第14話 解釈違いの支援隊

 派手な立ち振る舞いで注目集めるマイの部隊だが、それだけに敵の攻撃が集中することも自然な流れであった。

 歩兵の合流が素早く行われたことで、すでに数は敵軍に有利な状況である。

 そして突出したことで、敵陣に食い込む形となっているのだから、三方向からの一斉攻撃をうけることになるのだ。

 それだけに負荷は大きく、わずかなミスが崩壊を引き起こしかねない状況であると言えよう。


 しかしそれは、他の方面への負荷が薄れるという意味でもある。


「マイの方に注意が逸れている。斬り込むぞ!」


 状況が動いたのならば、それにあわせて対応するのもまた自然の流れだ。

 ギリアンが気勢をあげて部隊を前へと動かした。


 エルフの弓隊からは隙間を縫うように弓矢が放たれ、カライス伯爵の軍を削っていく。

 マイの部隊の左側からは、それに合わせるように剣士隊が乱戦に持ち込む。


 オーリエール傭兵団では、各部隊長が自在に動ける権限が与えられている。

 これは戦況の変化への対応を柔軟にさせるためであり、自ら考え行動できる人材へと教育するためでもあった。


「ガキどもが……っ。調子に乗りやがってっ! 何してるんだお前ら、大人の強さを思い知らせてやれ!」


 なんとか挽回しようと、騎兵を率いる騎士が怒声とともに指示を出した。

 部下に対して、なんら具体的な指示もなく。



 そんな声が耳に入ったのか、後方に控えるオーリエールが静かに口を開いた。


「ああ、確かにガキだろうさ。どれだけ才能があろうが、どうしたって成長の途上にあるのは明白だよ」


 オーリエールは目をつぶって、椅子に座ったまま手のひらを上にし、そしてその指を動かす。

 応えるように、即座に紅茶の入ったティーカップが手渡され、その香りを楽しんでから、オーリエールは紅茶を口にした。


 手渡したのは獣人の子。

 少女というよりは成人に近い女性――セミナリア。

 オーリエールの補佐を務める者であり、ギリアンと並ぶ古参兵のひとりだ。


「――でもね。ガキではあるけど、戦場で育ち、戦場で鍛え上げられた傭兵だよ。確かに、純粋な力比べでは大人には勝てないかもしれないけどさ。平和な国の実戦経験のないチェリーボーイどもじゃあ、そのガキにすら劣るんじゃないかねぇ」


 オーリエールが指を軽く弾いて磁器を鳴らした。

 その言葉に、セミナリアが微笑して答える。


「いえ、勝てます。余裕ですよ。力比べであっても」

「おや、そうかい? ……アンタはそうだろうね、セミナリア」


 横から口を挟んだセミナリアに、オーリエールは苦笑しながらティーカップを差し出す。

 二杯目の要求であった。

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