第36話

「……ここは……」


 目を開けると見知らぬベッドの上。

 それに身体が汗だらけで気持ちが悪い。


 確か試験途中でスキルを使ったことは覚えているが、その後の記憶が無い。


「……ショウ君?大丈夫?」


「ノーフィにシア、何で俺はここに……というか……なんか遠くないか?」


 2人は俺に脅えているかのように入り口の扉を少しだけ開けて様子を伺っていた。


「き、気のせいじゃないかな?」


「は、はい、気のせいです」


 ……記憶は無いがこれは間違いなく何かあった。


 2人は説明してくれそうにない、なら。


「ラピス、コーラル、何があったか説明してくれるか?」


「マスター、2人に裸になれって言っていた」


「俺様の子供が欲しいだろって言っていた。ますたー、子供ってどう作るの?」


 ……記憶が無くて助かった。


 記憶があったら恥ずかしくて首を吊っていた。


 ラピスとコーラルが俺をからかっている訳も無いしそれは本当だろう。

 そして遠くでノーフィとシアが顔を赤らめている所を見ると、まさか……


「でも、私してないから!あ!ショウ君としたくないって訳じゃなくて急で気持ちの整理が出来てなかったからだからね!」


「私もショウ様は私の好きなショウ様ではありませんでしたから……すみません」


 とりあえず良かった。

 意識が無いままするのもだが、2人がそう思ってくれたのは嬉しかった。


「むしろ俺が謝らないといけない、2人には嫌な思いをさせてごめん」


「謝らないでください!はどう見てもショウ様であってショウ様ではありませんでしたから!」


「思い出したくないかもしれないが、詳しく説明してくれないか?」


 それから説明された俺の姿と力は俺自身が全く知らないものだった。


「素手でシアを?ノーフィもか?」


「うん、私の前に突然現れたと思ったら一瞬で吹き飛ばされて校章も破壊されてた、ヒスイも全然気が付かなかったって。ショウ君、一体何をしたの?」


「何をって言ってもな……ただスキルを自分自身に使えるか試してみただけだ」


「スキルを自分自身に……つまりショウ様がショウ様自身を好きになると言うことですね」


「ああ、俺自身にスキルを使えば強化されるんじゃないかと思ったんだよ。ナルシストっぽくなるかも知れないって不安はあったが、まさかそこまで変化するとは予想外だった」


 それに聞いた限りだとナルシストになったのとは別の様だしな。


「そうですね……色々と確認したいこともありますが、今あの状態になるのは危険かと思います。ショウ様自身の意識が無いと言うのはその力なのか人格なのかわかりませんが、それを制御できないと言うことですから」


「そうだな、スキルを自分に使わなければ問題は無いだろうしな。それよりも試験は合格したってことでいいんだよな?」


「はい、私達は神銀級ミスリルクラスです。試験からは丸3日程経っています」


「ますたーの看病頑張った、褒めて」


 ラピスとコーラルの頭を撫でながら辺りの様子をよく見てみると、タオルや着替え、水枕など恐らくノーフィもシアも俺に脅えながらも看病してくれた形跡があった。


「ノーフィ、シアもありがとう。約束もしていたし何か礼が出来れば……」


「いえ、今回の試験はショウ様が1位です。嬉しいご厚意ですが、受け取れません」


「それよりショウ君が起きたことだし、全員で神銀級ミスリルクラスになったんだからお祝いしようよ!」


 ノーフィやシアだけでなく魔罪武器達もどんな料理を作ろうか盛り上がっている。


 今は考えるのはよそう。

 とにかく今は試験に合格したことを喜ぶことした。






 



 



 

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