14.2話
「ミルカは剣士さんでしたか。同じ武器の仲間ですね」
「ああ、やはり。カナさんも剣の使い手でしたか。……手合わせしてもらったときの棒術も凄かったですけど、どこか、剣の扱い方みたいだって思ったんです」
ミルカが嬉しそうに両手を握る。
しかし――。
『ふん。剣と刀を一緒にするのは乱暴じゃがな。似てるというだけで形が違うじゃろ。美しさとかも』
などと頭の中でクレームが入った。
カナとしては細かいことは気にしていないのだが。
剣の形すらしていない刀もあるのだし。
『でも、イマは違うでしょ』
『……つまり、えーと。形にこだわってはいかんわけで。……そう、刀には魂が宿っているのじゃよー。大陸風にいうところのインテリナントカカタナなのじゃー』
『いや魂は宿ってないでしょ。僕らそういうのわかるし。あと、インテリジェンスソードね。しかもそれ喋ったり意思があったりするっていうヤツだったような……? カタナ版があるのかどうかは知らないけど』
ここら辺が昔の人との感覚の違いなのだろうか。
クローゲンには強いこだわりがあるようだ。
「……どうしました? カナさん」
少し間が空いたことで、ミルカがきょとんとしながらカナを覗き込む。
「いえ。……ふむ、そうですね」
意識を元に戻して、カナが考え込むそぶりで親指をあごにつける。
「ミルカは――」
「はい」
「ミルカは、何になりたいのですか?」
「何に……?」
その問いに、ミルカは首をかしげた。
「強くなる、と言っても目指すものが色々とあるじゃないですか。後方から戦場を操る軍略家でしょうか。それとも、華々しく前線を駆ける指揮官でしょうか。あるいはただ、個人で強くあれば良いのでしょうか。何のために、何を目指していくのか。それを聞きたいなと思いまして」
「俺は……」
目を閉じて、考えをまとめてからミルカが口を開く。
「――強くなって、前線に立って。――みんなを、家族であるみんなを助けられるように。誰かを助けられる人間に、なりたいです。……ギリアンさんや、マイさんのように」
真剣な目。
ミルカの本心が表れているような、澄んだ美しい目であった。
「素晴らしき」
カナはその答えに好感をもった。
血の繋がらない家族のために助けになりたいという、その心に、自分自身と似たところを感じ取ったのだ。
ならば、力になろう。
そう決めたカナは――。
「では、ここに居ても暇ですし、僕たちも前線に行きましょう」
と、いきなりおかしなことを言い出した。
「え?」
「ちょいと、カナさんや? ……え、なんで前線に?」
唐突に思いもよらないことを言われて、ミルカもイブも驚いた表情になる。
「暇つぶしに、ですよ」
しかしカナは意に介さず、まったく説明にならないことを言って、ふたりを押しながら前へと進みだした。
『おい、カナよ。劣勢のところを見つけて救助に行く役目ではなかったのか?』
道中に、クローゲンから疑問がぶつけられる。
予定になかった行動を、突然思いついて実行しようというのだから、不思議に思うのは当然だろう。
『後詰めの位置は指定されてなかったし。役目を果たしていればどこでもいいんじゃないかな?』
『後詰めとは一体……』
そんなつぶやきを聞きながら、カナは最前線へとやってきた。
ふたりの困惑した隊員とともに。
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