第12話 衝撃的な事実
パーティーに出席してから、澤田に対する思いが変わってきている。
思った以上に仕事ができる奴で気も利く。
仕事を任すと、俺が求めた以上のことをしてくれる。
正直、仕事でこいつがいないということを考えるとぞっとするぐらいに俺にとって需要な存在になりつつある。
パーティーの時に見た姿も忘れられず、よく見ると澤田は綺麗だ。
澤田は高梨は本当に美人だとよく言っているが、俺から見れば澤田の方が美人だと思う。
面と向かって言ったことは無いが、本当にそう思っている。
相変わらず高梨からは連絡がくるが無視をしている。
無視をするから澤田にも連絡がいくと分かっているし、変な勘違いをされないか不安だったが、どうしても高梨を相手にすることができない。
父親の面子もあるから無下にもできないから、早く高梨が察知して引いてくれないかと願っているが、しつこい奴なのか図太い奴なのか一向に引く気配がないのが、最近の悩みの種だ。
パーティーの日を境に藤井がやたら澤田に絡んでいるのも気に食わない。
やたら食事に誘ったり、あれこれ言ってはプレゼントを渡しているようだ。
満更でもなさそうな澤田を見ると余計腹がたってくる。
藤井には俺の秘書だからちょっかいを出すなと散々言っているが、全く聞く耳を持たない。
まだ、二人で食事には行ったことがないようで会社で会うだけの関係のようだから、澤田にも俺の秘書だということを忘れずに行動しろと逐一言っている。
もちろん仕事ができるということもあるが、澤田が目に入っていないと気になるから、最近は泊まりの出張にも同行させている。
急な出張でも対応できるように部屋に準備を置いているようだったから、予定が出来れば連れて行っていた。
連れて行けば役に立つし、お客と顔見知りになるから、その後の仕事もスムーズに進むから楽なのもあった。
今日も朝から電話があり、藤井と進めていた商談に進展がありそうだ。
急いで藤井の予定を確認して、急遽会議を設定することにした。
遠方での打ち合わせと開始時間が遅いこともあって、泊まりの出張になる。
俺は部屋から顔出して、澤田に話かける
「澤田、ちょっといいか。この会社の過去決算状況の資料を集めてくれ。資料が集まったら、持ってきてくれ。」
仕事が早い奴だから、直ぐにドアがノックされるだろうなと思いながら、他の仕事を進めていると予想通り、直ぐにドアがノックされ澤田がやってくる。
資料を受け取ると出張のことを伝えると、分かったと言って部屋を出て行く。
ワイシャツの替えがなかったことを思い出し、お客の手土産を買うついでにとって来ようと思い、出発時間に間に合うように部屋を出る。
残りの仕事は目的地に向かう車の中ですれば良いし、昼食も澤田には悪いが車中で取ればいい。
澤田は運転も上手く安全運転だから、目的地への時間を有効活用できるのも非常にありがたい。
出発時間に間に合うように会社を出たはずだったのに、戻る頃にはぎりぎりの時間となっていた。
急いで澤田に声をかけて車に乗って目的地へ向かう。
車中では資料の最終チェックと会議の流れをシミュレーションして、準備万端の状態で目的地に着くことができた。
ホテルのロビーに着くと藤井は既に到着していた。
藤井も俺たちの姿を見つけると近寄ってきて
「澤田さん、こんにちは。今日も一段と綺麗だね。今日は泊まりだし会議後の会食もないから、折角の機会だから夜ご飯を御馳走するよ。」
と仕事そっちのけで澤田に話しかける。
澤田はもじもじしているのが、余計気に食わない。
「藤井、俺たちは今日重要な会議を控えているんだから、もう少し緊張感をもてよ。時間もないから、先に打ち合わせするぞ。」
とホテルで二人で食事するなんてとんでもないと思いながら、藤井を予約してある会議室へ引きずり込む。
「おい、健太。澤田さんと話してるのに邪魔しないでくれと。いつも俺の秘書に手を出すなとか言って邪魔してくるし、澤田さんのこと気になるのか。」
