6.1話

「ナニナニ、新入りちゃんたち? ちょーかわいいじゃないラブリーじゃないキュートじゃないグッドじゃないガハハじゃない。これから末永くアテクシとヨロシクネ! おぅけぃ、いえー!」


(何、この人……)


 少女のその外見からはまったく想像できない、連撃のようなトークを放たれて、カナたちはさらなる衝撃と困惑を受けることとなった。

 カナは、眉をひそめた表情を隠さないまま、ロロは眉だけを歪めたままに、互いに顔を向けて相談事のように語り合う。


「姉様、外の世界ではこのような珍妙な生き物が?」

「こらこら、珍妙とか本人の前でいってはいけませんよ。本人の前では。ちなみに初遭遇のナマモノです」


 ふたりともに割と失礼なことを口にしているが、正面の少女はまったく意に介さず、得意顔になって親指を立てた。


「ハッハー! アタシちゃんサマは世界にオンリーワンでナンバーワンだ! レアだぜー、レア。レアなナマモノ、略してレアモノってやつですぞ? ……んー、かたいね。まだ緊張してるんだねー、いいよいいよ、ウブな感じ。そんなアタシはイブだよイブ。イブリス・ザカル・ラーズィですぞー! 割と大体、そんなフルネームだったかもよ! 多分!」


『……凄まじいイロモノじゃのう』


 と、頭の中でクロがつぶやくが、同意せざるを得なかった。


「この人、記憶障害なのでしょうか。ご自分の名前すら……」

「……関わらない方がいい頭をお持ちでいらっしゃるのでは。危険ですよ、姉様」


「おおぅ、君達なかなか丁寧そうなのに毒があるねぃ! ポイズンだねぃ! ……ま、イカレた奴と思われたままなのもアレなので落ち着きますか。……改めまして、イブリスです。……仲良くしてくれると嬉しいです」


 イブリスと名乗った少女の先程までの騒々しい口調が、宣言と共に静かなものへと切り替わった。

 その変わりようにカナは少し驚いたが、すぐに気を取り直しあいさつを返す。


「……えと。……いきなり冷静になられましたね。申し遅れました、僕はカナ・レギナ・クラブです。こちらは妹の」

「……ロロです」


「美しいお名前ですね。ご質問があればお気軽に申してくださいね。……なーんて、驚かせてちゃったかなー? ま、人生楽しまなきゃ損ソンってことで!」


 静かな表情を見せていたイブだが、再びテンションが高めの喋り方へと変化する。

 表情だけは変化がないので不気味ですらあった。


「おっと、表情も変えないと。失敬失敬」

「それ、意識して変えるものなんです?」


「いやいや、感情豊かなイブちゃんですぞー。疑い良くない! 先程はごあいさつ用ハイテンションで、普段はこの程度のお気軽さかにゃーん。こういうのは使い分けだよねん。カナちゃん、ロロちゃん、よろしくですぞー」


「……姉様、ロロはもう疲れてきました。休んでいいですか」

「奇遇だね。でも、まだこの人としか話してないから……」


 ロロがうんざりした表情で頭を抱えているが、仕方のないことだろう。


「おやおや、イブちゃんがハジメテの相手だった? じゃあまあ、リーダー格の子にごあいさつツアーしちゃおっか。せっかくだし、暇でしょ? ウンよし決まった、ごーごーですぞー!」


「強引な……。とはいえ客の立場ですし、紹介していただけるのはありがたいですね」

「……はぁ、休んでいたいです」


 ロロがため息を吐き、カナは仕方なくその手を引いた。

 しぶしぶな表情ではあったが、カナの手を握り返してロロも歩みを再開する。

 カナはにっこり笑って頷いて、にぎやかに先を進むイブのあとについていくのであった。

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