3/17、18、2020年めも

➖3/17、18、〜

朝、番の動く気配で目が覚めた。


まだぼーっとしている頭で、目の前の番を見つめる。

閉じられた瞳、規則正しい呼吸、安心しきった眠り。


俺の番。

じんわり胸に広がる気持ちが心地よい。

愛しい。


昨日受けてくれたプロポーズ。ヒト族の習慣を取り入れたそれに、

紅く、照れる姿を思い出して悶える。


つい体が震えてしまったが

寝返りをうっただけのようで、目覚める気配はない。


しっかり眠れる性質のようで、旅暮らしには向いていると思う。

流石に接吻したら起きてしまうだろう。自重した。


俺だって自重できるんだぞ?

ただ、今までは求愛する一手しか打てなかったからな。


俺が浮かれていたんだろう。

それと不安だったのかもしれない。


俺の番が逃げてしまうこと

拒絶、他の男に気持ちを預けていないか?


考えるだけで、気持ちが乱れる。

こんなにも俺の中で存在を占めるものがあるのか。


存在を確かめるように番を腕の中のおさめた。


…幸せだ。

多幸感というにはコレか。

すりっと頬擦りをする。

柔らかな肌。温かな体温。甘く感じる香り。


うっとりする。番の髪に鼻を埋めた。

…イイ。

この番に少しでも受け入れられた。その事実を噛み締める。


だが、

まだ油断はできない。

気持ちの一端は掴めても、まだ逃げ出してしまう予感がする。

嫌われている様子はないが、こちらを向いていると言うより

警戒している。ナニカに。


艶やかな髪を手で梳く。指に絡ませて感触を楽しんだ。


ナニカがあっても、それでも、受け入れられた。

・・拒絶は怖い。


俺にも怖いものってあったんだな。

顔を覗きこんだ。未だに安らかな呼吸を繰り返す。起きないな?


接吻したいところだが、やっと日が昇り始めた時刻。まだ起こすのは可哀想だ。

この宿も今日限り。


出立した先、野宿はないと思うがイチャつけるとは限らない。

求愛行動はしっかりしていくつもりだがな!


顔を見ながら、話をするのに舗装された旅路はちょうど良いだろう。

護衛の仕事ぶりも見せれば、喜ぶだろうか?


俺の番は働き者だなあ。

冒険者を止めず、一緒にやっていく。


本当に実現するとはな。


俺の側に居てくれ。

番の望みのままに、側に居るから。


瞳が開くのを楽しみに待ちながら。

空気が陽の光で温まるまで、寄り添っていた。


- [x] —-


残念だが、朝の支度をするようだ。

もぞりと起きた俺の番は、体を確かめるように動かす。


猫の子のような柔らかい肢体を見守りながら

寝巻きのことを考えた。


頭から被るワンピースのタイプ。

これの利点は、めくりやすい。


めくれば素肌で、脱がし易い。


上下あるものが良いみたいだが

すぐに外に出れる、動き易いなどの理由で。


高級宿なので着せた。

ピラリと捲れる姿が、イイ。


グッとくるな。下着も旅用につまらない奴じゃない。

翠色だな。


ラインでわかるんだよ。着ててもな!

他のメンバーがいないくてよかった。


居たら、目を潰さなきゃならなかったな。

俺の番の艶っぽいこの姿を、見せるわけにはいかない。


朝日を浴びた肌、

スッと伸ばしている手足。


ゆっくり確かめるように身体を動かしている。

それをのんびり見ている。


まだまだ、時間は余裕だ。


ベッドの上で捕まえてしまおうか?

いや、接吻だけ…


口角が上がる自覚しながら、

どう“ちょっかい”をかけようか、目で捉えていた。


くすぐってみるか?

そのままベッドに雪崩れ込みそうだ、止めよう。


やっぱ接吻か。・・止まるか?


ぎゅぅ〜っっと抱きしめるか?息が止まらないよう加減しないとな。


スッと動いて、着替えようとしている番を抱きしめた。


色っぽいな、朝の俺の番。

このまま二度寝ができたらサイコーなんだが、

それを許しちゃくれないよな?


頭を撫で、接吻して

ぎゅぅ〜っと後ろから抱きしめた。


この方向なら、ギリギリ

ベッドに沈み込みたくなる衝動を抑えられる。


その代わりとばかりに、頭のてっぺんに接吻をした。


柔らかな髪の感触、少しの汗の匂い

女のフェロモン


ハァァァ。

早く巣に持ち帰りたい。


着替えたがったので、

そっと解放して朝食をとることにした。



ーーー



- [x] 耳


膝の上に乗せた。


これができるのも、夜まで我慢かあ。

昨日の別依頼があって

朝ゆっくり休む


俺というより、番の体力に配慮した形だ。

長旅も初めてと聞くし、

大物を仕留めている。


精神的にも疲れただろうと、なるべく休ませる事にした。


体力の差はある。

気をつけなければ。


膝の上の番を撫でた。髪からフワリと香る

番の匂い。


スーーー(吸い込む)。


すりすりと頬擦りした。


動かない後頭部を見ていて、悪戯心が湧いた。


髪を一つにまとめた後ろ姿に、表情は見えない。

耳にかけてある髪をなぞり、

左耳を舐めた。


「ヒッ!?」言葉ではなく空気の音が発せられた。

流石に驚いて、反応したらしい。

舐められた耳を手で押さえ、


「なに?どうしたの??」という表情でこちらを見る。


ニコッと笑って返した。

白々しい!とメンバーから言われる表情だが、役立つ顔だ。


それを受けた俺の番は、余計に混乱したようだった。




ここのところ、肩の力がだいぶ抜けてきた。

椅子に乗せなければ。


口惜しい。


俺の番に手を出し奴は粉々にしてやれば良いんだ

と本心だが、うまい立ち回りとは言えない。


君と過ごすのに、護りも根回しも重要だと頭ではわかっているのだ。


番が求めるものを与えてやりたい。


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