とニヤニヤ俺に問いかけて来る。
「俺が澤田なんか好きなわけないだろ。ただの秘書なんだから。」
「澤田さんは公私混同するタイプじゃないし、好きじゃないなら俺の邪魔しないでくれる。」
と相変わらずニヤニヤしている。
「おい、いい加減にしろ。時間もないし、今日は大一番の仕事なんだから、くだらないこと言ってないで仕事するぞ。」
と言ってこの会話を終わらせるも、もし二人が付き合ったらと考えると胸がチクりと痛んだ。
そんな感情に気付かないふりをして、仕事に頭を切り替えた。
あっという間に時間は経ち予定していた商談も上手くまとまり、会議室を出る頃には俺の気分は上々だった。
会議室を出ると澤田が待ち構えている。
俺はアイコンタクトで手土産を渡せと指示すると、それに気付いた澤田はお客に手土産を渡し、ホテルの部屋へ案内する為、エレベーターへ向かう。
最近、言葉を交わさなくても意思疎通ができるようになったことが何だか嬉しい。
そのまま後について客を見送る。
今日も良く頑張ってくれた、疲れたから部屋に行こうと澤田に声をかけようと口を開きかけたろころ、藤井が澤田の肩を掴んで
「澤田さん、お疲れ。澤田さんのおかげで商談も上手くいったし、お祝いにここのレストランで食事しよう。」
藤井がまた澤田にちょっかいを出し始めた。
澤田は疲れているのに食事なんて何を言っているんだ、澤田は断るに決まっているだろ、全く気がきかない奴だと思いながら澤田を見ると、澤田は断る様子ではなく悩んでいるようにも見える。
「澤田は疲れているから、部屋に戻れ。食事はルームサービスをを頼めば良い。」
と俺はイライラしながら、藤井に言い捨ててやる。
その時、この場で聞くはずもないし、聞きたくない声が耳に入ってくる。
「健太さん、何度も連絡してるのに何で電話にでないのよ。」
何でこの女がここにいるんだ。
「あれっ、高梨さん。何でこんなところにいるんだい?」
と藤井専務が女に話しかけている。
「澤田さんが教えてくれたのよ。私も予定があるのにわざわざ来たの。食事もまだだから、一緒に食事しましょ。」
あれだけ勝手に予定を伝えるなと澤田に言っていたのに、詳細を教えたことに苛立ちを覚える。
思いっきり澤田を睨むと、俺の視線に気づいたのか申し訳なさそうに頭を下げている。
そんなお詫びで許すもんかと、後でたっぷり怒ってやると思いながら澤田を睨みつけていると、腕にあの女が絡みついてくるのを感じる。
「俺と澤田さんも一緒に食事する予定だったから、この上のレストランで一緒に食事しよう。」
藤井が訳の分からない提案をし始める。
こいつは頭がおかしくなてしまったんじゃないかと思いながら、
「藤井、俺は疲れてるし、澤田も疲れてる。資料もまとめたいし、ここで解散だ。高梨さん、せっかく来てくれたのに、そういうことだから申し訳ない。」
澤田を睨みつけたまま、腕に絡みついてる女の手を払う。
「折角、高梨さんも来てくれたし、ルームサービスなんて味気ないし、レストランも予約しているから行くぞ。」
俺の声が耳に入らないのか、藤井は澤田の肩を掴んで歩き始めてしまった。
それに高梨も付いていっている。
3人で食事をさせるわけにもいかないので、俺も慌てて後についていく。
藤井は予約をしていたようで、満席で入れないないということもなく、あれよあれよと食事が始まってしまう。
目の前に座る澤田が藤井と楽しそうに話しをしているのも気に食わないし、隣に座る高梨の必要以上のボディタッチも気に障る。
澤田は綺麗だというが、この所作も含めこの女は下品だし綺麗だとは思わない。
一刻もこの食事を早く終わらせようと思いながら、俺はひたすら酒と食事に集中する。
食事も終盤に近付いてきて、いい加減うんざりしてきたところで、藤井が幼少期の写真を見せろと騒ぎ始めた。
