マギカ∽ジェネシス

田舎のたび猫

第1話 マーダードッグ

世界が赤く染まる。


「来た!」


自然と緩むほほを自覚しながら辺りに視線を巡らせる。

そして私は見つける。赤く染まった空の一点に浮かび上がる幾何学模様の魔法陣。これが出現するところに私が戦ってもいい相手がいる。


「待ってな!」


瞬間、私は能力の行使をする。足元に魔法陣が浮かび、ぼしゅっという音を発するほどに地面を穿ち蹴る。ここから空の魔法陣まではおよそ1キロ程。私にかかれば数秒だ。


「とうちゃーく!」


そして苦も無く目的の場所へと到着し、目的の標的へと目を向ける。


「お前が今日の私の相手ってわけ?」

「Grrrrrrrrrrr」


うなりをあげるそれはまるで犬のような、しかし皮を全て剝いだかのようで、しかも体のサイズも周りの家々と同じほどの大きさ。

フィクションの世界に出てくるような怪物がいま私の目の前にいる。それだけでガンガンと私のテンションがぶち上げだ。


「Gyaaaaaaaaaaaaaaa!!」

「いいねいいね、私もお前と一緒でテンション爆上がりの、闘志アゲアゲってか。一戦手合わせ願う」

「Grraaaaaaaaaaarrarra!!!」


鋭い牙を覗かせた口を大きく開き無造作に嚙みつきに来た犬ころに私がすることは決まっている。


「手を抜くなや!」


ブォンと魔法陣を足元に出現させ地面を強く蹴り犬ころとの距離を詰める。そして頭上に到達すると同時に犬ころの脳天に踵落としを食らわす。地面に叩きつけられた犬ころ無視してその向こう側へと飛び越える。


「ふっざけんな!もっとまじめにやれ!お前の力はそんなもんじゃないだろ!」


魔法陣を足元に浮かべながら犬ころを見据える。


「g...grrrrr」

「あ!?なに弱ったフリしてんだよ。こんくらいでくたばるタマじゃないだろ、あぁ!」


犬ころの口に魔法陣が3重に展開される。


「そうそうそう。死ぬ気で気ぃ張れ、死んでも気ぃ張れ、死ななくても気ぃ張れ!こっちもいくぞ」


ブォンと拳の前に魔法陣を展開する。そして足裏にも魔法陣を。そして最後に背中に。


「うらっしゃぁぁぁ!」

「Gyaaaaaa!」


犬ころの口から真っ直ぐ伸びる光線と、犬ころ目掛けて突撃した私の拳がぶつかり合う。それはさながら魂のぶつかり合い。


「はっは、これこれこれぇぇ!」


ゴリゴリと拳にまとわせた魔力が犬ころの放った魔力にぶつかり削り合う。そして背中から放出した魔力を推進力に徐々に犬ころに近付いていく。


バババギンッ!


そして犬ころの魔法陣を3枚叩き割る。そしてそのまま犬ころの顔面を貫き、


「はっはー、完・全・勝・利!」


犬ころを拳の魔力で吹き飛ばした後にはコロンと指先大の石が地面に転がる。


「こんなもんか」


封魔石と呼ばれるそれは、私の生活の収入源。回収するとポケットにしまい、その場を後にした。

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