第223話 準決勝の接戦
内外問わず
「リインフォース! リインフォース!」
「ベール! ベール!」
準決勝第一試合である僕たちの入場を前に大歓声が響いているのも、その影響だろう。
「ベールって、ヴァナベルちゃんたちのこと……でいいのかな?」
「まあ、応援で『ベルと愉快な仲間たち』っていうのは呼びづらいだろうからね」
不思議そうなアルフェの声に、僕は首を竦めた。昨日の戦い振りを見て、今日ヴァナベルたちに賭けようと思った人たちの興味など、おそらくその程度のものだろう。
「……今日はアルタードを呼ぶ声が聞こえませんね」
自慢の愛機の名がなかなか聞こえてこないのが不満なのか、機体を前に進めながらホムがぽつりと呟く声が聞こえた。
「ホムが活躍すれば、きっとすぐにアルタードコールでいっぱいになるよ」
チーム名が呼ばれるのも嬉しいが、アルタードやレムレスのコールで
あくまで
どうしようもないこととはいえ、このチームで一番の弱点になっていることは否めないわけだし、今日の戦い方で学ぶことも多いだろう。本気でやると言ったヴァナベルたちが僕をどう扱ってくるのかにも、注目しなければな。勿論、優勝すると約束した以上は、無策でやられるつもりなんて微塵もないけれど。
「さぁああああああてぇええええええっ! お待たせぇええええっ致しましたぁああああああっ! 只今よりぃいいいいいいっ、
バックヤードの向こう、明るい日の光で照らされた
「参りましょう、マスター、アルフェ様」
先陣を切るホムに続いて、僕たちはゆっくりと入場口へと機体を進めた。
◇◇◇
「よしよし、調子良さそうじゃねぇか、ホム」
「ええ。勝ちに参りましたので」
同時に入場したホムとヴァナベルが、機体の距離を取った状態で対峙する。いつもよりもやや緊張した声音を耳に感じながら、僕はアーケシウスを入場口ギリギリの場所に停めた。
アルフェが僕を庇うように進み出て、アルタードの背部とも少し距離を取る。プラズマ
「ワタシはここから始めるね」
「ああ、頼むよ。アルフェ」
昨日のメルアの戦いでアルフェもかなり刺激を受けたようで、朝から
「準決勝はぁあああああああっ! 誰もが予想していなかった1年生同士の対決ゥウウウウウウッ! 勝つのはぁああああああああっ! アルタード率いるリインフォースかぁあああっ!? それとも、ベルと愉快な仲間たちかぁああああああっ!」
「リインフォース! リインフォース!」
「ベール! ベール!」
ジョニーの煽るような司会の声に、大歓声が呼応する。ジョニーはそれに満足げに口角を上げると大きく振りかぶるように右手を宙に向けて翳した。
「それではぁああああああっ! 試合――開始ィイイイイイイイッ!!!!!!」
「行くぜぇえええええっ!」
試合開始の合図と同時に、ヴァナベルがフラーゴの
「くっ!」
フラーゴの機動力を前面に出したヴァナベルの近接武器フラム・レイピアの一撃が、アルタードを急襲する。
ホムはそれを間一髪、左腕の装甲で受け、肩の
「にゃはっ! ワンテンポ遅れるのはお見通しだぜ」
ファラの魔眼ならホムのプラズマ・バーニアの弱点を見抜くだろうとは思っていた。プラズマ・バーニアは驚異的な加速力を得られるが帯電布からの放電を必要とする以上、通常の
「まさか、フラーゴでその一瞬を狙うとはね……」
一歩間違えれば、プラズマ・バーニアで相殺されるどころか一気に押し負ける危険と隣り合わせの攻撃だ。先手必勝がヴァナベルの戦い方であるとはいえ、ここでそれを見せつけられるとは思わなかったな。
「びっくりしてる暇はないよぉ~!」
「リーフ!!」
ヴァナベルの見事な強襲に感嘆の息を吐く間もなく、ヌメリンのカタフラクトが大剣を振り下ろしてくる。
「やるね」
アーケシウスを即座に後退させて攻撃を躱したが、ヌメリンは構わずそのまま地面に大剣を叩き付けた。
「よいしょぉ~~!」
A組とのクラス対抗戦と同じだ。ヌメリンが地面を陥没させて土煙を巻き上げる。
「なぁあああんとぉおおおおおおっ! ヴァナベルとヌメリンの先制攻撃ぃいいいいいいいっ! 砂塵で周りがぁああああっ見えませぇええええええん!!」
巻き上げられた砂煙で視界が一気に悪くなる。だが、それを放置するわけにはいかない。
「逆巻く風よ――疾風の加護を、ウィンド・フロー!」
「そうこなくっちゃ~!」
「なっ!」
露わになったのはヌメリンのカタフラクトだけではない。ヌメリンからは、僕のアーケシウスが丸見えになっている。
「せぇのぉおおおおっ!」
カタフラクトが大きく振りかぶって、アーケシウスを横に薙ぐ。進行方向を急いで切り替え、
だが、先ほどの風魔法の効果が残っていて砂煙が僕たちの姿を隠したのはほんの一瞬だけだった。
「まだまだぁ~!」
それすら狙いであったかのようにヌメリン大剣を振り下ろしてくる。
――まずいな。いくら僕のエーテルが無限に湧いてくるとはいえ、ヌメリンのカタフラクトとアーケシウスでは出力が違いすぎる。なんとか有効な攻撃方法を探さなければ。
「今助けるよ!」
思考を巡らせた次の瞬間、アルフェの声とともにウォーターランスが、ヌメリンのカタフラクトを攻撃して足止めした。
「アルフェ、僕のことはいい! それよりもファラを警戒して――」
言いかけると同時に、背に冷たいものが走るのを感じた。
「ファラはどこだ!?」
アーケシウスの映像盤に目を凝らし、
ヴァナベルの猛攻を凌ぐホムの後ろに、ファラのレスヴァールの影を見た。
「ホム、後ろだ!!」
警告は間に合わず、ファラの双剣はアルタードのプラズマ・バーニアから伸びる帯電布を断ち切る。
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