高梨と藤井の幼少期については全く興味がなかったが、澤田の幼少期については少し興味があった。
高梨が自慢気に写真を見せているが、全く興味がないのでスマホを渡されても見ることなく突き返す。
藤井が澤田も見せろとしつこく迫っている。
しぶしぶ澤田がスマホを差し出している。
気になる。。。。。
見せてくれというのも変だろうし無理やり奪ってみるのは、もっとおかしいだろうなと思い、どうしたら見れるだろうか思案していると
「確かに可愛いわね。健太さんも見て。」
と高梨がスマホを差し出しながら、肩を寄せてくる。
今まで必要以上に距離を詰めてくることに嫌悪感を持っていたが、この時ばかりは心の中でナイス高梨と言っていた。
スマホを覗き込むと、そこには可愛らしい女の子が笑顔で写っている。
ただ、どこかで見覚えのあるような顔がする。
知り合いに似ている子がいたかなとぼんやり考えていると、以前澤田を車内でアメリカにいたことがあるという話をしたことが急に頭をよぎった。
一瞬で記憶が戻ってくる。
間違いない、アメリカで一緒に遊んでいたあおちゃんだ。
名前はあおちゃんということしか覚えていなかったし、顔もほとんど覚えていなかったので澤田があおちゃんだという事に全く気付かなかった。
ただ、今日この写真を見たことで一気に記憶が戻ってきた。
目の前に座っているのは、間違いなくあおちゃんだ。
そうと分かると、急に落ち着かなくなってくる。
澤田が手に持っていたスマホを取り上げてきて、藤井と高梨がごちゃごちゃ言っているが、俺はそれどころじゃなかった。
「もうだいぶ飲んだし、疲れもあるからここでお開きにしよう。」
気もそぞろの状態ではあったかが、辛うじて伝票が目に入ったので掴むと出口に向かいお会計を済ませエレベーターに向かう。
後ろから高梨が着いてくる気配を感じたが、藤井と澤田の気配は感じられない。
二人がこの後どうするのか気になったが、お会計も終わっているし、澤田は相当疲れているようだったからこれ以上、藤井に付き合うことはないだろうと直感的に確信していた。
「健太さん、置いていかないでよ。私急遽来たから、部屋とってないの。婚約者だから今日は同じ部屋に泊めて。ねぇ、いいでしょ。」
と上目遣いで寄ってきて、腕に絡みついてくる。
今まで冷たくあしらってきたから、俺にその気がないことに気付いて自分から離れていくだろうと思っていたが、この女ははっきり言ってやらないといけないと分からない奴だと、ようやく理解する。
「高梨さんこちらへどうぞ。」
と高梨の腕を掴むとエレベーターとは逆方向にある方へ歩く。
高梨は戸惑っているのか、どこへ行くのか聞いてくる。
それを無視して出口に向かいタクシーに無理やり押し込み、運転手にお金を渡す。
タクシーの運転手に会社の住所を告げて、近くなったら本人に詳細住所を聞いて御釣りはいらないとと告げると高梨を見る。
「俺はお前のような下品な女は趣味じゃない。興味もないし、婚約者でもない。これ以上、付き纏うのはやめてくれ。親父の手前、はっきり言わずに態度で示してきたつもりだが、お前にははっきり言わないと伝わらないようだったから、今日言わせてもらう。お前の会社の力を借りなくても、うちの会社は十分やっていける。今日で最後にしてくれ。」
一気にまくし立てる。
高梨は茫然としていたが、次第に怒り顔になってきた。
高梨が何か言う前にドアを閉め、助手席側のドアを開け運転手に出発して下さいとお願いする。
タクシーが出発するのと同時に俺は、タクシーに背を向けホテルに入っていく。
打ち合わせの疲れもあったが、その後の疲れも一気に感じる。
頭を整理しなくてはいけいないことがたくさんあったが、一刻も早くベットで横になりたかった。
足早にエレベーターに向かい、部屋を目指した。
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