第52話

「……はっ!!」


 ベッドから飛び起きる。

 両脇にはラピスとコーラル。


 誰かに眠らされた気もするが……気のせいか?

 ベッドから降りて足元を見てみる。

 ……白いタイツ?

 それだけじゃない、服も完全にメイド服になっていたし、下着も……女性物!?


「ショウ君起きた!あ、凄い似合ってる!」


「似合ってる、じゃない!こんな格好誰が得するんだよ!」


「でも本番は明日だしショウ君にはメイドさんとして出てもらうつもりなんだけど……ダメ?」


「ダメに決まってるだろ!早く服を……」


「でもリャナディールちゃんがそうしないと服を貸さないって言うし……」


「そうだよ、みんなでやった方が楽しいでしょ?」


 聞き覚えのある声、振り返るとふわふわとした髪、そこにいたのは……


「グーシぶぅ!?」


 無理矢理口をグーシュヴァンドに塞がれる。


「ボクも学園祭は楽しみだからね、ショウがメイドで給仕してくれるならもっと楽しくなるよ!!」


「あれ?ちゃんショウ君と知り合いなの?」


「……リャナディール?」


「リャナディールちゃんはに助けてくれたんだよ?それにこんな可愛いメイド服も準備してくれたし!ねぇリャナちゃん?」


「そうだよー、こんな可愛い女の子から目を離しちゃいけないよ?」


 こいつ、偽名を使ってノーフィに近づいたのか?

 ていうかいつの間に?


「それにグーシュヴァンドさんは怖い人なんでしょ?リャナちゃんはすごく優しいしメイド服だってリャナちゃんがくれたんだよ?」


「そうそう!ボクは優しいからそんな奴とは違うよ?」


 ……冷や汗が出る。

 ノーフィの言った様にグーシュヴァンドとリャナディールは別人の様なのは確かだが、まさか既にノーフィに近づいていたのか……


「じゃ、決まりだね!させてもらうから」


 マジかよ。


「ショウ様起きたのですね、あれ?その方は……」


「……リャナだ、ちょっとした俺とノーフィの知り合いだよ」


 シアと一緒にククリとリリアも来ていた様だが、リャナと顔を合わせても全く気づいていない様だ。



……ククリです……」


「リリアよ!私達今グーシュヴァンドって言う悪い奴を倒す為にみんなで協力してるの、あなたも協力する?」


「なっ……!」


 ククリもリリアも知らない?

 声すら聞いたことが無いのか?知っているのは俺とヴァルカルだけ?


「へぇ、グーシュヴァンドをね……」


 一瞬グーシュヴァンドの瞳が変化する。


「知ってるよ、1年生で学園最強って呼ばれてる人でしょ?でもボクは3年生だしブロンズクラスだから力にはなれないかな。ここにもノーフィに呼ばれて来れたくらいだし……それよりもメイド喫茶の話をしようよ!」

 

「そうだよ!今は楽しむ時間、はい!」


「これは……こんな可愛いメイド服、まさかリャナディール様が?」


 渡されたメイド服を見ると目を輝かせるシア。


「そうだよ、いいでしょ?はい、全員分あるからねー」


 全員分と出してきたのは十着。

 俺以外のグーシュヴァンド、シアにノーフィ、ククリにリリアで五着あれば十分じゃないか?


「ヒスイ見てみて!きっとヒスイにも似合うから!」


「これ、私が着るの?少し胸が露出がありすぎないかしら?」


「うーん、ヒスイちゃん胸大きいしシアちゃんと同じサイズが良かったかな?」


 魔罪武器のことも知っている、ノーフィから聞き出したのか。

 そうだとしても一着多く無いか?


「うわすっご!これとんでもない高級服じゃん!」


「キャーラ!?お前何でここに?」


「シアに呼ばれたからねー、それにショウの可愛いメイド服が見れるって聞いたし」


「えっ、本当にキャーラなの!?可愛い!その耳触らせてくれない!?」


「……そうだけど、やめてくれない?」


「キャーラ仲良くしろ、こんな時までそうやってるつもりか?」


「そうだね、ボクも空気を悪くする人はいらないかな」


 言ってることは正しいが、こいつが1番の爆弾なんだよな……


「……わかったよ!はい!触るなり食べるなり好きにしてよ!」

 

 お座りの様なポーズでじっとするとノーフィだけではなくグーシュヴァンド、もといリャナにも触られまくる。


「メイドの作法については任せてよ、メイドのプロを呼んだからね」


 リャナが指を鳴らすと出てきたのはグーシュヴァンドの城で会ったメイドだ。


「1日で完璧なメイドに仕上げて見せます……少々厳しいですので、お覚悟をしてください」


 そして特訓で俺はメイドスキルを身につけることができた。


 ただ……男としての尊厳は少し失った。

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