階段から転げ落ちた男子大学生の道井旭は、目覚めると世界的名探偵シャーロック・ホームズの生みの親アーサー・コナン・ドイルに憑依していた。ホームズを読んだことがない主人公が若き日のコナン・ドイルとなって凶悪事件に巻き込まれる英国時代劇ミステリーです。
SFではタイムスリップは定番ですが、ミステリー界の大御所に魂が乗り移るというトリッキーな設定が目を引きます。
前後の記憶はないままアーサー・コナン・ドイルとして目覚めた旭は、霊媒師の老婆アイリーンと助手ジャックの診断で、ドイルの身体に魂が乗り移っていることを知らされる。
不思議なことに目覚めたドイルの服には何者かに斬りつけられたような裂け目があり、路地を歩けば馬車に轢かれかけ、たびたび正体不明の赤毛の男につけ狙われる。そして鞄の中には身に覚えのない大粒の宝石が入っていて……。
当時のドイルはまだ小説家ではなく、エディンバラ大学に通う無名の若者にすぎない。そんな彼の身にいったい何が起きているのか。そして旭は何故タイムスリップしてしまったのか。ヴィクトリア朝の古き良き時代の風を感じる一作です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)