第17話

「ますたー、ますたー」


「ん?なんだ?」


「学園を探検したい、ダメ?」


 2人から目を離す訳にはいかないし、俺は鍛錬をしたいが……


「今までずっと動けなかった。だからマスターが来てくれて嬉しい。一緒に探検、しよ?」


 鍛錬を始めようと思ったがそう言われるとな……


「わかったよ、でも人型にはなるなよ?」


「うん」

「わかった」


 俺も学園のことはよく知らないし丁度いいだろう。


 シアに案内された時は感じなかったが、確かに校舎はあるものの、どちらかと言うと街そのものに近かった。


 外に出れば食事や雑貨、野菜を売る屋台が並び、そこでは学生が店員のようだ。


 決して綺麗な環境とは言えないが……


「ここはブロンズ区域、物を売り買いしたり生活に必要なものはここで揃う。もう少しに行けばシルバー区域とゴールド区域になる」


「中央ってのはのことか?」


 視線の先、そこにあるのは蒼い城だ。


「そう、神白金アダマンタイト城、あそこに神白金アダマンタイトクラスの生徒がいる」


 大層豪勢な城、そしてそれをぐるりと囲む巨大な壁。


「でも、ますたーは行けない。いけるのは神白金アダマンタイトクラスだけ。その前にまた壁と、神銀区域と、神金区域もある」


 進○の巨○じゃないあるまいし、そう壁を作らなくてもいいだろ……


「中に行くほど立派な建物もあるし環境もいい、それも皆クラスアップを目指す理由。奨学金もいっぱい。学園はお金がかかるから」


 生徒が店を出してる理由はそれか。

 幸い俺はシアの助けで入れたが、金がかかる訳か。


「貴様、ゴールドクラスの俺の服を汚したな?」


「す、すみません!許してください!!」


「ほぅ、ならその身体で誠意を見せてもらおうか?」


「い、嫌っ!!」


 声のした方を見てみると、金色のペンダントを身につけた男の前でブロンズのペンダントを持つ女子生徒を頭を下げたと思えば、男子生徒をビンタしていた。


「……殴った?底辺クラスの貴様が俺を?」


「ひっ、す、すみま」


「いいだろう、ならで決めるしかないようだな」


「……決闘?物騒だな、負けたら退学か?」


「そう、ますたーは私達がいるから負けることないけど負けたら退学、でも上のクラスが負けても入れ替わるだけ」


 「入れ替わるって、そんなこと起きるのか?」



「100年でいたのは10人しかいない、だから実質退学処分」


 女子生徒も涙を浮かべて顔が青ざめていた。



「マスター、助ける必要ない。あれは他人」


 そうだ、目の前の生徒は全くの他人。

 もし俺が助けることになれば俺まで退学になるかもしれない。

 もし退学になればシアとの結婚もあり得ないだろう。


 ……しかし。


「ますたー、何処見てるの?」


「……もったいない、勿体なさ過ぎる」


「マスター?」


 モデルのようにすらりとした手足、制服の上からわかる程張りのあるロケットおっぱい。

 そして当然のごとく西洋風の容姿の美少女。

 何故こうも異世界は美少女ばかりなのか。

 こんな美少女が学園を去る?それこそ俺……じゃなく学園にとって大損失だ。


「待てよ、その決闘俺が代わりに受ける」


「何だお前、関係ない奴は引っ込んでろ」


 ……まぁ、そうなるだろうな。


「俺はブロンズクラスのショウ・カミナだ。あんたにとっても俺に勝つのは簡単なはずだ、それとも……


「……何だと?」


「か弱い女の子しか相手に出来ない奴だから仕方ないか、逃げてもいいぞ?」


 これでムキになってくれるといいが……無理か?


「……いいだろう、まずはお前だ。その次はそこの女、準備をして待っていろ」


 おお、うまく行ったな。

 絶対に負けるはずはないってことか。


マスターますたー、準備はできてる」


「ありがとう、2人とも力を借りるな」


「はい、マスターますたーの仰せのままに」






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