フォール・アウト
そうま
八月六日に降った白い雪のこと
雪。
というには、ずいぶんさらさらとしていたかもしれない。
夏の朝。夏の八時は、もうすっかり空が明るくなっている頃だ。
その頃は、人の手が入っていない場所も、今よりまだまだ多くて……
自然が自然のまま、太陽の下でのびやかに暮らしていた。
そこは草原。
そよそよ、と。
草のたばが一面に広がっていて、風できれいに波打っていて、
ずんぐりと持ち上がる丘と、そのうえに
花。
薄いピンクの花びらが、ひらひら。
茎もいっしょに揺れて、ゆらゆら。
周りのみんなも一斉に、わさわさ。
薄いピンク。白。黄色。赤。橙。
ゆれて、ゆれて。
そして、白い雪が降ってきた。
彼らは雪を知らない。冬も知らない。
でも、だから、それが雪なんだと思った。
さらさらと、ぱらぱらと、
彼らに降りそそぐ。
花びらの上に、
死の灰が塵積もる。
気がつくと、風は止んでいて……
これが、雪?
ひんやりとは、していない。
ふんわりとも、していない。
ぱらぱらと、さらさらと、ざらざらと、
死の灰が、重なって、あつくなっていく。
頭を傾げて、粉を落とす。それでも、あとからあとから
あとからあとから
雪は止まない。
花はよろこぶ。見たことのない景色だから。
ぬるい風が、頭の上をなでる。雪が払われる。花たちはまた、そよそよとおどる。
八月六日
白い雪が降った日のこと
フォール・アウト そうま @soma21
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます