第8話 初めての村人

 

 どうやら無事に表示されたようだ。私にも佐々宮さんにも、しっかり見えている。


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桜 Lv1

職業:魔法使い

スキル:水魔法Lv1

念じることでMPを消費して水を出すことが出来る。飲用可能。

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 魔法もスキルのひとつとして判別されているようだ。スキルのレベルもあるので、鍛えれば強化されていきそうな感じか。スキルの説明文に、『念じることで』とある。私のスキルもそうだったし、この世界のスキル発動は、基本念じるだけでいいのかもしれない。


 私の隣で画面を凝視していた藤堂さんは、しばらくしてウンウンと頷きながら話し出した。


「なるほど、私は魔法使いですか。今はまだ敵に対処できる能力ではないけど、サバイバルみたいなこの状況下では十分チートですね」

「スキルレベルもあるし、成長すれば攻撃手段も生えてくるんじゃないかな」

「そうですね、早く検証したいです!」


 そんな会話をしていると、


「日下部さん、私を村人にして下さい。なんでも協力します。……ただ、卑猥なことはお互い同意の上でお願いしますね?」


(え、なんだって?)


 いきなり村人になりたいと申し出てきた。とんでもない言葉をつけ加えて……。


「いやいや、しないから。少なくとも、環境が万全の状態になるまでは在りえないよ。もちろん、協力については私からもお願いしたい」

「ありがとうございます。では早速」


 村人にする方法がわからないので、とりあえず藤堂さんを見て「村に受け入れる」と念じてみる。


「どうかな。受入れを念じてみたけど、何か変化したかな」

「いえ、とくになにも。私のステータス画面も変化はないですね」


 二人で思案していると、今まで静かに聞いていた佐々宮さんが、


「居住の許可、じゃないでしょうか。村長権限の説明文にも、居住と書いてありましたし」

「なるほど、やってみるね」

「あっ、それと私もここに住まわせて頂けませんか。私もできる限り協力します。ですが、あ、アレについてはちょっと……」


(……)


「敢えて何もツッコミませんが、わかっています。協力してくれて助かります」


 気を取り直し、二人に居住の許可を念じてみる。



『ユニークスキルの解放条件<初めての村人>を達成しました』


『能力が解放されました』


『敷地の拡張が可能になりました』



「うおっ、なんだこれ!?」


 念じた瞬間、いきなり頭の中に電子音のような声が聞こえてびっくりした。なんとなく女性っぽい感じだったけど、聞いたこともない声色だ。


「どうしたんですか?」

「いや、突然頭の中に声が聞こえたんだ」

「ほー、アナウンスとは気がきく世界ですね。わかりやすいのは助かりますねっ」

「順応が早いね藤堂さん、とりあえず村人になれたか先に確認しよう」


 藤堂さんは至って平然と受け入れている。一方、佐々宮さんはポカンとしていた。


「ステータスが変化しています。どうやら無事村人になれたようです」


 三人で藤堂さんのステータス画面を確認してみる。

 

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桜 Lv1

村人:忠誠92

職業:魔法使い

スキル:水魔法Lv1

念じることでMPを消費して水を出すことが出来る。飲用可能。

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 名前の下に、村人の表記と忠誠値が新たに増えていた。この数値が高いのか低いのかは不明のままだ。


「忠誠値92ですか――。うんうん、これなら絶対に裏切らない証明になりますね」

「ん-、たしかに高そうな数値だけど、絶対とは言えないかな」

「うん? 詳細を見たら、そう信じて貰えると思うんですけど?」

「詳細って何? そんなの見えてるの?」


 藤堂さんには画面の内容が違って見えてるのだろうか。何のことだか全然わからない。


「えっと、忠誠値の箇所をしっかり意識して見てください。詳細が映し出されるイメージです」


 言われたとおりにしてみると――、忠誠値のすぐ横に詳細画面が新たに表示された。


(こんな機能があったのか。そういえば最初に画面を見たとき、タッチ入力出来ないかは試したが、凝視する的なのは試さなかったわ……)


 どこまでも有能な藤堂さんに感謝して、その詳細を確認してみる。

       

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忠誠値

下限は0 上限は99

忠誠値は様々な要因により上下変動する


90-99

村長に絶対の心服を置いている状態

70-89

村長にかなり高い信頼を置いている状態

50-69

村長にある程度の信頼を置いている状態

30-49

村長に信頼を置いていない状態

10-29

村長にかなりの不信を持っている状態

0-9

村長に殺意を持っている状態

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 なるほど、こうしてみると確かに藤堂さんの92は高い、というか高すぎる。そして9以下ヤバ過ぎ。絶対に村へ入れたくない。


「見えたよ。教えてくれてありがとう」

「いえいえ、私も正直ほっとしてます」

「それじゃあ次に、佐々宮さんのステータスを確認してみようか」


 少し不安げな佐々宮さん、たぶん自分の忠誠値が気になるんだろう。

 

「……わかりました。やってみますね」


 意を決した様子で画面に触れる佐々宮さんだったが……。


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椿 Lv1

村人:忠誠65

職業:農民

スキル:農耕Lv1

土地を容易に耕すことができる。

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 画面に映し出された内容を見て、申し訳なさそうにしていた。







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