第2話 冴えない私

帰国後、けんちゃんと連絡が取れるわけもなく、それっきりだった。


会うことはないけど、時々ふとした時に思い出す。


この初恋のこけんちゃんのことで覚えているのは2つ年上で、名前は川崎健太。


この2つだけだ。


いつの日か突然けんちゃんが現れて久しぶりって言ってくれるんじゃないかと過ごしているうちに、彼氏無しの26歳になってしまっていた。


既に顔も思い出すことも難しくなってきてしまっているし、会えることができるなんてあるはずもないのに、いつまでも引きずっている自分にうんざりしていた。


そんな冴えない人生を送っている私は今、けんちゃんとした社長と秘書ごっこが影響してるか分からないが、秘書の派遣会社に勤めている。


秘書として色々な会社に派遣されて、気に入られればそのままその会社に就職できる場合もあったが、私は契約期間が終わると契約終了でそのまま今の会社に戻ってきている。


その理由の一つはこの冴えない容姿のせいだとは分かっているが、センスがなくて化粧も上手くできない。


周りの同僚はこれでもかというぐらい煌びやかな容姿をしており、ハイスペックな彼氏がいた。


何故私はこんなに冴えないかというと、帰国してすぐ両親は離婚して母親と一緒に暮らしていた。


私が大学に入る頃には別の男性と再婚して今や音沙汰なし。


化粧やファッションで盛り上がれる友達、姉妹、親もいない。


そもそもこんな根暗な性格のせいであることは十分わかっていたが、ヨガや喫茶店巡りなど自分の好きなことを誰にも邪魔されずにできるので、一人でも平気だった。


今この状態でけんちゃんに会ったとしても、けんちゃんにがっかりされるだけだろうな。


今けんちゃんは何をしているのかな。


今けんちゃんと再会したら、昔みたいに笑い合えるのかな。

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