第7話 魔法の存在

「じゃあ、次は私の番ですね!」


 今度は藤堂さんが話し始める。


「私の場合、転移する直前は、自宅近くの本屋にいました。清算が終わって店の外に出ようとしたとき、辺りが光ったと思ったら、森の中で一人でした」


 なるほど、三人とも、あの光が転移の発動条件だと思われる。

 

「最初はすごく驚きましたが、すぐに異世界転移が頭に浮かびましたね。当然、ステータスの確認とか、呪文なんかの詠唱も試しました」


(いや、当然とか言っちゃうんだね。まあ私も同じことしたもんな。気持ちは痛いほどわかります)


「結局、ステータスの確認はできませんでしたが――、ひとつだけ魔法が使えました」

「え!?」


 と、佐々宮さんが声を出して驚いていた。魔法が使えることを佐々宮さんに隠していたのだろう。不用意な行動や発言は身を亡ぼすから、全然アリの選択だと思う。


「どんな魔法なのか教えてくれないかな」

「もちろんです。私も、言える範囲でいいので、日下部さんの能力を教えて欲しいです」

「わかっている範囲で良ければ答えるよ」

「ありがとうございます。私が使えたのは水魔法です。もう少し詳しく言うと、手のひらの先から、水道の蛇口程度の水がでる魔法です」

「おおぅ、それはすごいね」


 人間が生きていくには水が絶対必要である。これは是非とも引き入れたい人材だった。ちなみにその水は普通に飲めるらしい。どれくらいの量まで出せるかは、まだ試していないとのこと。


「ほかには何かあるかな」

「そうですね。佐々宮さんがひとりだったのを確認してから合流して……あとはとくに気づいたことはありませんでした」


 ほかの転移者の可能性を考慮している辺り、流石の藤堂さんだ。


「あ、そうだ。ここに来るまで、魔物の姿は一度も見ませんでしたね」

「あの、私もそういうのは見ていません」


 この世界に、もしくはこの森に魔物はいない可能性もあるのか? 動物までいないのだとしたら食料の問題もでてくるけど……。


「さて、ここに至るまでの情報共有はこれくらいかな。あとは、今後二人がどうするつもりなのか聞きたいんだけど――」


 正直、この二人をこの村へ引き込みたい。人が増えればリスクも増える。けれどそれを言い出したらキリがない。自分なりに見極めるしかないのだ。


 生活に必要な水魔法持ちの藤堂さん。佐々宮さんにも何か能力があるかもしれないし、何より一人での行動には限界がある。そう思っていると藤堂さんが問いかけてきた。


「その前に私からも質問していいですか」

「ああ、もちろんだよ」

「スキルについて教えてほしいってのもあるのですが、そもそも日下部さんは、どうやって自分のスキルを把握することが出来たんですか?」


 そうだった。まだ私のスキルの話をしていなかった。急な水魔法使いの出現に興奮していたようだ。


「ああそれは、ステータス画面を見て、スキルとその効果を知ることができたんだよ」

「えっ、ステータス画面て何ですか!? どうやって見るのか教えて下さい!」


(どうやってと言われても、普通にPC画面を見ただけなんだが……)


「あ、見れるかもしれない」


 自分のものしか見られないんだと思い込んでいた。試してみる価値は十分にある。


「二人とも、隣の部屋に移動するから着いてきて」


 そう話し掛けながら、隣にある居間に向かって歩き出した。



◇◇◇


 居間に設置してあるパソコン画面の前に立つ。今はまだ何も映っていない。自分のを見せる前に、用心のため、二人のステータスを確認するか迷ったが、やめることにした。


「このモニターに触れるとステータスが映し出されるんだ。自分以外で試したことはないけどね」


 二人にそう説明してモニターに触れる。


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啓介 Lv1

職業:村長 (村名なし)村

ユニークスキル 村Lv1(0/5)


『村長権限』

村への侵入・居住と追放の許可権限を持つ。※村人を対象に、忠誠度の値を任意で設定し自動で侵入・追放可能

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 昨日見たものと何ら変化はないようだ。


「二人には、画面に映っている内容が見えてるかな?」

「はい見えてます。『村長権限』、この能力はすごいですね……。気になるとしたら結界強度でしょうか。あとは忠誠度の把握さえできれば、敵意のある人や反抗的な人も、安全に弾くことが出来そう……すごい」


(ひと目見ただけなのに、そこまでわかっちゃうんだね……)


 藤堂さんが有能過ぎて少し怖い。そう思っていると、


「じゃあ次は私が試してみますね」


 ゴクリと息をのんだ藤堂さんは、緊張の面持ちで画面に触れた。


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桜 Lv1

職業:魔法使い

スキル:水魔法Lv1

念じることでMPを消費して水を出すことが出来る。飲用可能

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