赤と緑の間はどんな色?


 お盆が過ぎ、夏休みも終盤に差し掛かった。

 中学生となった少年は友人達と共に、縁側えんがわでスイカを食べていた。



「お前らにこれをやるよ!」


 少年がポケットからひょいと取り出したのは、二つの小さなストラップ。


 燃えるような赤いTシャツの彼には帽子を被ったキツネ。

 緑のワンピース姿の彼女には、スカーフを巻いたタヌキを手渡した。



「なんだよこれ!?」

「可愛い……」


 女の子の方は可愛いフォルムを気に入ったようだ。

 一方の少年は微妙な表情を浮かべている。



「どうしたんだよ、コレ。買ったのか?」

「違う、貰ったんだ」

「貰った? 誰に?」


 祖母と暮らしている彼らの友人は、自分達以外との交友があまり無い。

 これでも昔より友好的になった方であるが、未だに幼馴染である彼と彼女にベッタリだ。



「たまにウチに来る、お姉さんとお兄さんに貰った」

「「お姉さんとお兄さん?」」


 幼馴染たちは互いに顔を見合わせる。


 毎日のように彼の家に入り浸っているが、そんな人物の影は見たことも無い。

 当然その発言を疑ってしまう。



「タカシ、お前何か変なモノ食べたのか?」

「違うよ、本当なんだって!」


 しかしその後も幾ら説明しても、彼の言うことは信じてもらえなかった。



 ◇


 それから十年の歳月が経った。

 時には喧嘩もしたし、同じ想い人を奪い合うこともあった。


 数え切れない思い出をアルバムにしまいながら、彼らは大人となった。



 明日は成人式。

 青年は婚約者である彼女と共に、地元に帰ってきた幼馴染を出迎えた。



「この家は変わらないな……」


 いつの間にか彼はスーツ姿が似合うようになっていた。


 高校を卒業し、進学の為にこの街を出てから二年が経つ。


 それでも彼らの友情に変わりはない。

 旅行鞄にはあの時のキツネがぶら下がっている。



 婚約者の彼女は二人に缶ビールを手渡し、ツマミの代わりにカップ麺へとお湯を注ぐ。


 キツネがひとつ。


 タヌキがふたつ。



「随分と幸せそうだな」

「「まぁね」」


 満面の笑みを浮かべる二人を見て、似たもの夫婦になりそうだなと苦笑い。


 彼の表情は少しだけ寂しそうだ。



(あの夏が懐かしいな……うん?)


「なんだ、アレ!?」


 ふいに縁側を見た彼が、目を真ん丸に見開いた。



「ふふ。驚いたでしょ? 居たのよ、本当に」

「だから言っただろ? 心配するな、アレは幸せを運んでくれるんだ」


 ストラップと同じ動物が仲良く並び、こちらを覗いていた。



「あはは、こりゃお前にも良い彼女が現れるぜ」


 次の日、彼は式場で運命の出逢いをする。


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