いている状態
50-69
村長にある程度の信頼を置いている状態
30-49
村長に信頼を置いていない状態
10-29
村長にかなりの不信を持っている状態
0-9
村長に殺意を持っている状態
================
やはり忠誠度は50の設定で問題ない。当面の間は、少しでも信用されてない者を村に置く予定はなかった。
別に村人でなくても、侵入させることや追放することは出来る。だがその場合、いちいち念じる必要がある。圧倒的な強者に侵入を許した瞬間、追放する間もなく制圧される可能性だってある。
(この方法を使うときは、十分注意が必要だ)
あと、村人を追放したらどうなるのかを確認したい。椿と桜を居間に呼び戻し、対人対策についての協力を仰いだ。
「作業を中断させて悪いが、どうしても今すぐ確認したい」
「じゃあ、私がやりますね。結界のきわまで行きますので、ここから合図をして下さい」
桜の協力により、以下のことが判明した。
・自発的に村を出る場合は、村人のままで出入りは自由にできる。
・私自ら村人を追放すると、村人であることが解除され、以後は侵入できない。
・追放の位置は、村人であるなしに関わらず固定の場所である。
「えげつない罠が作れそうですね」と、戻ってきた桜が開口一番に言い放った。追放後の位置は固定されているので、そこに深い穴を掘っておき、外敵が来たら侵入の許可を出す。そしてすぐさま追放して穴に落とす。どうやらそういうことみたいだ。
「なるほど、シンプルだけど、凶悪な罠になりそうだ」
「穴の深さや仕組みによっては、即死させることも可能です」
そのあとしばらくは、遭遇しそうな敵の想定や、陥りそうな状況について話し合った。結局、罠づくりを優先することに決まって作戦会議はお開きとなる。
「椿、畑は後回しにしよう。先に罠づくりを頼むよ。私はその間、周囲を警戒しておく」
「はい! お任せください!」
これは椿のスキルが活躍しそうだ。本人もそれがわかっているのか、かなり意気込んで返事をしていた。
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