第3話 レベル上げと事件
『誘っておいてなんだが……良いのか?』
今、俺とミルモは町の外にいてスライム退治をしている。
姉のルナに駄目だと注意されたにも関わらず、こっそりと抜け出して町の外に出ていた。
「いいの。問題ないよ」
『でも、危ないし……』
「大丈夫。ここ弱いのしかいないし。それに皆、小遣い稼ぎにやってるよ」
確かに弱い。
ここら辺に出てくるのはボール程の青色のスライムのみで、レベルも1。
これならレベル3のミルモでも問題はないし。
スライムって異世界だろうが弱い設定なのかな?
今もミルモが枝で突っつくだけで、表面が割れて消失するし。しかもその後はゲームのように青い小粒ほどの石が現れる。
『その石を金に換金するの?』
「ううん。これだと1ブロンズだよ」
ブロンズはこの世界の金の単位かな?
『1ブロンズだと何が買えるのかな?』
「何も買えないよ。パン一個買うのに100個はいるよ」
ふむ。つまり1ブロンズは1円ということかな。
『ではその石はどうするの?』
「石でなくて、素鉱石。これを沢山集めて錬金するの。すると紫鉱石が出来るの。で、それを換金するの」
『なるほど。ちなみにその素鉱石ってどれくらい集めないといけない?』
「うーん。大きさにバラつきがあるし……100個くらいかな?」
つまり紫鉱石は一つ100円か。
◇ ◇ ◇
そろそろ陽が大きく傾いてきた。
『まだやるの? そろそろ帰んないとお姉さんに怒られるよ』
「もう少し欲しいんだけど……仕方ないか」
ミルモは集めた素鉱石を見つめて言います。
俺は今日一日、黙って首飾りを務めていたわけではない。あれこれと分かったことがある。例えば、俺は経験値を上げるだけでなく、装着者の2割ほどステータスアップという効果もあった。その他にも色々あるらしい。
「ねえ、私ってどれくらい強くなったの?」
『レベルが2上がったよ』
「?」
『少しだけ強くなったってことかな。同い年の中では強いと思うよ』
◇ ◇ ◇
そして俺達は家の近くまで着いた。すると表のパン屋の周りに人が集まっているのが見えた。
『事件か?』
「大変!」
ミルモは人垣を縫って、店に入った。すると店の中がぐちゃぐちゃだった。棚やカウンターが倒れている。
「どうしたの!?」
ミルモは両親の
母親はミルモを抱きしめる。
その母親は震え、目には涙が。
「ルナが! ルナが!」
「母さん、どうしたの? なんで泣いてるの? ねえ、父さん、何があったの? お姉ちゃんは?」
「……俺達が留守の間に姉ちゃんが奴らに攫われたんだ」
父親は沈痛の面持ちで答え、拳を強く握る。
「あいつらに攫われたの? どうして?」
「…………たぶん、立ち退きでだ。ここを立ち退かなかったからあいつらは。チキショウ!」
そう言って、父親は壊れたカウンターを叩いた。そして帽子とエプロンを勢いよくはずし、外へと出ようとします。
それをガタイの良い男が止めます。
「ガーネットさん、落ち着いて。一人でどうするっていうんだ」
「どいてくれ。このままだと娘が」
「あいつらだって、すぐさま乱暴をするとは思いません。交渉を要求してくると思います」
「そうだよ」、「それに一人でどうするって言うんだい?」
と人垣からも声が上がる。
「だが……クッソ!」
◇ ◇ ◇
あの後、大人達で話し合いが始まった。
俺はミルモの首から外されて、客間の棚に置かれた。それゆえ大人達の話し合いを聞き、状況について色々理解できた。
なんでも、このパン屋は立ち退きを要求され、それを主人が拒んだらしい。それで少し前から立ち退き屋に嫌がらせを受けていたらしい。
さらに奴らの裏には貴族がいて、地元の自警団を押さえているとか。
だが、ここにいる大人達の中には自警団を辞めてでも仲間にいてくれている勇敢な者も少なからずいる。
なるほど。だから客も少なかったのか。姉の外出を控えさせようとしたのもそういう理由があるからか。
父親と幾人はアジトに向かおうという意気込んでいるが、それは他の人に抑えられ、まずは向こうからの連絡を受けてから、どうするかを決めようということになった。
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