第11話 露見 21/12/01


 虫網と籠を持って迷宮に入ろうとしたら入り口で止められた。


 君ふざけてるの?命を無駄にするのは感心しないな。地図は絶対に持っておきなさい。あとソロは危険だからパーティ作って出直してこい。


 ボロカスに言われた。昨日はちょっと引き止められて地図ないけど大丈夫かいって心配されただけなのに今日の見張りはやたらと辛辣だった。


 ランクはと言われて以前のものはこの国では使えないと思って家に置いてきてしまっていたので発行したばかりの登録証を見せる。

 あわや立ち入り禁止の命令がされそうになったところでちょうど探索予定だった厨二幼馴染が俺の実力を保証してくれたのでことなきを得た。


「すまん、助かった」


 パーフィーは俺の格好を見て笑い、そして立ち入り禁止されそうになった状況に二度笑った。へへっ、なんだろう。昨日までの俺なら笑いすぎだ!って思ったんだろうけど今は笑われて幸せすら感じる。


 厨二幼馴染は俺の格好で迷宮で何をしようとしているのか聞いてきたのでスライムの捕獲と答えるとすぐに秘薬が目当てと当ててきた。

 はぁー博識なんすね。チートクソ主人公やってる俺はホワイトスライムなんて生き物ついさっき知ったばっかなのに。イケメンで頭良くて最高ランク冒険者のリーダーやってるとか全然妬ましくないんだけどね!……悔しいです、パーフィーさん!


 おたくのリーダー優秀すぎない? ってパーフィーを見たらみんなにバレないようにウインクをくれた。

 もしかしたらプロポーズしたら受け入れてくれるんじゃないだろうか……?(唐突)


 かっこいいところを見せたいがために良かったら一緒に行くか?って誘ったんだけど、そこまでは頼れないということでとりあえず最高到達階層であるという十階層まで送ることに。


 地図は高価なので買っておらず、事前に調査はしつつも階層ごとの独自の地図を作成中らしい。だから一人地図屋の真似してたのか。


 まぁ、ここに来るまでに強いところをアピールできたので、そこで解散し、俺は先に向かうことにした。そういえばパーフィーはもう家に泊まる許可をもらったのだろうか。

 今夜への期待も持ちながら、なんだか段々とパーフィーのことが心配になってくる。いや、言っても彼らは龍対峙を成した英雄たちである。60階層くらいになるならともかく10階層程度余裕のよっちゃんだろう。


 さて、そんなわけでやってきました120階層。ここまで来るのにおよそ一時間。途中からはRTAを走っていたが、やっぱり空間を繋げる方が楽なので125階層あたりに目印をつけておくか。


 俺はチートクソ主人公。一度行った場所というか俺が付けた目印がある場所に瞬時に移動できる力がある。

 いざとなれば帰国も一瞬だし家にも帰れる。ただ、この力のことは秘密にしてあるのでバレないことが望ましい。



 目印をつけるのは後としてまずはホワイトスライムがいるかの確認である。オートマッピングで示された魔物を一体一体確認して周り、まだ居ないということがわかった。念のため125階層まで確認したがいるのはトカゲと蛇くらいで見当たらない。


 仕方ないので今日のところは印をつけて終了である。パーフィーのところに行こうかと思ったが粘着してるみたいでうざがられたら死にたくなるので大人しく家で待っていることにした。


 迷宮の入り口から出ると「なんだもう帰ってきたのか」って煽られたかと思えば全然そんなつもりなさそうだったのでちょっとは実力を認めてもらうために瞬間移動して背後から肩をトントンと叩いた。

 驚いた声に同僚がなんだ?とこっちに顔を向けたが俺は素知らぬ顔をして帰路を歩いた。そしてニヤッと笑って振り返りサムズアップ。


 我ながら超陰気で頭悪いことしている自覚はあったが、俺を見る目が変わったのでオールOKだ。


 今日はコノハと昼食を一緒に食べられそうだと思い帰宅する。

 しかしリビングには姿がなかった。

  ……部屋にいるのか? まあ、俺もリビングより個室に籠ることの方が多かったから気持ちはわかる。


 とりあえず着替えようと俺の部屋に入ったところで俺は固まった。“向こう”も固まった。そして昂るマイサン。


 俺の部屋、ベッドの上で、半裸の可愛い女の子があれしているとか誰が想像できただろうか。


 まるで童貞処女が一時間も互いの出方を伺い続けた時のように。俺たちはまたしても、そこからどうすべきか相手の出方を見守ることになった。

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