第4話 潜入
立ち退き屋から派遣された連絡係が出て行った後、ミルモがすぐに俺を首に掛け、連絡係の後を追う。
『何を考えている?』
「あいつを追えば姉ちゃんのいるとこに辿り着けるでしょ」
ちなみに今、連絡係を尾行しているのはミルモだけではない。二人の男が先に尾行し、その後ろをミルモが尾行しているのだ。
『場所を見つけてどうする?』
「もちろん助ける」
『無理だ。子供が大人には勝てない』
「でも強くなったって」
『それは子供の中でだ。大人には勝てない』
「大丈夫。前にほら、大人もいるし。それに一人は自警団の人だし。揉めている間にこっそり中に入ればなんとかなる」
『あの二人も助けに行くわけではないぞ』
まず、奴らがどこにいるのかが分かればいいと言っていた。
「夜だし相手は油断している。なんなら寝ているかも」
『ないから』
むしろ犯罪者は夜型だと思うが。
俺はなんとか思いとどめさせようとするも、ミルモは言うことを聞いてくれない。
そして連絡係は古びた屋敷へと入った。壁はひび割れ、一部の木窓は壊れている。囲いは穴や崩れている箇所もある。夜闇の中、その古びた屋敷はさながら幽霊屋敷だ。そしてその古びた屋敷の門前には二人の見張りがいる。
『おや!?』
ミルモと同じく尾行していた二人が崩れた囲いから中へ進入し、壊れた木窓へと近づく。
「二人も助けに向かったのよ」
ミルモが嬉々として言う。
『待った! 右の茂みに何かいる! 二人に近付いてる』
木窓に近づく二人に怪しい影が。
相手が夜闇や茂みで見えなくても俺には相手の名前とレベルがばっちり見えるのでどこにいるのか分かる。
「後ろ!」
なんとミルモは声を上げて二人に教える。
「チッ! 他にもいたのか!?」
影は舌打ちし、口笛を吹く。
その音を聞き、屋敷の中からぞろぞろと仲間が集まってきた。
『ミルモ、逃げるよ!』
「駄目! 姉ちゃんを助けるの!」
ミルモは二人とゴロツキ連中が戦っている間、別の木窓に近づき、屋敷の中に潜入。
「姉ちゃーん」
『バカ! 声を上げたらゴロツキにバレるだろう』
「でも、呼びかけないと姉ちゃんがどこにいるのか分からないし」
『声をかけずに進め。俺は相手の姿が見えなくても名前とレベルが見えるから、敵が近づいたらすぐに指示通りに隠れるんだぞ』
「分かった」
◇ ◇ ◇
「姉ちゃん!」
ミルモはやっとのことで姉のいる部屋に探し当てた。姉の部屋は2階の奥だった。
姉のルナは縄で腕と脚を拘束されていた。
ミルモはハサミで縄を切り、姉を解放させる。
「あんた、こんなとこまで。……バカね。でも、ありがとう」
「逃げよう」
『待った!』
「どうしたの?」
「ミルモ?」
「首飾りが待ってて」
『ミルモ、お姉さんに俺を装着させるんだ』
「え?」
「どうしたのミルモ?」
「首飾りが姉ちゃんに着けろだって」
ミルモは首飾りを外して姉に渡す。
「私に?」
「うん」
姉のルナが装着すると、〈育成しますか? Yes/No〉が現れた。
『Yesだ!』
「ひゃあ! 何、誰?」
ルナは驚き、周囲を伺う。
ふむ。どうやら育成者は声が聞こえるらしい。
『驚くな。俺は首飾りだ。正確にはオーブなのだがな』
「オーブ? ミルモが言っていたことは本当だったの?」
『そうだ。そして俺は育成オーブ。俺を装着しているからには経験値が上がる。さらに基本ステータスも2割り増しだ』
「経験値?」
『まあ、強くなるということだ。今はミルモより君が装着している方が良いと判断した』
レベルはミルモより上ではある。だが、男の大人、しかもゴロツキに比べるとひ弱だろう。レベルだけ見れば。
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