第12話 女難 21/12/03
決着は早々についた。
いそいそと服の乱れを直したコノハがごめんなさいと顔を真っ赤に目をうるうるさせて謝ってきた。
つい最近同じような状況になった身としては死にたくなる気持ちがよくわかる。そもそも性欲に関して俺は人に何か言える立場じゃないし、俺の部屋でしていたことだってまぁ不快じゃないというかむしろ結構ドキドキしてるというか責めるつもりは全くない。
気にしないでとだけ言ってから、二人で昼食にしたがお互い無言。ああ、パーフィーよ早く帰ってきておくれ。そう願うが厨二幼馴染は今日も夕方まで潜ると言っていたので当分帰ってこない。つまりしばらく家で二人きりということだ。
俺はまぁ,別にいいんだが、コノハが先ほどまでいた部屋に引きこもるのは気が引けるというか、コノハ的にも複雑な気持ちになるだろうから、気分を変えるために、留守番ばかりでは退屈だろうと買い物に誘った。
迷宮国家というだけあってあちらこちらに探索用の専門店が立ち並んでいるが、もちろん冒険者だけが住む国ではないためこの国にも多様な店が存在してある。
俺はコノハを連れ回して、オシャレ用の服や装飾を買って用意したり、暇つぶし用の本の追加や料理本をはじめとして、調理道具の一括購入をしたりと結構な額の豪遊をした。
というか途中から気が付いたのだがこれってデートではないだろうか?
いや、コノハには婚約者がいて、俺にもパーフィーがいるから違うのかもしれないが女の子と二人で目的もなくぶらぶら買い物して歩くなんて初めてだった。
コノハもはじめは気まずそうにしていたがだんだんと笑顔を見せ始めるようになったし、女の子には買い物させるのが一番の機嫌取りになるのかもしれない。
いい具合に時間が経ったので帰宅する。
今後ハプニングが起こらないように帰ってきた知らせをするためのインターホンを設置し終えた頃にパーフィーが帰ってきた。
どうやら別の宿に泊まると言ってきて許可を得たらしい。俺の家ってことをなぜ言わなかったのか聞いたら照れるからだとか。そんなものかと思って、今日の夕食の準備を始めるため料理本を開いてコノハと一緒に調理しようとしたらパーフィーも興味があるみたいで俺と代わることに。
女の子二人の手料理食べれるとかなんて幸せな体験なのだろうか。
夕食の用意を二人に任せて、俺は自室に目印をつける。
余った時間はホワイトスライムが発生していないかの確認だ。
もしいたら捕獲して、明日ダンジョンに潜った後、当日捕まえて持って帰ったフリしよう。
俺が移動した直後蛇が飛びかかってきたので蒲焼にする。
そのまま120階層まで上がって魔物をしらみ潰しに確認してまわる。
どうやら居ないようだと確認できたので、その時点で自宅に帰ろうと転移……したかったのだが、厄介なことに同じフロアに人がいることを確認してしまった。
もちろん、同じフロアにいるというだけで転移してしまえばバレないんだけど、なんか放置してたら死にそうなくらい弱い子みたいだった。
いや、ホントなんでここにいるんだろうか。
実力が不釣り合いだがいつからこのフロアにいるのだろうか。まだ死んでないことが奇跡である。
見捨てるのも寝覚め悪い。かと言って助けるとなると転移なしで地上まで送ると時間がかかってしまう。
せっかくコノハとパーフィーが夕食を用意してくれているのに冷ましてしまうのはあり得なかった。
仕方がないので息を潜めて身を縮めている女の子の前に姿を見せる。念のための素性確認というか、助けるべきか判断するためだ。
足音にやたらビビりまくってたんだが俺が人とわかるや否や安心してボロボロ涙を出してあわや号泣というところまで行った。
聞けば、12階層あたりでトラップを踏んだら気がつけばここに居て、どう逆立ちしても勝てないトカゲを見てビビりまくってたとか。
名前は“プリシラ”。格好通り僧侶らしい。
見た感じ無害そうなので明日迷宮の二階層あたりまで護衛したという形にするのと俺の能力について口外厳禁を約束させて転移でお持ち帰り。
今日のところは家で寝泊まりしてもらうことにするとして……コノハとパーフィーになんと説明すればいいのか。
あとで食事を持ってくるから今は部屋を出ないようにと厳命して、俺は料理ができたという二人と配膳してから夕食タイムに。卵とベーコンの旨味がぎっしりとしたキッシュでちょっと焦げ目こそあれど普通に美味かった。
すぐに平らげると二人とも嬉しそうな顔で笑顔を向け合っていて、可愛いの暴力だった。これが幸せなんだと実感した。
まだ余りがあるのでおかわりは自由にと言うだけあってちょっと量が多めだ。パーフィーが分量を間違えてそれをコノハが修正しようと頑張った結果らしい。
誰でも失敗するから気にする必要はない。それに、俺は時間停止の収納庫があるしなんならプリシラに食べさせたらいい。
食事の後、風呂を沸かして二人に先に入らせて、その間にプリシラに食事を運ぶ。リビングの声が筒抜けだったようでお若いのにもう結婚されてるんですかと聞かれた。
別に答える義理はないのだが……結婚はしてないな。したいけど。
じゃあどんな関係だって?
コノハは性奴隷でパーフィーは恋人……ではないな。なら今はなんて関係なんだろう。友達? でも肉体関係あるし……。ちなみにカキタレでは断じてない。いや、はじめはそういう面はあったけど。それだけじゃ嫌だというか。今度こそ脈ありそうなんだよ(必死)
まさかそんなこと言えるわけもないので適当に居候とだけ答えてお茶を濁す。
するとプリシラは不思議そうな顔をしてキッシュをスプーンで掬ってパクりと食べた。もぐもぐしてあっ、美味しいって感想を零した。
なんというか緊張感がすでにないというか普通の女の子っぽいのに意外と順応性高くないかこの子。
風呂の話題にも食いついてきて、図々しくもお湯に浸かりたいとか言い出すので夜中、二人が寝た後に入れてやると約束して、上がりましたと教えてくれるコノハに返事して俺も風呂へ。
……この家わりと狭いのに男俺一人で女三人ってめっちゃ幸せ空間じゃないか。
それは大変素晴らしいことなのだが、プリシラという存在を下手なことさせないため身近に置きながら隠すには、今夜のお楽しみはお預けだろう。
体を洗って、湯に浸かって。
しばらくぼーっとして、ふと思い出した。
「あ”っ」
それはパーフィーが冒険者として専門としている役割のこと。
特に聞いたことはなかったが、かつて荷車の中にいたコノハに対して驚いた時の反応でわかっている。
壁越しだろうが正確な気配を探ることができる。そんな、場合によっちゃやたら恐ろしいスキルをやたらめったら収めている器用人。
それが斥候である。
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