第11話 貴族フレンズ?

「ところで部隊のメンバーはこれだけなのですか?」


 何気ない気持ちで、カナがそう口にする。

 これは人数が少ないという意味ではなかったのだが、周囲はそう受け取らなかったようだ。

 ミルカが元気よく、丁寧な説明をし始めた。


「はい! 同じ役目のフレンツ教官は研修の意味もあって20人ぐらい連れていますが、こちらは新設の部隊ですので。恐らく、カナさんが来るまで適正のある人がいなかったのでしょうね」


「ミルカっちはマイちゃんの部隊から。あたしは医療隊から異動してるんだ。直前ってこともあって、あまり人を動かせる状況でもないんだよね」


「それはそれは。そういえばミルカはマイの訓練の時に小隊を率いてましたね。おふたりが来てくれただけでも感謝しないと」


 ミルカとイブから事情を聞き、別に何の不満もなかったカナはにこりと笑って手を握り合わせた。

 これは職業・聖女をしていた影響での癖である。

 ロロやクニスからの教育の成果とカナの学習能力の高さが合わさり、女性らしさの演出も無意識のうちにこなすのだ。


「なーに、その分少数精鋭なのだよ。ミルカっちはこう見えてこの傭兵団でも古参なんだぜぇ。なんと9年も! 9年もいるのに、多分カナちゃんより年下だぜぇ! どういうことだ! アテクシに若さをよこせ! いや若いけど。若いけどなァ!」


「あ、いつもの発作ですか。落ち着くためのお薬はないのですか?」

「病気じゃねえええってばよん! ……で、あたしは前線で治療する役目ってことなんだろうねい。くっそ……、あたしもぬくりたかった、ただ薬を渡すだけの……、いや結構あそこもグロかったにゃあ」


 いつも通りのイブとして色々脱線しながらも、とりあえず精鋭らしい、ということは伝わってきた。

 錬金術師だと言っていたが、それが治療に活かされているのだろう。


「なるほど、おふたりとも立派なのですね」

「いえ、俺は……、他の皆さんみたいに輝くような才能がありません。ただ、長く居るだけの、子供です……」


 カナの何気ない言葉を聞いて、ミルカが自信なさげにうなだれる。

 そんな劣等感にさいなまれる様子を見て、カナはミルカの両肩を掴んだ。


「いえいえ。戦場で前線に立ち、長く生き残っているというだけで立派なものですよ。才能がないと思うのならば、鍛えればいいのです。私もまだまだ未熟でして、訓練でよければご一緒にいかがですか?」


 驚いて顔を上げるミルカの目を見つめ、カナが優しく励ました。

 もっともその口ぶりは、まるで歴戦の武人のようではあったが。


「ぜ、ぜひ、お願いします! お手合わせを!」


 元気よくそう答えたミルカに、カナがにこりと無言の返事をした。


「うむうむ。傷ができたら、イブちゃんが実験体にしてやろうぞ? さあ、存分に痛めたまへ! なんなら腕の3本ぐらいもげても構わぬよ?」


 3本て。

 それではマイナス1本になってしまう。


「いや、構うと思いますよ……」

「え、えーと。普通の治療をお願いします……」


 当たり前だが、ミルカも思いっきり引いた顔をしていた。

 まさか治療に問題があって追い出されたのでは……、という疑念がわいてくるほどに。

 最後に、クロがぽつりとつぶやいた。


『……最近の人間は腕がもげても生えてくるのかのう?』

『……生えないから』

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