第45話

 そこに近づくにつれて、息苦しくなって行く。

 何か強い力で胸を押し潰されて行くようなそんな感覚だ。


『ますたー、顔色が悪い』


『マスター、帰った方がいい』


「心配はありがたいが、約束を守ってくれると助かるな」


 弱音は言ってられない、そこにいる人物を俺は越えなければならないのだから。


「また来てくれたんだね、ボクは嬉しいよ!」


「……グーシュヴァンド」


 神白金クラス1位、学園最強の少女が目の前にいた。


「フィエでいいよ、君は誰よりも特別だからね。それよりククリとリリアはどうかな?あの子達はとても素直だから君の為に頑張っていると思うのだけれど……」


「…………」


「ねぇ、ボクの話を聞いているかい?」


「あ、ああ凄く協力してくれてるな」


 ……何だ?急に息苦しさが消えたぞ?


「良かった!ボクは君に嫌われている様だから彼女達にお願いしたんだけれど、それなら嬉しいよ」


「別にフィエを嫌っているつもりは無い」


 少なくとも、今のフィエに対しては。

 そして俺がここに来た理由はグーシュヴァンドもといフィエに感じた相容れないという感覚、それが何かを確かめる為だった。


「それで……少しはボクも君の力になったと思うのだけれど……」


 何を考えているんだ?

 今は本当に最初に会った時のフィエそのものだし、嫌な感じはしない。


「そうだな、ありがとう」


「…………」


「……何かあるなら言ってくれると嬉しいんだが」


「え!?わ、わかる!?そうか……ボクって顔に出やすいのかな?」


 むしろ無言で見つめてくるのを何もないと思うほうがどうかしてる。


「それじゃあお願いしようかな……早速だけど、ボクの城に来て欲しいんだ」


「城?あのでかい城か?」


「そうだよ、それで城の中に大浴場があるからそこでボクの侍女達に身体を洗って貰って。それとこれを全身に塗ってからボクの部屋に来てね。じゃボクは先に部屋で待ってるから!」


 渡されたそれをよく見てみると、何故か美味しそうな香りのするバターの様なクリームの様な液体。

 試しに舐めてみる。


「めっちゃ美味い……」


 まさか、性的な意味じゃなく本当に喰われるのか?モテすぎるから?


 ……そんな馬鹿な。


 相手は規格外の謎のスキルを持つフィエ。

 油断すれば命は無い。

 それでも、フィエのスキルの正体がわかるチャンスだ。


「行くしか無いか……」


 以前貰ったチケットもとい魔法の絨毯を使い言われた通りに城に向かうことにした。



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