第4話 野営 21/11/30
夜が来れば、俺は人の通る道から少し外れた場所で野営の準備を始めた。
荷車は最高級の機能性が高いもので、屋根がある完全個室型だ。野営の準備を始めるとコノハが出てきて手伝いを申し出るが、俺のチートでパパっと終わってしまうから休んでいるように促す。初体験後はしばらく違和感があるらしいからな。
ごろごろした野菜を煮詰めたポトフもどきを作ってコノハに振る舞う。俺が野営のときに食べるお馴染みの手抜き料理だったのだが、美味しいと言ってもらえて一緒に食べてくれる相手がいるだけで嬉しさで涙が出てきた。
コノハが突然の俺の変化に気遣ってくれたが失敗した。別にこの世界の父ちゃんと母ちゃんは今も元気に農家としてやっているだろうし、会いに行こうと思えばいつでも会いに行ける。
だが、こうして人と一緒になって食べるという行為を長らくしていなかったのは俺の意思だし、ほんとクソ主人公だ。
食べ終わった後、体を拭くための水とタオルを渡す。
そういえば奴隷とはいえ元貴族だ。朝も濡れタオルで汗を拭いたが風呂の習慣があったら慣れないだろうと思って聞いてみた。
コノハの家にも風呂はあったみたいだが使ったことはないらしい。だからタオルで大丈夫ですと言ってくるが、本来なら幼馴染の元で幸せにいてほしいところ俺の逃亡にわざわざ付き合わせているのだ。しかも、童貞でテンパってたせいでコノハの気持ちを疎かにして処女を奪ってしまった。
なんらかの形で償いたいので、向こうで一度風呂を体験させたいと思った。迷宮に潜る冒険者がいっぱいいるなら風呂の文化もうちの国より受け入れられているはずだしな。
飯が終われば明日の移動に備えて早めに寝かせる。日が昇る直前まで頑張らせてしまったので今朝は寝不足だったろう。
荷車に乗り込ませると、俺は入らないのか聞いてきたがもちろん入らない。狭い空間でコノハと二人きりに慣れば思い出して劣情を抱いてしまいそうだ。
見張りをすると告げ焚き火の弾ける音に耳を澄ませ、揺めきをぼーっと見つめる。
「あの……交代しましょうか?」
すると、いつのまにかコノハが荷車から出て俺の横に立っていた。寝るように言ってから四時間ほど経っていたらしい。
「出発してからも私は荷台で休んでましたし、その……ご主人様も疲れてるはずなので」
気を遣ってくれているのだろうか。昨日会ったばかりで金で買われて処女を奪われ、しかも穢したはずの相手になんて慈悲深いのだろうか。さらに可愛いとか俺にはもったいない子だ。
幸せ家族計画とかしちゃってすみませんでした。自分、夢見すぎでした!
「俺はいざとなれば寝る必要はないから心配するな。それよりコノハは荷台の上だと少ししか休まらなかっただろ。明日は一日荷台だから止まっている今のうちに休めておけ」
「……はい。かしこまりました」
コノハが荷車に戻って行くのを見送る。
えっと、俺が選んでおいてなんだけど……あの子の寝巻き姿なんかエロくない?
いやいや、待て待てコノハのことをそんな目で見るな俺。ぼーっとしてたからか自制心が足りていない。Beクール。
昨日、コノハの全部を見てしまったせいで服の下が分かってしまうためなんか逆にエロく感じているのだろう。
あー、イチャイチャラブラブチュッチュしたいがために奴隷を買ったはずなのに何してるんだか。
そう思いながら己の獣性を鎮めて朝が来るのを待った。
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