第37話

「みんなお疲れ様、長い挨拶は抜きにして楽しもう、じゃあ……乾杯!!」


『『乾杯!!』』


 神銀級からは1人に1つ一軒家が与えられる。


 今は俺に与えられた家に皆が集まりパーティを開いていた。


 豪邸とは言え無いが4人家族なら十分暮らせる二階建ての一軒家、学園生徒にこれだけの家は必要無い気もするが。


「マスター、頑張って作ったから食べて」


「ああ、ありがとう……これは?」


「オオツノウシのステーキ、焼き加減はかんぺき」


 コーラルは確かどこかの生徒にガスコンロ武器を吸収してたっけな……


 食べてみると肉本来の味を引き出すシンプルな塩と胡椒の味付け。

 上手に焼かれたミディアムレアの肉はそのまま何も付けなくても十分に美味しい。


「ショウ様、これもお使いください」


 言われて渡されたのは生クリームの様な白いソース。

 試しにかけて食べてみる。


「何だこれ、めっちゃうまっ!!」


「良かったですね、一生懸命作った甲斐がありましたね」


「僕も協力したから当然さ、でもそいつに食べさせるのだったら致死毒を入れておくべきだったかな」


「シアのおかげ、ありがとう」


「いえ、頑張ったのはお2人ですから」


 ニンニクに似た香りが漂い、これは生クリームだろうか?

 刺激的な香りを程よく中和する生クリームのおかげで、飽きることなくステーキを食べ進められる。


「こっちも食べてショウ君!美味しいから!」


「これは……寿司?」


 マグロの様な赤身や白いイカに似たネタ、そして紫色をしたウニの様な見た目の軍艦。

 俺のこっちの異世界の記憶だと寿司は無かったはずなんだが……


「何?私の料理が食べられないって言うの!?」


「ますたー、私もつくった」


 ヒスイの料理か。

 この世界にも日本の様な場所があるってことか?


「いや逆だ、まさかこれが食べられるとは思わなかったからびっくりしただけだ」


「これ、ってスーシィは私の故郷にしか伝わらない料理よ?この辺りじゃ知ってる人なんていないわ」


 それでも知ってるんだよ、俺はな。


「醤油はあるのか?」


「え?なんでそれを……もちろんあるけれど……」


 懐かしい香りのする黒く僅かに赤みがかった半透明の液体に寿司のネタをつけて口に放り込む。


「……ノーフィ、ヒスイ」


「ひゃい!?」

「何よ!?」


「俺の為に一生寿司を握ってくれ!」


 美味い、美味すぎる。

 シャリは適当に握っているかと思いきや、口の中でうまくシャリと一体となる様にバランス良い量で握らせていた。

 ネタはマグロのトロに瓜二つだが、生臭みが無く旨味の詰まった脂が舌の上で溶け出す。


 回らない寿司に行ったことは無かったが、きっとこんな味なんだろうな……


「ショウ君がそう言うなら仕方ないかなぁ……私がショウ君の妻……ふふふっ」


「気をつけなさいよノーフィ!こんな男、他に色々と女を作って直ぐに捨てられるんだから!」


 というか、今のは求婚ではなくただ料理を作って欲しいだけだったがそう間違われてもおかしくないよな……


「待ってください、私だってショウ様の胃と心を鷲掴みにする美味しい料理を作れます!」


 睨み合うノーフィとシア。

 それだけでなくラピスとコーラル、ヒスイとマリも分かれていた。


「おい、折角のお祝いなんだからそんな争わなくても……」


「負けないから!!」


「負けません!!」

 

「3回勝負でよろしいでしょうか?」


「いいよ、じゃ審判は公平にショウ君に料理を出して、どっちの食事を多く食べたかで判断するでいいよね」


「任せろ、あいつの腹が爆発四散しても僕が無理矢理食わせてあげるよ」


「どれだけ食わせる気だ!普通に食わせてくれ!」


 ……これは、話を聞いてくれそうにない。

 なら……


「あ!ショウ君どこに行くの!?」


 俺の腹が爆発する前に逃げるに決まってるだろ!

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