8.2話
「色々ともっともらしいことを言いましたが、一番の理由は居心地が良さそうだったから、ですね。ロロが、――人見知りの激しいロロが珍しく嫌がっていません。もしかしたら、はじめての友達ができるかもしれませんから」
カナはそう言って、ニコリと笑った。
ロロのことも含めて、包括的に考えたわけであったが……。
「……カナ姉様。……そんなことを気にかけていらしたのですか」
友達がどうこうという話がまずかったのかもしれない。
カナに巻き付かれたまま、少し機嫌の悪い目付きになって、ロロが抗議をはじめた。
「むー。ちょっとうざいです。……それに、恥ずかしいじゃないですか」
「あ、ごめんね。でもロロに友達ができたら僕も嬉しいんだ」
「カナ姉様にも友達なんていないでしょう。何を上から目線になってるのですか」
「そういえばそうだね。じゃあ、一緒に友達を増やそう!」
「……はぁ、仕方ないですね。カナ姉様のお友達なら自然と話すことも多くなるでしょうから、それでいいですよ。お断りしますと、またうざそうですし」
カナが姉ぶって保護者のような温かい目を向けるとロロはうざがるのだ。
なかなか難しいお年頃である。
「いいじゃないか、微笑ましい理由だよ。そのとおり、友達はいた方が人生楽しめるさね。ワタシなんか昔の友達はみぃんなくたばっちまって、ほとんど残っちゃいないよ。それでも数多く友達がいたから稀に生き残るやつもいたわけさ」
そこまでいってオーリエールが肩をすくめた。
一息いれたところで、再びオーリエールが口を開く。
「……数だよ数、兵士と一緒で友達も多けりゃ多いほど将来に残る数も増えるってもんだ。ま、質もなけりゃ話にならんけどさ。……あれ、そうすると質の方が大事なのかねえ? まあ、とにかく数が多けりゃ質がいいのも混ざるさね」
およそ友達に対するには相応しくない言い草で、オーリエールが乱暴な理論を語りだした。
間違いなく、ロロには適してないやり方だ。
どちらかというと軍事的な法則とかそういうものな気がするし、そもそも作るテクニックの方が必要となるだろう。
思った通り、何言ってるのこの人、という目付きでロロが見つめている。
「カナ姉様、何いってるんですかこの人」
それどころか思いっきり口に出していた。
「引きこもりには難しい話です。下僕や奴隷なら作り方もわかるのですが」
「うんうん。もう引きこもりじゃないからロロも大丈夫だよ。あと下僕や奴隷は友達とは違うからね」
「ロロのために働くのだから同じかと思っておりました。物語の御本にも『私の頼みをなんでも聞いてくれる下僕がいますから。いえ、世間体では友達でしたね?』という令嬢の言葉が……」
「うん、それ悪役の子だからね。友達という名の下僕を作っているだけだからね」
「どういう教育してるんだい、アンタの家は」
ロロの友達論にはオーリエールも呆れ顔である。
元々はカナの方がロロから常識を教わっていたはずなのだが、あいにくロロは引きこもりであった。
多少とはいえ聖女として外にでていたカナの方が詳しいこともあるのだ。
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