第5話
俺達の住むエンル村は辺境の地だ。
辺りは森で囲まれ近くには村どころか家もない。
だからこそ俺はここに追放されたのだが、それは同じように身を隠す悪党も同じだ。
「……やっぱり7人みたい、外に3人、中に3人、ショウ君これからどうする?」
森の中、俺も知らない小屋で盗賊達は一休みしていたようだ。
相手の力量が前俺が倒した盗賊と一緒と言うノーフィの言葉を信用するのなら倒せるはず。
だが1つ不安もある。
擁護するわけではないがホルドア家は優秀な貴族の家系だ。
父のヴァンド、長男のフィグ、次男のニィル。
それぞれ強力なスキルを持ちそれは確かだった。
なのに俺より弱いはずの盗賊が勝つ?
以前の俺なら本当なのか疑ってしまう所だろう、でも今は違う。
「ノーフィのこと信じる、力量が分かっているのなら正面突破で行く」
「……ありがとう!私もサポートするから!」
ノーフィが弓を携える横で俺は腰に下げた鉄の剣に目を向ける。
特別強化されたわけでもないただの剣、それを握った瞬間手に吸い付くような、長年使っている武器の様に馴染む感覚。
スキルが覚醒する、いやそれ以前からその感覚はあった。
それはホルドア家の武器やあらゆるものが一級品だからだと思っていたが、やはり物に持てるスキルのおかげかもしれない。
「俺が敵の注目を集める、恐らく敵は王女を人質に脅すはずだ。ノーフィは王女に手を出しそうな敵に狙いを定めておいて欲しい」
「わかった、ショウ君が作ってくれた矢があればどんな敵も必中必殺だもんね!大丈夫だと思うけど、無理はしないでね?」
「ああ、当然だ」
ノーフィが狙える位置に到着したのを見て俺は外にいた男達の前に飛び出す。
「あんたらが王女を攫った盗賊だな?」
「なんだてめぇ、ここが何故わかった!?」
「さぁな、知りたいなら捕まえて拷問すれば良い……出来るならだが」
「ガキが粋がってるんじゃねぇよ!!」
ガタイの良い男が剣を大きく振り上げて俺を叩き切ろうとするその動きに剣を合わせる。
すると男の剣は真っ二つになる。
「なっ、これは
「……そんな嘘ついて、悲しくならないか?」
「嘘じゃねぇ!これは間違い無く
いやいや、まだ豆腐で出来たと言われた方が納得出来る程でしたよ?
「はぁ……もしかして無茶苦茶強いのかと心配したが杞憂だったみたいだな」
そのまま盗賊の1人を斬りつけると男は絶命する。
このまま生かしておいても、王族を誘拐している以上は拷問と死刑は免れないだろう。
なら、俺がここで殺しておくのがせめてもの助けだ。
ボスがどうとか言っていたから、それは聞き出す必要があるな。
「馬鹿にしやがって……忘れている様だがこっちには人質がいるんだぜ!」
小屋の中から片目が傷で塞がっていた男が無理矢理引き連れてきたのは、黒い外套を羽織った人物。
顔はわからないが、身長からして王女だろう。
「変な動きをしたら王女がどうなるかわかっているだろうな!」
にやにやと気味悪い笑いを浮かべて勝ちを確信しているようだが……
そんな男の眉間に何かが飛来するとそのままぶっ倒れて行く。
「……は?」
「さて、これで人質はいないな。そうだが、もしそっちのボスってのが誰か教えてくれれば楽に殺して……」
「ボスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
「いやこいつがボスかよ!!」
一目散他の盗賊は逃げて行く。
「あの……ありがとうございます」
王女はそう礼を言ってくれるが……
「あ、うん……どういたしまして……」
……呆気なさすぎて、追う気にもなれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます