第13話 駆け出しへの羨望 21/12/03


 慌てて風呂を出たが手遅れだったらしい。

 リビングにはすでにプリシラがソファに座らされ、まるでリンチしているかのようにパーフィーとコノハに囲われていた。


 俺に気がつくと、パーフィーが小さく手を使って招いてくる。コノハは戸惑いの顔をしていて、プリシラというと俺に向けて私今から何されるんですか的な怯えた目をして助けを求めていた。


 この人誰と聞かれたのでプリシラとだけ。

 いつ知り合ったのか、どういう関係なのか聞かれたので今日知り合ったばかりで宿無しだから今夜泊めることになったと言えばへえ、と言って一応の納得はしてくれたみたいだ。


 で、パーフィーとコノハはそれぞれ自己紹介してプリシラもそれに応えて自己紹介する。

 そして、寝る場所はどうするつもりだったのか聞かれたので俺のベッドを使わせて今日はソファで寝るつもりだったと白状したのだが、家主がそれはダメだと言って、コノハとプリシラ、俺とパーフィーに別れて同じベッドで寝ることに。


 コノハとプリシラは堂々と男と寝る宣言したパーフィーに目を丸くしていた。えっ、じゃあもしかして今日もお楽しみはあるのだろうか。期待しちゃっていいっすか。


 息子が元気にウェイクアップしはじめ俺は慌ててちょっと前かがみに。でもプリシラにはバレたらしく、ジトっとした目を向けてきた。いや、ホントこればっかりは醜いもの見せてごめんなさい。


 転移のことは秘密を守ってくれていたらしく、一緒にお出かけしていたはずなのにいつ連れ込んだのかコノハに聞かれたりしたが、それはそれでパーフィーにコノハとのお出かけのことがバレてふーんと言われて、もう悲惨な誘爆が起こり始めている。

 お出かけ中に勝手に上がってもらってたということにしたけど無理がある言い訳だな。てか俺とプリシラが嘘を重ねるせいで段々と俺たちの親密度がやたら高いことになっているのだが?


 プリシラもなんか沼にハマった感触があったのかこれ大丈夫なんです?って目を向けてきて俺も多分……という視線を返すしかなかった。


 その後はコノハが性奴隷って知ってプリシラが俺のことを危ない人だと言うような目を向けてきたり、パーフィーが気鋭の厨二幼馴染のパーティだと知ってすごい!ってなった後、俺の方がすごい人だってパーフィーが言えばこの人が?と疑うような目を向けてきた。いや、お前120階層で助けられたやろがいって思ったけど、そういえばプリシラは何階層だったのか把握してなかったから仕方ないのか。でも転移経験しといてその疑いの視線は酷くないか?

 お前に見せた転移こそが俺がチートクソ主人公だという証拠というか奥の手のひとつなんだが。


 まあ、聞けばまだまだ駆け出しみたいなので実力を上手に測ることは出来ないのだろうと納得した。

 プリシラは俺とは違って幼馴染たちとパーティを組んでいるらしく、その話を聞いて俺は懐かしさと共に胸の痛みを覚える。


 貴族なあいつにはホント申し訳ないことをした。あいつと顔合わせできないから今こうして国外逃亡しているわけで、コノハの処女を奪ったり痴態を見てしまったり、手料理食べたりお出かけしたり、……あれ?なんだか罪を重ねているような気がするが気のせいか?いや気のせいだ。うん。


 厨二なあいつは昔はよく俺の後ろをついて周り、真似をするのが大好きだった。だからといって龍討伐まで真似しないでいいと思うんだが……。


 あのチャラい奴は……うん、氏ねばいいと思うな。パーティみんな女の子でハーレムの君主気取り。もうあいつだけ段違いで童貞感がないんだもん。俺が一人で英雄の階段を登っている間女の子口説きまくってたんだろ?なにそれふざけんな。

 まぁ、今の俺も側から見たらハーレムなんだろうが実際脈がありそうなのがパーフィーだけなので無罪である。まあ、パーフィー一人でハーレム一個以上の価値があるよね。



 あいつらとは昔はよく四人組で色々なことをしたものだが、俺が初めに冒険者の道を歩むことになってからバラけてしまった。

 一人で十分だと思ってたし真実そのとおりだった。チートクソ主人公として成り上がって英雄に。そしてその後になってから俺が本当にしたいことが昔のように馬鹿やったり、女の子と恋愛して結婚して家族をつくったり……人と関わりを持つことだった。


 なので、プリシラが素直に羨ましい。

 俺たちはそれぞれ別の道を歩み始めたし、何より俺が致命的なやらかしをして間男になったのでもう出来るだけあいつらと関係は持ちたくなかった。だってあれだぞ。何かの拍子でコノハの本名がバレて貴族な幼馴染の婚約者と発覚して俺が性奴隷として買って欲望の吐口にしたとか救いようのない事実を知られたら絶対に失望されるだろぉ。


 いや失望云々はまだいいとして、俺がいることで不快に思わせることが何よりも辛い。


 さっぱりクソなんだよなぁ俺。



 そこそこ話してプリシラも二人と仲良くなったことで後日一緒に食事しにいこうということになっていたので、コノハもパーフィーと一緒なら大丈夫だと外出許可も出して、さりげなく俺がハブられていることに傷ついていることを隠しながら、就寝準備をする。と言ってもプリシラ用に枕をひとつ取り出しただけだが。


 プリシラに風呂を堪能してもらったあと歯を磨いてトイレを済ませておやすみとだけ声をかけてから俺はパーフィーに腕を組まれて部屋に入る。


 楽しそうにベッドにダイブしたパーフィーはすぐに布団の中に潜って顔だけをひょっこりと出した。

 えっ、もしかしてそのまま寝るんですか(絶望)


 とはいえがっついてると思われたくないので(クソプライド)何も言わずに消灯して、俺も布団の中に入る。

 ……女の子のいる布団の中に入るってよくよく考えたらすごいことなのでは?(童貞魂)


 なんのアクションもないのでもしかしたら本当に寝てしまうのだろうかと思いながらも、やはり期待を捨てられずに寝ずに待っていると、しばらくしてガサガサと身じろぎして体を寄せてきた。


 今日はお客さんがいるから静かにねと言われて、俺はお楽しみをお預けにしなかったパーフィーに特大の感謝をした。

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