第9話
「いやはや、勘違いとは申し訳ない!まさかオーディルの者が娘を助けるとは思わなかったのでな!」
豪勢な椅子に腰をかけた男の声は部屋全体に響く程だ。
この王座のある部屋もバスケやバレーなら簡単に出来る程広いし高さがある。
「……誤解が解けて良かったです、ブルタス国王」
「父上、恥ずかしいですから辞めてください」
俺達がいたのはブルタス城。
突然現れた水を操る男は、正真正銘ブルタス国王だった。
「それで、俺達はどうなるんでしょうか?」
「そうだな……本来ならオーディルの物は問答無用で死刑だが……」
国王の周囲の兵士達が一斉に剣を抜き構える。
「父様!!すみませんショウ様、助けていただいたのに失礼なことばかりで」
「平気だ、元はと言えば誤解される様なことをしていたのが悪いし」
誤解も何も、襲おうとしていたのは間違い無いんだけどな。
「冗談だ。娘の恩人、当然礼は用意している!一生遊んで暮らして行ける様にな!」
国王が合図をすると現れたのは宝石が無数に入った箱だ。
「ショウ君!!こ、これだけあれば私達だけじゃなく村の皆も一生遊んで暮らせるよ!!」
「ああそうだな、心配してるだろうしこれで恩返し出来そうだ」
村の皆をこちらに連れてくるのは国境の壁が空いた場所を使えば行けるだろう。
「喜んでいただけた様で何よりです。それと……父様、私からも提案があります」
「ほぅ、シアからも恩人殿に礼か!流石我が娘、配慮を欠かさない最高の女性だ!何でも言うと良い、その願い叶えよう!」
「では……ショウ様を私の夫、次期国王として迎え入れたいと思います」
……うん?
シアの言っている事を理解出来ない。
「な、何だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
数m離れているのに国王の声で鼓膜が破けそうになる。
そう思ったのは俺もだ。
「シア?どう言うことだ?俺が何で次期国王?」
シアは少しだけ俯いて俺を見る。
「……私が、ショウ様を好きになってしまったからです」
「な、ん、だ、と……」
国王は玉座から崩れ落ちて床に倒れてしまう。
というか……シアが俺のことを好き?本当に?
「父様は私の願いを叶えると言って下さいましたよね?私はショウ様さえ良ければお願いできればと思うのですが……」
俺を好きだと言ったくれた、そんな返事はもう決まっている。
「ち、ちょっと待って!シアさんはショウ様の事を何も知らないよね!?夫とかはもっと時間をかけて互いを知る必要があるんだよ!!」
「そうだ娘よ!それに恩人には悪いがブルタスにはスキルも優秀でもっと素晴らしい男がいる、そんなよくわからんオーディルの男に我が娘はやれん!」
「ショウ君を馬鹿にしないで下さい!」
「ショウ様を馬鹿にしないで!」
「うっ……すまぬ……」
国王が謝っている。
それも俺を馬鹿にした事で。
「だがな、次期国王となれば国民の信頼も必要、我らだけで決めることは難しいのはわかっているだろう?」
「それはそうですが、国境の壁を破壊したのはショウ様です!初代王の蒼剣を扱える、これは次期国王の資格があると思うのです!」
「それを実際に見たのはシアとその娘だけだ。また同じことが出来るのなら話は別だが無理だろう?」
「これでいいのか?」
再び初代王の蒼剣を出現させる。
偶然ではなかったようだ。
「ま、まさか!いやそんなはずは!」
「父様すら出せなかった蒼剣です、これ以上の証明は無いのでは?」
「うむ、確かにそうだな……それがあれば証明にはなるか……」
「待って頂きたい!素質はあるかもしれないが、どう考えても敵国の者を王なんてことは認められる訳がない!」
国王の隣に立っていた眼鏡の男はそういい放つ。
その通りだ。
敵国の男が次の国王なんてクーデターを起こされてもおかしくない。
「では、どうしたら認めて頂けるのですか?」
「そうだな、あり得ないとは思うがその恩人がこの国で最も強く蒼剣以外の証明を持つとなれば話は別だがな」
それは無理だろ。
ブルタスはオーディルより人口も国土も少ないがその分1人の力はオーディルの数倍と聞く。
「……わかりました、では曽祖父様、祖父様、父様と首席卒業したブルタス1番の学園、ブルタス中央学園でショウ様が首席卒業すれば力と資格があるということですね?」
「まぁ、それくらいすれば……だか、そんなことオーディルの男に出来な」
「「ショウ
いや、流石にそれは無理なんじゃないだろうか?
ほら、国王もすぐにそんな提案拒否して……あれ?考えてる?
「……わかった、もしも学園を首席卒業できれば国民も納得するだろう。恩人、いやショウ、貴様の覚悟と力、見せて貰おう」
「ショウ君なら絶対できるよ!!なろう!国王!!」
ほんの少しはノーフィに好かれてと思ったが、これは全く脈無しなのか……
「私も学園に入学しますので、出来る限りのことは致します」
「ふっ、我が娘にこれほど期待された男がいたことは無い。期待しているぞ、ショウよ」
ただ俺は頷く事しかできなかった。
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