ずっと続く、愛でつなぐ。


「僕はタヌキが良い~!!」

「あたしは赤い方!!」


 しんしんと雪が降り続く大晦日。


 とある家のキッチンで、よく似た顔の男の子と女の子がテーブルの上のカップ麺に飛び付いた。



「はいはい。まだ沢山あるから、好きな方を選びなさい」


 あの可憐だった少女も、今はすっかりたくましい母親の顔になっていた。

 双子を出産し、パートの仕事をこなしながら彼らを育てている。



「ただいまぁ~」


「「おかえり、パパ!」」


 そしてあの気弱だった少年は、一家の大黒柱となっていた。


「おかえり、あなた」

「ただいま。外は大雪だったよ」


 玄関で肩についた雪を払いながら、我が家の暖かさにほっと息を吐く。



「そういえば、アイツに会ったよ」

「本当に!? 奥さんは元気だって?」

「あぁ。春に出産予定だって。すっかり惚気のろけられたよ」


 アイツとは幼馴染の彼だ。

 彼は成人式の日に黒のカレーうどんが好きな女性と知り合い、そして結ばれている。



「やっぱりおキツネ様とおタヌキ様のお陰ね!」

「ははは。そうかもなぁ」


 半信半疑だった彼も、今ではあのストラップを家宝にしている。

 もちろん、この家ではタヌキがまつられている。



「ママ~、あたしもおキツネ様とおタヌキ様に会える?」

「僕も会いたい!」


「そうねぇ~、そのうちひょっこり出てくるんじゃないかしら」


「「えぇー!?」」


 残念ながら、あの日以来彼らは姿を現していない。どこかその辺りをフラフラしているのだろう。



 そうしているうちに、全員分の準備ができた。


 年越しうどんと蕎麦。それぞれ均等にひとつずつ。子供たちはそれぞれ親から少しずつ分けてもらうのだ。



「じゃあ、二人とも。お婆ちゃんにもあげてきてくれる?」

「「はーい!」」


 双子は元気に返事をした。

 彼らはうどんと蕎麦が乗った小皿を両手に乗せて、仏壇のある和室へと小走りしていった。



「今年ももう終わりだなぁ」

「時間が過ぎるのは早いわね~。あの子たちも大きくなるわけだわ」


 この一年を振り返り、子供たちの成長を実感する。


 新しい年は果たして、どんな一年になるのだろうか。



「ママ、パパ!」

「たいへーん!!」


 騒がしい双子が慌てて帰ってきた。



「どうしたんだ?」


「「いたの! おキツネ様とおタヌキ様! お婆ちゃんと一緒に笑ってた!」」


 その言葉を聞いた父と母は、互いに顔を見合わせた。



「ふふ。孫に会いたくなっちゃったのね」

「婆ちゃんもな」



 キツネもタヌキも幸せと温もりを運ぶ。

 どうやら来年も良い年になりそうだ。

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