第14話 抱っこも可 21/12/04

 今日はパーフィーより早く家を出て迷宮に向かった。


 迷宮の入り口は日夜開けられているが、基本は朝方に探索して昼頃に帰るか、食料を持ち込んで夕方までには帰ってくることが多い。

 より下層を目指そうとすると日を跨いだ探索になることもあるが、そういう場合は届け出をしなければもし遭難した時など捜索隊が向けられないらしい。


 そして、捜索依頼だが、しょっちゅう張り出されている。大半は計算違いで帰るのが遅れているだけなのだが、中には死んだことを確認していないので藁にもすがる思いで依頼が出されているものもある。


 俺は一度捜索依頼に目を通して、そこにプリシラの捜索依頼があることを確認した。

 12階層、何かのトラップに引っかかり姿を消した。手がかりなし。

 だいぶ悪質だし、もし本当なら頻発して原因究明されているはずなんだが……ちょっと確認しに行くか。


 というわけで今日も虫取り網と籠を用意して迷宮へ。

 今日の見張りも昨日、俺の瞬間移動をみた兄ちゃんだったので、知らない相方が止めようとしてきたのを押さえて彼なら大丈夫だって言っていた。ふっと意味深に笑ってから後ろ手に手を振ったら、ちょうど迷宮から帰ってきていたらしい前にいたおっさんが不思議そうにこっちに手を振りかえしていた。あんたじゃねーよ。なにこれ恥ずかしっ。


 逃げるように12階層へ到着。オートマッピングの機能を駆使して罠を探すがどこにも見当たらず、仕方ないから一度全域を歩いて確認してみることに。


 すると、行き止まりの道の奥。それも角におかしな歪みができていた。普通に見るだけじゃわからない、でもトラップとしても表示されない……120階層……ああ、これなんか俺と似た匂いがする。具体的にはチートクソ主人公の匂いだ。


 多分こいつもショートカットするために繋げただけなんだろう。俺とはまた別の手段なのでなんでダンジョン内で行われているのかわからないがこれは多分潰しておいた方がいいやつだな。


 はいはい、危ないものは燃やしましょうねー。

 どんなものだろうと干渉する二つ目の奥の手、概念魔法によりこの穴を燃やす。はい、消去完了。


 あとは俺の能力で帰宅してプリシラを連れて125階層へ。ここから迷宮の入り口まで走破することになる。印は無限じゃないしあまり無駄遣いしたくないから仕方ないね。


 プリシラが突如飛びついてきた蛇が一瞬で丸焼きにされたことに唖然としていたが、とりあえずホワイトスライムを確認しよう。

 プリシラに網と籠を持たせておんぶする。両手にお尻を乗っけていると指が肉に食い込む感触があってあっ、柔らかいってなった。


「……あの、お尻揉まないでくれますか?」

「……揉んでない」

「ていうか持ち方おかしくないですか? ちょっ、お尻広げようとしないでくださいッ!?」


 ふ、不可抗力なんだ。

 プリシラのお尻がでかいから、なんかムチムチしてる肉のせいで持っても安定しないというか。

 息子が元気になったから前屈みになりたいとか。

 男の子には色々あるんだよ!


「えっちょ待ぁああああああ!?」


 これ以上文句をつけられないために全速力で天井を走る。

 迷宮の簡単な攻略法。床はトラップの類が多いので天井を走るのが効率的だぞ(効率厨)

 なんで天井にはトラップがないんだろうな。不思議である。


 プリシラと俺自身の重力を逆転したことで120階層まで降りることになり、階段の度に大ジャンプを披露すると背中からぎゅーっと幸せな感触が押しつけられ何もいうことはない。


 で120階層に到着したので重力を戻して着地したあと、なんかすっごい怒られた。文句を言える義理じゃないのは理解してますけどもう少し私に配慮してくれても良くないですかって。その通りである。しかも途中からさりげなく尻を揉んだり胸を押し付けてもらうため張り落としそうなくらい激しい動きをしたことがバレていた。君、昨日から思ってたけど俺の顔感情がわかりづらいってよく言われるのに、なんか俺のこと理解しすぎじゃないだろうか。エスパーか? 妖怪サトリなのか?


 休憩ということで魔物巡りツアー。ホワイトスライムがいないことが確認できたところで、仕方ないので今度はプリシラに三つの選択肢を与えることにした。


 一つ目は女の子ならみんなが憧れるお米様抱っこだ。天井を走っているのを下から見たら逆さくの字とか面白い体勢なんだろうなぁ。


 二つ目はお姫様抱っこだ。正直これはお勧めしない。安定感はあるかもしれないが両手塞がれたらやれることが少なくなるし万が一の時対処が遅れるかもしれない。


 三つ目はもちろんおんぶである。抱っこも可。


 プリシラは結局、おんぶを選んだ。

 抱っこも可といえばしつこいですと怒られた。パーフィー相手にコツを掴んでいるので落とさない自信があるんだが……必要ないなら仕方がない。


 それでは一時間半、天井の旅ご案内である。

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