第50話

「あ、ショウ様!戻っていらしたのですね!」


「……戻ってこなくてよいものを」


「マリ!」


 家に戻るとシアが料理を作ってくれていた様だ。

 美味しそうな匂いで腹が鳴るが、それよりも確かめることがある。


 「勝手に出て行ってごめん、ククリとリリアはいるか?」


「はい……います……」


「いるけど……」


 ククリとリリアはバツが悪そうに俯き俺と目を合わせようとしない。


「何故2人を戦わせようとする、グーシュヴァンドが危険な奴だとわかった上でそうしているのか?」


 問い詰めると2人は泣きそうになる。


「待って!それはちゃんと説明してくれたよ!それにグーシュヴァンドさんとはいつか戦わなきゃいけないでしょ?それが早くなっただけだよ」


「ノーフィ様の言う通りです、お兄さんが殺されてしまうと聞けばショウ様もそうするはずです」


「兄?ヴァルカルが?」


「グーシュヴァンドざはヴァルカル兄さまを殺すつもりなんです……ショウさまに負けたことで不要とグーシュヴァンドさまが判断されたので……次の試験でそうするつもりみたいです……」


「それはヴァルカルに退学してもらえば解決するんじゃないか?」


「兄さまは……私達を残して退学はしませんし、グーシュヴァンドさまに心酔しておりますから……殺されても本望かも……」


「でも私達はいや!だから止めたいの!」


 グーシュヴァンドならやるだろう。

 シアを通じて国王に言えば何とかなるかもしれないか?

 後で話してみるか……


「作戦は試験でヴァルカルさんを守りつつ、グーシュヴァンド様よりも上のランクになり、その後決闘で退学させるというものです」


「今すぐに決闘で殺さないのは不幸中の幸いだが、面倒だな」


 それにあの化け物相手に2回勝つのはそう簡単には行かなさそうだし、シアとノーフィがグーシュヴァンドと同じクラスにいるのが嫌な感じだ。


 ただ殺すなら決闘か、密かに殺せばいいだけなのだから。


 ……グーシュヴァンド自身が俺達を遊んでいるってことか?


「と言うかそれなら俺も神白金クラスに上がらなきゃいけないな」


「いえ……です……ショウさまはクラスアップを拒否しましたが、その後グーシュヴァンドさまがそれを揉み消してますから……」


 あいつ、そんなことも出来るのかよ。

 

「ククリちゃんもリリアちゃんも自分の魔罪武器を吸収させてくれたんだ、それに神金級だから凄い強力なんだよ!」


 ノーフィの武器ヒスイからは風と炎、シアの武器マリからは水と雷を放っていた。


 2人が強くなったのは間違いないだろう。

 でも2人はグーシュヴァンドのスキルを知らない……ん?


「ククリ、リリア、2人もグーシュヴァンドと同じ入学試験を受けたんだよな?確か、その時は全員昏倒したんだっけか?」


「私達でバレないかなって思ったけど、次気づいた時には医務室にいたの」


 つまり、見る事はグーシュヴァンドのスキルの発動条件じゃない?

 よくわからないがそこに倒すヒントがありそうだ。


 グーシュヴァンドに直接スキルを使いたいが、金髪褐色幼女の様に効かないこともあると知った以上下手にスキルは使えない。


 今はいいこでいるべきだな。


「明日からも特訓を続けるか、ククリとリリアには引き継ぎ協力してもらう」


「はい……出来る事なら何でも……」


 まずは出来ることからやる。

 

「そうだね……遊んでいる暇なんてないよね……」


 明らかにノーフィが落ち込んでるでいた。


「ノーフィ様、今は我慢です」


「どうした?何かあるなら話してくれると嬉しいんだけど」


「ほら、明後日から感謝祭の時期でしょ?だから学園も学園祭があるしそれには参加したいなー、って」


 感謝祭、確か豊穣の神アルテミナに感謝祭する祭だったはずだ。


「その日は受肉したアルテミナ様が学園にも来られるんです、ブルタス中央学園はアルテミナ様が創られた由緒ある学園ですから」


「見たことあります……凄く美しい方です……」


 神様か、確かにどんなものか見てみたいな。

 豊穣の神って言うくらいだから当然胸も豊穣で……


「ショウ君、エッチなこと考えるでしょ」


「……まぁ、息抜きも必要だろう。学園祭の時は特訓を休んで楽しもう」


「否定しないってことはそうなんだね……」


 神様を見られるのは楽しみだな。

 とんでもなく美人なのか、どんな匂いがするのか……あれ?


 受肉と言っていたが、それってってことか?


 まさか、俺のスキルが使えたりするのか?もしそれが出来れば女神様で童貞を捨てる……それは……


「ショウ様……凄いです……」


 服を突き破ろうとするかの如き我が愚息がそこにいた。

 つい妄想に反応してしまった。


「と、とにかくそう言うことだから今日は解散だ!」


 無理矢理ノーフィ達を家から追い出す。


「ますたー、手伝う」


「マスター、いこ?」


 いつもより元気なそれを1人で鎮めるのは時間がかかりそうだ。


「……頼む」


 このままじゃ明日からの生活に支障が出る。

 今日だけは頼むことにした。


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