第24話
『試験開始、10秒前、9、8……』
俺はゴールドエリアにあるブロンズエリアを一望出来る塔の上で試合を眺めていた。
更に空中には鏡の様な物がいくつか浮かび、そこに各生徒達の様子が映し出されていた。
その間ゴールドクラスの女子生徒に色々声をかけられた気がするが、今だけは色々な意味で見逃すことは出来なかったので適当な相槌になっていたと思う。
ノーフィは路地裏、シアは市場の中からスタートか……路地裏なら巻き込まれずに済みそうだ。
『3、2、1……開始!!』
一斉に生徒達が走り出し魔罪武器を取り出す。
──いつにも増して張り切ってるなぁ
──まるで自分が1番強いって絶対自身あるみたいね、
観戦していた生徒はすぐに気づいたようだ。
生徒達の異常なまでの自信とやる気に満ち溢れた姿に。
「ますたー、全員仲間を作らないで戦ってる。作戦通り」
「ああ、でもまだ序の口だ。全員が魔罪武器を使うまでは我慢だ」
──俺が最強だ!これが、俺の真の力だ!
──ずっと鍛え続けた成果、見せてあげるわ!
会場の全員が全員、まるで自分の力に酔いしれているかの様だ。
だが全員の力は互角のようで脱落者はほとんど現れない。
そしてシアはというと、神銀級武器にも関わらず苦戦していた。
「くっ、何故!?私が弱くなったというのですか!?」
……シアが可哀想だな、そろそろいいだろう。
俺がすることは、ただ一言言うだけだ。
「凄いな、これがブロンズクラスの実力か。これなら魔罪武器が無くても強いんじゃないか?」
誰にも聞こえない呟く様な一言、だがその一言ですぐに異変が起こった。
──う、うわぁぁぁぁぁあ!?武器が勝手に!?
──や、やめて!何で私を狙うのよ!?
至る所で起きていたのは魔罪武器が勝手に動き始め、そして所有者を襲いはじめていた。
「あ、あれ?皆何してるの?」
「……まさか!」
隠れて様子を見ていたノーフィはまだ状況を把握出来ていない様だったが、シアはすぐに何が起きたか理解していた様だ。
この作戦を成功させるまでどれくらい地味な地道な行動が必要だっただろうか。
そう、今起きているのは以前ノーフィに起きた嫉妬による魔罪武器の暴走。
この10日間、俺は全てのブロンズクラスの生徒達の魔罪武器に触れモテさせることに成功していた。
時間もなく、当然大切な魔罪武器、そう簡単では無かったが、幸いにも俺には
神銀級の魔罪武器、それに興味を示さない生徒はいなかった。
試しに使ってもいいと言ってみると、皆喜んで自分の魔罪武器を渡して
そして自分の武器を取り戻した時、生徒達は強化された魔罪武器を使い、自分が強くなったと勘違いした。
何が起きているか分からなかったかも知れないが、事実強くなっていたし利点しかない訳だから疑われることは無かった。
その条件がわからないのが怖い所だが、仕方ない。
そして試験だが、こうなれば魔罪武器を使っていないノーフィと細工をしていない魔罪武器を持つシアとの一騎打ち。
俺に出来るのはここまで。
後はノーフィが勇気を出してどこまで出来るかだ。
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