第42話
翌日、ノーフィとシアに改めて礼を言いに家に行ったのだが、何故か返事がなかったのでラピスとコーラルに様子を伺わせに行かせた……のだが、今度は2人も戻って来なかった。
「まぁ、大丈夫だろ……多分」
仕方なく1人で神銀エリアを散策することにした。
神銀エリアをよく見てみると、各自に与えられた家や広々とした芝生以外にも相当昔から残されている遺跡の様な建物もちらほらあった。
「ブルタス王国の伝統と今が混在する正にブルタスを象徴する素晴らしい場所だと思わないか!!」
「……なんで
「どうした我が友よ!そんな嫌な顔をする必要はないだろう!!」
のんびり散策しようとしたら、急に
何が友だ、こっちはお前に触れない様に気をつけないといけないんだからな。
万が一何かあったらこいつが……おぇぇ
「それに我が友のことはグーシュヴァンド様にも頼まれているからな、必ず神白金級にクラスアップ出来るようフォローしてやれとな」
「は?何で?」
「グーシュヴァンド様に気に入られたということだろう、それに今日はもう1つ用事があってな!ほら出て来いククリ、リリア」
ククリ?リリア?
誰だそれは?
「以前神白金級の上位3人は別格だと話したが、ククリとリリアはその2位、3位だ」
「なるほどな……それにしてはグーシュヴァンドとは態度が違うんだな、友達か?」
「それよりも近い、何せ我が妹だからな」
……妹?
こんな筋肉ゴリラに妹が?
ということは妹も筋肉ゴリラ、3ゴリラか……むさ苦しくなりそうだな……
「ほら!可愛いだろう?我が妹は!」
「……は?何処にいるんだ?」
目の前にいるのはヴァルカルだけ。
まさか……多重人格とかなのか?
幼い妹を失った悲しみで妹の人格を内に創ってしまった……なら俺も合わせないと行けない。
「へぇ、可愛い妹だな、名前は何て言うんだ?」
「……我が友、からかっているのか?」
からかってはいないつもりだが……
「なるほど!我が妹、姿を消したままでは見つけては貰えないぞ!」
姿を消していたのか、それは見つけられなくて当然だ。
やっぱりヴァルカルは馬鹿だ。
そして現れたのはクノイチの格好をした2人の女の子だ……ゴリラじゃない。
かなり小さな女の子だ。
「似てないな」
「はははっ!腹違いの妹だからな!小さくて可愛いが俺よりも強いぞ?」
マジか、ヴァルカルにデコピンされたら一瞬で倒されそうだが。
そして何故かその内の1人に睨まれている。
「ククリねえさまになにしたの!」
「リリア、私は何もされてないよ……ごめんなさい、気にしないで……」
よく見れば俺に暴言を吐いてきたリリアはツリ目で俺を睨んでくる一方、ククリはタレ目で目を合わせてくれようとはしない。
対照的な2人だが顔は瓜二つ、そして共通するのはクノイチの格好が似合う黒髪美少女だと言うことだ。
「何かしたつもりはないが、そもそも初対面だろ?」
「初対面……そう、ですよね……」
ククリは涙を浮かべる。
「ククリねえさまを泣かせた……ころす!!」
「待て我が妹!我が友に手を出すことは許されないぞ!!」
「ちっ……」
うーん、ククリは俺に会ったことがある様だが……全く会った覚えが無い。
そもそもこんな可愛い女の子なら覚えいるはずだ。
「……編入試験、覚えてませんか……?」
「編入試験?それなら覚えてるが、それが何か関係が……ん?待てよ」
確か、あの時俺が試験を突破出来たのは何かに引っ張られたからだ。
──ククリ、覚えておいて。
そう……そうだ、思い出した!
「ああっ!!あの時助けてくれた女の子か!?」
「思い出してくれた……」
まさか、あの時の女の子がヴァルカルの妹だったとは……
「おもいださなくて良かったのに」
「いや、良かった良かった!!ククリから話を聞いた時はまさかとは思ったが、この学園に入った時から縁があったということだな友よ!!」
バンバンと背中を叩いてくるヴァルカル。
マジで痛い……
「後の案内はククリ、リリア任せたぞ!!ククリよ、子供は10人以上は作るんだぞ!!」
「お、お兄ちゃんやめてよもう……!!あの……それじゃあ案内してもいいです……か?」
「ああ、頼めるか?」
「……は、はい!!嬉しいです!!」
「ククリねえさまをおかしくした奴となんていや!!」
そして姿以外が対照的な2人に案内されながら、俺は伝え忘れていたことを思い出した。
「編入試験の時は助かった、ククリの助けがなければ今ここにはいなかっただろうからな」
「そんなことは……ですが……私も不思議でした、本当は助けてはいけないのに、ショウさんだけは助けたいって思ってしまったので……」
恐らくはモテるスキルのせいだろう。
俺が透明な誰かにぶつかったその誰かはククリだったということか。
「あの……助けた代わりではありませんが、私のお願いを聞いてくれないでしょうか……?」
「もちろん、何をすればいいんだ?」
ククリはもじもじと言いづらそうにしているが、意を決して俺と目を合わせる。
「つ、付き合って下さい!」
…………え?
……その瞬間、俺とリリアの時間は止まった気がした。
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