14.1話
「ね。バーサーカーでしょー、マイちゃん」
後方からその様子をながめていたイブが、カナを見ながら楽しそうに眉をひそめた。
「防御を固めているから突撃しているのか、突撃するために防御を固めているのか……。戦術家で研究熱心なんだけど、試さずにはいられない性格というか……。ミルカっちも苦労したっしょ」
「はい……。密度が濃くて鍛えられるし、勉強にもなるんですが、……すごく、大変でした」
ちょっと遠い目をしてミルカがボソボソとつぶやいた。
「でも、俺なんかでも無理なくついていけるように配慮されているんですよね」
「そりゃー、『個人が欠けたら機能しなくなるような部隊を作るな』ってババアが口を酸っぱくして言ってるからにゃー。それに対してマイちゃんは、『わかった。汎用性のあるパーツで作れということだな』と答えたそうな。仲間をパーツ扱いとか人間的な何かが欠けてるね、あの子!」
そう言いながらも、楽し気な口調が混ざる。
飽きさせない面白い存在だと、そう言わんばかりだ。
「あはは。マイは面白い発想をしますね。技師ならでは、ということでしょうか」
それはカナも同様で、その強い個性を好ましく感じていた。
「マイが敵に食い込めば、敵はその穴をふさごうと集まります。すると、当然ながら他の場所は手薄になり浮足立つ。うん、見事な連動です。特に右側の部隊の動きがいい。マイの部隊との間にいる敵をすりつぶそうとしていますね」
「右のあたりはギリアンさんの部隊だにゃー。あたくしにゃー、人がごちゃごちゃしてるようにしか見えませんけども」
「事前に作戦があったわけでもないですし、どちらの部隊も自己判断で行動しているのでしょうね。柔軟な戦い方と言えましょう。よきかな、よきかな」
オーリエールの方針は人材の重視であり、育成と生存が柱になっている。
ほとんどが孤児という境遇の、同年代ばかりが集まる集団の仲間意識は強固であろう。
その中で要所を大人や年長者が抑えることで、うまくバランスをとって協調へと繋げている。
競争や規律よりも、協調や自由を重んじる気風、それが子供たちの連携を高める要因であり、この傭兵団の強みなのだろう。
カナ自身、そういう気風を心地よく感じていた。
「……でも、マイさんの部隊を離れたのは、きつかったからではないんですよ。実は長槍が不得意でして……、足手まといにならないように抜けさせてもらったんです。……あんまり力が無いせいでしょうか。剣ならなんとかなるのですが」
と、ミルカがしょんぼりしながら話を戻す。
先程の光景を見た限り、マイの戦術は長槍とクロスボウで構成されたもので、剣を扱う者はいなかった。
カナの隊に配属されたのもそういう経緯だったらしい。
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