私のボスは幼馴染

KEI

第1話 社長と秘書

「おい、秘書。今日のパーティーの招待客リストはあるのか。」


「社長、ちゃんと準備しております。」


けんちゃんと私がよく遊んでいた社長と秘書ごっこだ。


これは遡れば数十年前、私が子供の頃の記憶で、今も時々思い出す淡い初恋の出来事だ。


私は小学校1年生のとき、親の転勤でアメリカに住んでいた。


その時、近所にけんちゃんという日本人の男の子がいた。


唯一いた日本人で私はけんちゃんに懐いていて、よく遊んでいた記憶がある。


お互いをけんちゃん、あおちゃんと呼び合っていて、特に秘書と社長ごっこがお気に入りでよくやっていた記憶がある。


今となっては、なぜこんな遊びをしていたのかはよく思い出せないが、けんちゃんとの思い出で一番色濃く記憶に残っている出来事だ。


けんちゃんが社長で私が秘書で、幼い二人は社長と秘書がどういうものかよく分かっていなかったからだろう、けんちゃんは私を召使のように使って、ちゃんとできたら頭を撫でるということの繰り返しだった。


私はけんちゃんに頭を撫でてもらいたいがために、言われたことを一生懸命やっていた気がする。


今でも思い出されるが、このとき私はけんちゃんが大好きだった。


こんな淡い時間も1年しか続かなかった。


父親の赴任期間が終わり帰国することになってしまったのだ。


けんちゃんとお別れしたくなくて、泣いて泣いて父親に残りたいと訴えたが、そんなことが叶うはずもなく無情にも帰国の日はやってきた。


私は泣きながらけんちゃんに日本に行きたくないと抱きついたが、けんちゃんは優しく頭を撫でながら、


「僕もいつか日本に戻る。いつか必ず会えるから、僕のこと忘れないでね。だから泣かないで。また会うんだから、さよならは言わないよ。またねって笑って会える日を楽しみにしていよう。」


と言ってけんちゃんは小さい体で私をぎゅっと抱き締めてくれた。


最後まで涙は見せずに笑顔だった。


まだ、幼かったので連絡先を交換するなどせずに、大きくなったらまた会おうねと約束しただけだった。


最後にけんちゃんが私にそっとお別れのキスをしてくれた。


これが私のファーストキスだ。


今でも鮮明に覚えている。


これが私の初恋だから。


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