ネットで知り合った人に会ったとき

 前回、前々回と、ネットにまつわる双子ネタを書きましたけど、ネットで双子だとカミングアウトすると、驚かれることが多い気がします。


 自分の一番古い例は、高校生の頃の話。

 当時自分と兄は『無月』という名前で、あるマンガのファンが集うネット掲示板に出入りしていました。

 その頃まだネットをはじめたばかりでしたけど、顔も知らない何人ものファンが集まって、このキャラクターが好きとか、この展開が面白いとか話すのは、楽しかったですね。


 そのうちマンガの話だけでなく、学校でこんなことがあった。今日は家族で出掛けたなど、プライベートな話もみんなでするようになっていきました。

 そんなある日、自分は掲示板にこう書いたのです。

「自分は双子なので、一緒に歩いていると目立ってしまいます」って。


 するとすぐさま反響がありました。

「無月さん、双子だったのですか!?」

「すごい。目立つってことは、そうとうそっくりなんですね」

「双子だったのですね。お姉さんの方ですか? 妹さんの方ですか?」


 みなさん食い付きがいい。

 その掲示板ではどっちが片方が利用しているわけではなく、投稿する文章は二人で書いていおり、そのことを伝えました。

 そして……はい! ここでも男性でなく、女性と間違えられていたことがしれっと発覚!

 自分はいったい、どれだけ間違えられるの!?


 しかもその後

「てっきり女性だと思っていました」

「私も女の人だとばかり」

「私も女性のような印象を抱いていました」

 などの書き込みが複数ありました。

 当時はまだ小説も書いていなかったのに。

 しかもその掲示板で取り扱っているのは少女マンガではなく少年誌掲載のマンガ。

 なのにいったい何故!?


 まあそれはさておき。

 そんなわけで双子ということをカミングアウトしたのですが、それから数年後。

 その掲示板メンバーの一人と、直接会う機会ができたのですよ。


 一人の方が、ある同人誌即売会のイベントに売り手として参加するということで。

 自分や兄も行けそうだったので、せっかくだから会おうってことになったのです。


 相手にもブースに伺うことを伝えて、むかえた当日。

 ネットの知り合いと直接会うなんて経験ははじめてですから、ドキドキしました。


 人でごったがえす、同人誌即売会の会場。

 自分と兄はお土産にお菓子の入った箱をもって、聞いていたブースへと向かいます。

 ただ自分たちは、自他共に認める人見知り。会ったとして、ちゃんと挨拶ができるか心配でした。


 上手く喋れなくて、掲示板でよくお話ししてる無月だと言い損ねたら、気づいてもらえないまま終わるのではと不安でした。

 事前に行くことは伝えてあったものの、お客さんなんて何人もいるのですから。

 そうなったとしても不思議ありません。


 ハラハラしながら、目的のブースを訪れました。

 すると……。


「あの……」

「ひょっとして、無月さんですか!?」


 こっちが名乗る前に、向こうがわかってくれたのです。しかも一瞬で。

 どうしてわかったのか聞いてみたら、


「そっくりな双子だったから、すぐにわかりました」


 とのこと。

 確かに! 

 すごく分かりやすい特徴がありました。まさか双子であることが、こんな形で役に立つとは。


 このときは向こうも忙しくてあまりしゃべれなかったのですが、無事にお土産を渡して同人誌も買うことができました。


 後にネットで

「無月さんに会いました。本当にそっくりでした」

「あのときはすぐに気づいてくださって、ありがとうございました」

 と会ったときのことを振り返ってましたね。


 あれからもう何年も経って、その方とも疎遠になってしまいましたけど、会って話せたこと。

 双子のおかげですぐに気づいてもらえたことは、いい思い出です。

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