第4話 イライラ 肩こり
夫がホットフラッシュになった頃、同時に肩こりを訴えてきた。当時夫はトラック運転手。夜中に起きて会社に向かう。夜中だからね、私は起きないの。
バタンという玄関に向かっていってらっしゃい、気をつけてね。のポーズはするけどね。
高速道路をひた走り、夫の帰宅はお昼頃。私はご飯とおやつを用意して帰りを待っている。何を食べたいか聞いてからすぐに作れるように待っている。
「パン? 米? 麺? それともお餅がいいかな。一応ね、カレーは作ってみたの。気分じゃないかな。……あっ、うん、食べたい物があれば言ってね」
「今日はカレーの気分じゃないから。肉でも焼いて!」
「……だっ、だよね」私はカレー鍋を冷蔵庫にしまい、肉と野菜を取り出す。
「ピーマンはいらない。玉ねぎもいらない。人参は嫌い」
子どもですか! しっかり栄養摂らないとダメだよ。喉仏まで出た言葉をしまい込んで野菜を別の皿に移すデバネズミ。
夫を怒らせてはいけない。昼夜逆転の毎日だ。時間指定で荷物を運送する仕事。渋滞に巻き込まれた日はイライラしている。
「わぁ、偉かったね、玉ねぎは食べたんだね」一口だけでも食べた時は大げさに褒めて手を叩くデバネズミ。子どもですか? 母子の会話だ。
ご飯食べたら睡眠をしっかり取らないといけない。疲れていても昼間から寝るのは大変らしい。夜寝るのと質が違う。冬は特に足先が冷たくて寝つきが悪い。
事故を起こさないように気を張っていたんだろうね。夫の肩はパンパンだ。石のように固くなった肩に湿布を貼る。貼る、はる。
───イライラと肩こりを解消するにはどうしたらいいのかしら?
うすうすになりかけの頭で考える。気持ち良く眠りに入るには何をしてあげたらいい? 考える、考える、カンガルー。あっ、いい事思いついた!
「あなたは段々眠くなる。目を閉じて……。あなたは段々眠くなる」
催眠術ですか? いや違います。あん摩マッサージ指圧師の資格を持つ友達の言葉を思い出した。「足を温めるとすぐ眠れるのよ。足首のここを摩ると……」
私はお金のかからない睡眠導入剤を思いついた。名付けてデバマッサージ。
ここで、デバマッサージのやり方を説明しましょう。
用意する物 布団と温めた自分の手。タオル一枚。
やり方
① 夫(眠りに就かせたい人)を布団にうつ伏せに寝かせる。
② 足の裏を揉みほぐす。くすぐったいと言って暴れる時は後頭部を一度、ペシって叩くと大人しくなる。
③ ふくらはぎを下から上に摩る。最初は優しく、そして強く。五回くらい。
④ 上半身を裸にしタオルをかける。寒いと言ったら、我慢だと宥める。
⑤ 腰を両手でさすり、肩に向けてまんべんなくマッサージ。
⑥ 夫にあぐらをかいてもらい、親指二本で肩甲骨を押す。
⑦ 首筋から肩にかけて摩る。皮膚が赤くなるまで摩る。
⑧ 夫を仰向けにして、胸から腹にかけて摩る。
⑨ 太腿の辺りにリンパ腺があるので、強めに擦る。
この時、真ん中の棒が元気になってきたら、また今度ねと
優しく撫でで見なかった事にする。
⑩ もう一度うつ伏せにして足首を中心にマッサージする。
何という事でしょう。これで夫はすぐに眠りに落ちたのです。いいですか、もう一度言います。デバマッサージはお金がかかりません。倹約、ケチとも言うね。
ゲーム好きの私はこのマッサージを上達させ、夫が眠りに落ちる時間を短時間に更新させるのが喜びとなった。最短三分で堕ちた時はガッツポーズだった。
今では、私も肩こりの症状がある。夫は何もしてくれない。イライラだってあるのに何もしてくれない。私はしてあげたのに。
イライラするとね、ある言葉が増える事に気がついた。
『だって』と『のに』である。
私だって疲れている。私はいつも〇〇してるのに。
ここで私は考えた。幸年期にする方法を思いついた。
貯まると嬉しい物に変えちゃおう。もちろん貯まると嬉しい物ってお金だね。けどそれは露骨である。
ダッテポイントとノニポイント。
結婚して二十七年間。不満のない夫婦なんていません。
「ダッテ健康を考えて作ってるノニ」
はい、2ポイント獲得。貯まったら交換しよう。夫婦で景品を決めておけばいい。そうね、500ポイントで外食。1000ポイントで温泉旅行。
これで幸年期になる事間違いなし。知らんけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます